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第89話「ルナリアの処遇」

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 ドルトニス王国から転翔の羽で王都に戻ってきた俺達は、ルナリアを休ませるため家へと連れて行く。お腹すいてるっぽいし、とりあえずご飯かな?

「ただいまー」

「おかえりなさいませご主人様! あら、皆さんいらっしゃいです!」

「「お邪魔しますサクラさん」」

「サクラ、悪いんだけどこの子にご飯作ってあげてくれるかな? お腹空いてるっぽいからさ」

「あ、はい。畏まりました! んーと、何か食べたいものあるかなぁ?」

 サクラがルナリアに目線を合わせて笑顔で優しく聞くと、ルナリアは俯いたままシャルロッテの後ろに隠れてしまった。照れてるのかな?

「えっとサクラさん、なにか消化のいい物をお願いしていいですか?」

「わかりました。お食事が出来たらお部屋に持っていきますね」

「うん。頼むねサクラ」

 そのままみんなを連れて俺の部屋へ向かう。部屋に入ってからもルナリアはシャルロッテに張り付いたままだった。甘えん坊ですな。まぁ今まで同族は滅んだと思ってたんだろうから、離れたくない気持ちもわかるけどやることはやってしまおう。

「それじゃさくっと解呪しちゃおうか」

「はい、お願いしますクロード君。ルナリア、少しじっとしていてくださいね」

「…姫様、何するの?」

「あなたの不幸の種をクロード君が取ってくれるんですよ」

「不幸の種?」

 俺はルナリアの頭に手を置き魔力を集中する。不思議そうにしているルナリアには悪いがちょっとだけ耐えてくれよ?

「【状態異常解除ディスペル】発動! くっ!」

「うぐっ、ひゃああああ!!」

 シャルロッテの時と同じようにガッツリ魔力を吸われていく。しばらく頑張っているとルナリアの体から黒いモヤが吹き出してきて空中に消えていく。すべてのモヤが出きった頃にはルナリアは耐えられなくなったのか気を失っていた。【真眼】で確認するとちゃんと『黒天狼の呪詛』は消えている。

「子供にはちょっとキツかったか。でもちゃんと呪いは解けてるから安心していいよ」

「よかった…ありがとうございます、クロード君!」

 気絶したルナリアを俺のベッドに寝かせてから、今後の彼女をどうするかを相談する。俺が彼女を買ったんだから俺の家で面倒みるのが筋だろうが、シャルロッテにしか懐いていない現状でうちに置いておいても大丈夫か不安がある。

「出来れば私が面倒見てあげたいんですが、私は学生寮ですし…」

「だよなぁ」

「でもクロードならすぐに懐かれるんじゃない? 女の子に好かれやすいしね」

「そうだといいけどな。とりあえずうちで面倒見ることにするからシャルロッテも会いに来てあげてな?」

「はい、もちろんです!」

 その後、ルナリアの事を色々話しているうちにサクラがお粥を作って持ってきてくれたので、ルナリアを起こして食べさせてあげた。ルナリアが美味しそうに食べているのを笑顔で眺めているシャルロッテを見ていると姉妹のように見えてしまうね。しかし時間も遅くなってきたので今日はお開きにすることにした。

「もうこんな時間ですか。それじゃ私達はそろそろ帰りますね。ルナリア、クロード君の言うことをちゃんと聞くのですよ?」

「姫様…どこかに行っちゃうの? 私も行く!」

「ごめんなさい。私の家にはルナリアは連れてはいけないんです。それにルナリアは今日からここで住むんですよ。明日また会いに来ますから…」

「い、いやぁ! 姫様もここにいるの! もうお別れはヤなのぉ!!」

「ルナリア…」

 シャルロッテにギュッと抱きついて離れようとしないルナリア。だがこのままでは今後に支障が出そうだな。

「ルナリア、シャルロッテが困ってるぞ? そうだ、今日は俺と一緒に寝よう。それなら寂しくないだろ?」

「いやぁ、いやぁ!」

「…だめだなこりゃ」

 こうなったらシャルロッテも今日は泊まらせた方がいいかな? しかしシャルロッテは厳しい顔をしてルナリアの肩を掴んでその目をジッと見つめる。

「ルナリア…あなたはクロード君、いえ、ご主人様に逆らうのですか?」

「…姫様?」

「あなたを奴隷として大金を出して買ってくださったのはご主人様ですよ。不幸の種を取ってくれたのも、柔らかいベッドで寝かせてくれたのも、美味しいご飯を頂けたのもご主人様のおかげなんです。それなのにご主人様の好意を無駄にするんですか?」

「うぅ…でもぉ…」

「でもじゃありません。恩義には恩義を持って返すのが白狼族の掟だというのを忘れたわけじゃないでしょう。それならご主人様の言うことを聞いて良い子にしなくちゃダメなんじゃないですか?」

「ぐすっ…わかり、ました。ごめんなさい、姫様…」

「…ううん、私も怒ってごめんなさい。また明日来るからそれまでいい子にしてて。ね?」

「ぐしゅっ、わかりました。明日待ってますね。絶対来てくださいね?」

 うーむ、シャルロッテは将来自分の子供には結構厳しくしそうだな。でも説教をしてちょっと自分でも凹んでるシャルロッテに気付いて頭を撫でてあげると、少し恥ずかしそうにしていた。可愛いなちくしょう。

 その後シャルロッテと影の薄いアステルは帰り、俺の部屋でルナリアと2人っきりになる。何を話そうか悩んだが、これからの予定とか伝えておいた方がいいか。

「なぁ、ルナリア…」
「あの、ご主人様…」

 お互いを呼ぶ声が重なり、申し訳なさそうにするルナリアの頭を撫でてあげる。

「なんだ? ルナリアから話していいよ」

「あぅ、はい。その…ご主人様は姫様のご主人様…なんですか?」

「んー、ご主人様ではないかな。シャルロッテは俺の大事な友達だよ。学園でも同じ班だし」

「友達…でも、姫様はご主人様のことをご主人様って言ってましたよ?」

「あぁ、あいつは俺にかなりの恩を感じているからな。俺は気にしなくていいって言ってるんだけど、最初に出会った時からもう今みたいになっちまったし」

「…ご主人様と姫様の出会いのこと、お聞きしてもいいですか?」

「そうだな。うん、いいよ。シャルロッテとの出会いはクラスの班決めで…」

 俺とシャルロッテの出会いの事を話すとルナリアは楽しそうに聞いていた。まぁ結構特殊な出会い方したからな。シャルロッテに懐かれるのも仕方ないかとも思う。

「姫様はご主人様のことが大好きなんですね」

「大好きかどうかはわからないけど、慕われてるとは思う時もあるね」

「羨ましいって…思いました。私も、ご主人様を好きになれるように頑張ろうって思います」

「ああ、俺もご主人様としてルナリアに好きになってもらえるように頑張るよ」

 今後のルナリアのことはまたにして、今日はゆっくりと休んでもらうことにした。今日は俺と一緒に寝たいと言ってくれたので添い寝していると、夜中にルナリアが俺の腕にしがみついて涙を流している。起きてるのかと思ったが寝言で『おかあさん…』と漏らしていた。…この歳で両親が死んで奴隷になって…こんな可愛い子が辛い人生歩みすぎだろ。これからは幸せな人生を送らせてあげようと心に決めた。

 

 翌朝、ルナリアを起こしてメイド達に紹介したあと一緒に朝食を取っていると、今後のルナリアをどうするのかという話になった。

「ここで面倒みるのはクロード様が決めたんなら全然いいんですけど、ただ住まわせるだけで何もさせていないっていうのも可哀想なんじゃないかなって思うんですよね」

「あぁ、俺もそう思ってた。ルナリアは何かしたいことってあるのか?」

「したいこと…一番は、姫様と一緒に居たいです。あとはお仕事がしたいです」

「仕事?」

「はい。私、働きたくても働けなかったので…」

 そういやキャバクラでも監禁されてたんだったな。フラストレーションが溜まってても仕方ないか。

「それならボク達と一緒にメイドしよう! いっぱいお仕事できるぞ!」

「そうねぇ。そろそろ新しい人出も欲しかったし、ちょうどいいんじゃない?」

「私も賛成です! ルナリアちゃん、一緒にお料理しましょう!」

「お料理…したいです。あんまり上手じゃないですけど。いいですかご主人様?」

「もちろんいいよ。それじゃ今日からルナリアもうちのメイドさんだ。教育はサクラに任せるから色々と教えてあげてね。あとクーリアはルナリアの部屋の準備で、カノンはルナリアのメイド服の手配を頼む」

「「「畏まりました」」」

「それで、クロード様の今日のご予定は?」

「俺は今日は教会でお祈りしたあとにちょっと王城に顔を出してくるよ。夕食前には帰ってくるから。あと今日もシャルロッテが来ると思うからルナリアと遊ばせてあげてね」

「畏まりました! 気をつけて行ってきてくださいね」

 さて、ルナリアのことも決まったし、とりあえずひと段落着いた感じだな。時間ができたら残りの生き残りも探してあげよう。もう夏休みも残り少なくなってきたから計画的に過ごさないとな。

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