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第112話「宵闇の住人」

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 転翔の羽で3人を送ったあと改めて男と対峙する。戦う前に男の正体を見極めようと【真眼】で見てみるが、余計に謎が深まってしまった。

(なんなんだこいつ…)


名前:D-2989
年齢:0歳 種族:闇人形
称号:宵闇の住人ダークストーカーの下僕
レベル:-
  HP:-/-
  MP:-/-
     筋力:- 体力:- 魔力:- 
     精神:- 敏捷:- 運:-
技能スキル
 『闇操作』


「ヘェ、転移魔法デスか。アナタは逃げなかったのデスね王女様」

「あなたにまだ聞きたいことがありますからね。それを聞くまでは逃げるわけにもいかないんですよ」

 正体は分からないが多分魔法生物的な何かなのだろう。身体強化アクセルブーストをかけながら構えを取る。普通の人間じゃない以上油断はできない。

「ワタシと戦う気デスか? 殺してはナラナイと言われているのデスが…」

「そう簡単に殺せるとは思わないことですね。私の質問に答えてもらいますよ」

「フフッ、聞きたいナラ大人しく捕まって主に聞くとイイデス」

 まぁ普通に話してくれるとは思ってないから別にいいけどね。人間じゃないなら容赦する必要もない。ボコったあとに頭の中を直接覗いてやろう。先制攻撃は俺がもらう!

「ふっ!」

 ドン、ドン、ドゴォンッ!

 瞬時に男の懐に入り込み龍槍式から馬歩頂肘に繋いで鉄山靠を叩き込むと、男はまともに食らってあっさりと吹っ飛んだかのように見えたが、吹き飛ばされながらカウンターで数本の黒いナイフを飛ばしてきた。俺の足元に刺さったそれは怪しく光り輝くと、金縛りでも受けたかのように体が動けなくなる。

「!?」

「…まったく、イキナリ攻撃してくるトカ野蛮な王女様デスね。でも動きは封じさせてもらっいましたヨ」

 黒いナイフは俺の影に刺さっている所を見ると影縫いってやつか?

「こんなので私を封じられるとか思わないで欲しいですね。『超閃光ギガフラッシュ』!」

 超閃光ギガフラッシュを真上に撃って自分の影を消すと体が動けくようになったので、すぐにその場を離れて黒いナイフを破壊する。それにしても影縫いって魔法じゃなくて忍術じゃね?

「ホゥ、あっさり逃れてくれますネ。それじゃこういうノハどうですカ?」

「一体何を…」

 男は両腕を空に掲げると、その腕が闇に染まり大きく形を変化させていく。闇の魔力が集まってムクムクと大きくなっていき、やがて4m程の巨大な黒い手が形作られていた。どういう原理かわからないが、その手を伸ばして俺を捕まえようとしてくる。

「大人しく捕まってクダサイ」

「ダ○シムかお前は!? 『天雷テスラ』!」

 ズシャァァンッ!

 上空から打ち込まれた雷が黒い両手を捉え爆散させる。試しに撃っただけだったが、どうやらあの手自体の耐久力はそんなに高くないらしい。男を見てみると何かを考えているような表情をしている。

「雷魔法…。王女が雷魔法を使えるというデータはない。アナタ、リムル王女ジャないデスね?」

「…今更気付いたのかよ。リムルはさっき王城に送ったよ」

「ダマシタナ…。ワタシをダマシタナァァァァ!!」

 男は騙されてたのが我慢ならなかったのか突然激昂して黒い魔力を噴出している。意外と沸点は低いらしい。噴出した黒い魔力は男の体に一つに集まって巨大な物に変貌していく。その姿はまるでデス○サロの最終形態のようだ。

『オマエニモウヨウハナイ。コナゴナニシテヤル!』

 8m程に巨大化した男がハサミっぽくなった腕を振り回しながら迫ってくが動きは遅く、その攻撃を躱すのに苦労はしない。だがその攻撃のひと振りひと振りが学園の壁を無造作に巻き添えにして破壊しているので、このあとのことを考えると頭が痛くなってくる。

『ヨケルナァァァ!!』

「…はぁ。これ以上破壊されても困るしさっさと終わらせてもらうぞ! 神雷魔法『Perunペルーン』発動!」

 神雷魔法を使った瞬間、上空の見えない程に遠い所から数え切れない程の雷の槍が降り注ぎ、巨大化した男の体を縦横無尽に貫いていく。槍が刺さるごとに『ウッ!』とか『ンアッ!』とか微妙に艶かしい声が聞こえてくるが気にしてはいけない。
 やがて全身から余すところなく槍を生やした男は、そのままゆっくりと倒れながら体が縮んで元のサイズに戻ってしまった。…弱いなーこいつ。神雷魔法使う必要なかったかもしれん。

「…一応手加減はしたけど生きてるかな?」

「キ・・・サマ・・・ヨク・・・モ・・・」

 どうやら生きてはいるらしい。コイツの場合人形らしいから死ぬのか知らんけど。

「俺の質問に答えるなら楽に壊してやるけど?」

「クッ・・・コロセ!」

 こんな色気も何もないクッコロさんに用はない。さっさと終わらせるかな。

《魔法創造起動。
 術式構成:対象の記憶を読み取り、モニターに表示する。読み取る記憶の量によって魔力消費量が変動する。
 術式名:記憶抽出メモリーエクストラクション

記憶抽出メモリーエクストラクションを創造するコストとしてMPを1200消費します。よろしいですか? Y/N

 YESだ。魔力を消費し創造した魔法を相手の頭に手を当てて早速使ってみる。モニターにはプログラムをエンコードした時のような文字の羅列が流れていく。

「ナニヲ・・・シテ・・・イル・・・」

「大人しくしてろ。終わったら破壊してやるよ」

 記憶の抽出が終わり、目の前のモニターにその一覧が表示される。それを調べてみると大した情報はなかったが宵闇の住人ダークストーカーとか言う奴のことが少しわかった。

 宵闇の住人ダークストーカーとは魔界に城を構える7人の魔人達の組織名であり、そのうちの一人の魔将ヴィノーグェジオが何らかの目的で現世にやってきたらしい。この闇人形はその魔将が作った尖兵であり、世界各国に散らばり王族の血を引く若い人間を集める任務を与えられている。何の為に王族を集めるかは不明。現在はレンブラント王国のどこかに潜伏しているようだがその場所の記憶はなかった。

「なるほどね。ヴィノーなんとかが諸悪の根源か」

「・・・クッククク・・・キサマノデータハ・・・マショウサマニオクッタ。モウ・・・オマエニカチメハ・・・ナ・・・イ・・・グフッ」

 ピキピキピキッ・・・パキィン・・・。

 最後の言葉を残して人形が壊れるようにバラバラになって崩れ落ちていく。魔将とか言う奴に世界中の王子や王女が狙われてるのか。この人形自体はそんなに強くないけど、数で攻められたら面倒なことになるかも知れない。陛下に伝えて対策を練った方がいいだろう。

 唯一残った闇人形の魔石を回収してから、転翔の羽で王城へと飛ぶことにした。

 
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