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第74話「ピクニックと魔法陣」
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シルビア先生とチュッチュしてる時ににフラン先生達が突入してきて驚いたが、その後は2人にも同じように再会の口付けを交わしていく。こうして会うのも大体3ヶ月ぶりか。
「んっ…ぷはっ。おかえりっすクロっち。帰ってくるのを今か今かと待っていたっすよ」
「俺も会いたかったですよ、フラン先生」
「次は私。クロードくん…んむっ…ちゅ…」
「…ふぅ。ユミナ先生も改めてお久しぶりです。元気にしてましたか?」
「うん、元気だよ。でもクロードくんと会えなくて、寂しかった…」
「俺もです。でもまたこうして会えてすっごく嬉しいですよ」
やはりフラン先生もユミナ先生も可愛いなぁ。改めて女神様に感謝を捧げたくなる。
「そういえばシルっち、その腕どうしたんすか? 自分で切り落としちゃったのに…もう治ったんすか?」
「ああ、さっきクロードの魔法で治してもらったんだ。元の腕より調子がいいぞ」
「損失した部位の、再生なんて…すごい魔法、使えるんだね」
「ええ。魔力はとんでもなく使っちゃうんですけどね。でもシルビア先生の腕を元に戻せたんですから、このくらいなんでもないですよ」
一気に魔力を使ったせいでまだちょっとフラフラしているが、マナポーションをちびちび飲んで回復しているので問題はない。そんな俺を心配そうにユミナ先生が見ているが、彼女の頭を優しく撫でて大丈夫ですよと笑いかけておいた。
「そういえばクロっちは学園生活はもう慣れたっすか? まぁクロっちのことだから慣れたどころかもうすでに新しい彼女とか作ってそうっすけどね!」
ギクッ。
「…え、えーっと、クロっち? まさかの図星っすか?」
「…クロード、正直に言え。沈黙は肯定とみなすぞ」
「クロードくん…ちょっと、手が早すぎない? まだ3ヶ月位しか、経ってないよ?」
「えー、弁明してもよろしいでしょうか?」
「許す。詳しく言ってみろ」
そこからは再び俺の学園生活報告会が始まる。リムルやアリア、アーニャのこともなぜそうなったかを詳しく述べていく。俺の気持ちを聞くと、みんなはその寛容な心で納得してくれたようだ。
「同級生に侯爵令嬢に王女様って…とんでもない人選だな」
「同級生はわからなくもないっすけど、他の2人は成り行きでそうなった感じっすかね。まぁクロっちって女の子には優しいっすし、頼りにもなる上に肝心なところではきっちり助けてくれたりするから、そんなところに惚れられちゃったって感じっすか?」
「だ、大体はそんな感じです。先生達のことももちろん伝えてありますので、王都に来た時にでも紹介しますね。みんないい子ですから仲良くなれると思いますよ」
あいつらも無下にすることは多分ないだろう。
「王女様…会うとなったら、緊張しちゃいそう」
「まぁ今すぐってことじゃないですから大丈夫ですよ。俺のことより、先生達の方は俺が王都に行ってからはどんな感じだったんですか?」
「私達はいつも通りだったな。冒険者稼業に専念していたぞ」
「そうっすね。魔物倒したりダンジョンに潜ったり。あ、そういえばクロっちに見て欲しいものがあるんすよ。私達じゃこれが何に使えるのかわからないんすよね」
フラン先生は自分のマジックバッグの中から何かを取り出す。そ、それは!? 黒い外装に大きめの液晶。…間違いなくタブレットだよなこれ。電源スイッチを触ってみると、まだ辛うじて充電が残っているようだ。ただしロックが掛かっていて今の状態じゃ中を見ることができない。
「フラン先生、これってどこで手に入れたんですか?」
「3週間前位に隣国のエスターク王国にあるダンジョンで手に入れたんすよ。クロっちはそれが何かわかるんすか?」
「ええ。昔これと同じものを見たことがあるんですよ。ただ今は使うことができないみたいですけど。あの、これしばらく預かっておいてもいいですか? ちょっと調べてみたいので」
「別にいいっすよ。何かわかったら教えてくださいっす!」
「了解です」
タブレットはとりあえず【無限収納】の中に放り込んでおき、このあと先生達と何をするか話し合う。色々と意見は別れたが最終的には明日みんなでピクニックに行くことに決定した。弁当は自動的に料理が出来る俺とユミナ先生が担当することになる。それからも積もる話をしているうちに、いつの間にか外が夕暮れに染まっていた。楽しい時間は過ぎるのが早いものだ。
「む、少し長居しすぎたか。今日はそろそろ失礼するぞ。冒険者ギルドに行かなきゃならないからな」
「あ、私も用事の途中だったんす。クロっちに会いたくて放置してたから戻らないと…」
「私も明日の準備しなきゃいけないから、今日は帰るね」
「わかりました。それじゃ明日楽しみにしてますね。門のところまで送ります」
先生達とお別れのキスをしたあと家の外まで送り、それぞれ手を振って帰っていく。ちょっと修羅場になりかけたが、リムル達のことをとりあえず認めてくれてよかった。今度改めてちゃんと紹介しよう。
先生達が帰ったあと、先ほどフラン先生から預かったタブレットを見てみる。パスワード等がわからないが、この魔法世界ではそんなもんは大した役には立たない。
《魔法創造起動。
術式構成:魔力を無数の触手と化し電子機器に侵入させ、その内部構造及び記録媒体の内容を把握することができる。内容量の大きさによって消費魔力が変動する。
術式名:電子機器侵入》
※電子機器侵入を創造するコストとしてMPを2000消費します。よろしいですか? Y/N
YESっと。こういう魔法も作れるから魔法創造は便利なんだよな。
「早速やってみるか。【電子機器侵入】発動!」
俺の手から魔力で作られた細かい触手がタブレットに伸び、その中に侵入していく。すぐにロックが解除され、その内容を確認することができた。…文書等は特に無し。他には…何故かアニメの動画ファイルばかりが大量にあった。ごち○さにわ○天。か○や様にダン○ルなど。死ぬ前に見ていた割と新しい作品ばかりのようだ。あとはアニソンのmp3ファイルが多数。
個人情報は…持ち主の名前は日下部陽菜。女の子なのか。あとはメールやLINE、その他の情報を見る限り高校生のようだな。
しかしなんでこんな物がこの異世界に? 彼女は転移、もしくは召喚された際にこれを持っていたということか? 今もエスターク王国にいるのか? そもそもまだ生きているのか死んでいるのか? 分からないことだらけだが、とりあえずこの異世界には俺の他にも転生や転移、召喚された人間がいるというのは確認することができた。さすがにタブレットだけ飛ばされたということは考えにくいからね。今度女神様に聞いてみるか。
翌日、天気は快晴。絶好のピクニック日和だ。俺は朝4時に起床し弁当作りを開始する。どうせ作るなら気合の入った弁当を作って先生達に喜んでもらいたいからね。
そして制作時間4時間程かかり、重箱3つ分の弁当が完成した。ちょっと多い気がするがフラン先生なら食えるだろう。
待ち合わせの時間になり、【無限収納】に弁当をしまって現場に行くと既に先生達が待っていた。今日の先生達の格好は鎧やローブを脱いでピクニックっぽい服装をしている。でもそれぞれ腰に武器を携帯しているところは冒険者だな。
「お待たせしました先生達。待ちましたか?」
「おはようクロード。私達もさっき来たところだぞ」
「クロっち! お弁当作ってきたっすか!?」
「もちろん作ってきましたよ。フラン先生用に大量に作ってきたから楽しみにしておいてください」
「それじゃ行こっか。私が案内、するね」
街の門から外に出て、ユミナ先生の案内で進んでいく。目的地はユミナ先輩イチオシの場所であるルービック平原。ここから歩いて4時間ほどの距離だ。今の時期、ルービック平原には大量の花が咲き乱れる知る人ぞ知るピクニックには最適な場所なのだそうな。
「あ、そうだ。ただ歩くいていくのもなんですから、これ使いませんか?」
【無限収納】の中から最近作った魔道具を取り出す。それは頭脳は大人で見た目は子供の名探偵が使っているスケボーを参考にして作った大型の浮遊ボードだ。定員は4人まで可能。
「こ、これは一体何をする物なんだ?」
「これは馬車の代わりになる乗り物の試作型魔道具です。みんな乗ってみてください」
「おお、面白そうっすね!」
全員ボードの上に立って乗り、ハンドルを持ってアクセルを入れる。するとボードは宙に浮きそこそこの速度で走り出した。この異世界は当然舗装なんてされていない。このボードは底に仕掛けてある風の魔石から空気を噴出して地面から10cm程浮いて走る仕様なので、どんな悪路でも問題なく走れる。速度は大体30km位は出せるので風を切る爽快な感覚を楽しめるのだ。
「風が気持ちいいな。これもクロードが作ったのか?」
「ええ。何か新しい交通手段を考えていたらなんとなく浮かんだので作ってみました。作ったはいいけど試す時間がなくて。走行実験もしたかったのでちょうど良かったですね」
「クロっち、私も動かしてみたいっす!」
「私も、やってみたいな」
「いいですよ。途中でみんなで交代しながら走らせてみましょう」
それからみんなで交代して走ってを繰り返しながら進んでいくと、2時間ほどで目的地に到着できた。その平原には期待通り見渡す限り色とりどりの花が咲き乱れている。
「おお~、壮観ですね。こんな場所があったなんて」
「クロっちユミナっち! 早速お弁当食べたいっす!」
「うん。今出すから、ちょっと待ってね」
花の上に布を敷き、場所を確保してから俺もユミナ先生と一緒に【無限収納】から弁当を取り出す。ユミナ先生も結構な量の弁当を作ってきていた。内容もサンドイッチやおにぎり、唐揚げなどのオーソドックスなメニューだ。
「クロっちは何を作ってきてくれたんすか?」
「俺はこんな感じですよ」
重箱を広げると、中にはハンバーグやグラタン。コロッケやエビフライ。その中でも俺のイチオシは魔導オーブンで焼き上げたアルケー鳥のローストチキンだ。アルケー鳥は王都で売っていた高級食材で、食べてみるとジューシーで昔食べた名古屋コーチンのような深い味わいのするかなり美味い鳥だ。
みんなで広げた弁当に舌鼓を打つ。フラン先生がめっちゃいい笑顔で食べている。
「おおお! 両方とも美味しいっす! いくらでも入っちゃいそうっすよ!!」
「さすがクロードとユミナだな。料理の腕も上がっているようだ」
「うん、美味しいよクロードくん。このローストチキン、私も作ってみたいな」
よっしゃ、ユミナ先生からも美味しい頂きました! 俺の料理の師匠であるユミナ先生から美味しいと言われるのが一番嬉しい。俺もユミナ先生の作った料理を食べてみると、やはり俺の料理と比べると彼女の料理のほうが美味い。俺もまだまだということか…。
「さすがですユミナ先生。俺の負けです…」
「そ、そんなことないよ。クロードくんのも、美味しいからね?」
「そうっすよクロっち。クロっちのお弁当も絶品っす!」
「ああ、どっちも美味いぞ。お前達に任せて正解だったな」
みんなで楽しくお弁当を楽しんだあと、せっかく来たので周囲をみんなで散歩してみることにした。ついでに【探索魔法】で確認してみると、何やら不可解な場所がある。
「あっちに何かあるみたいですね。行ってみましょうか」
そこは花畑の中心にある空白地帯。地面にはなにやら魔法陣のような模様が刻まれている。
「なんでしょうかねこの魔法陣?」
「なにか、魔力を感じるね。ダンジョンでたまに見る、転移魔方陣っぽいけど…」
「面白そうっすね。なんか罠っぽいっすけど乗ってみるっすか?」
「罠だと? それじゃ私が先陣を切ろう。とぅ!」
「ちょ!?」
罠と聞いてシルビア先輩が喜々として魔法陣に乗ると、突如魔法陣が光り輝きシルビア先生はどこかに消えてしまった。どうやらシルビア先生の危険大好き病が発動したらしい。これヤバイやつじゃね?
「なんで考え無しに乗るんすかねシルっちは…」
「はぁ、まぁこうなってしまったら仕方ありません。俺達も追いましょうか」
「そうだね。シルビアちゃんを、放っておけないし」
俺達も魔法陣に乗りシルビア先生のあとを追う。この魔法陣、一体どこに繋がってるんだ?
「んっ…ぷはっ。おかえりっすクロっち。帰ってくるのを今か今かと待っていたっすよ」
「俺も会いたかったですよ、フラン先生」
「次は私。クロードくん…んむっ…ちゅ…」
「…ふぅ。ユミナ先生も改めてお久しぶりです。元気にしてましたか?」
「うん、元気だよ。でもクロードくんと会えなくて、寂しかった…」
「俺もです。でもまたこうして会えてすっごく嬉しいですよ」
やはりフラン先生もユミナ先生も可愛いなぁ。改めて女神様に感謝を捧げたくなる。
「そういえばシルっち、その腕どうしたんすか? 自分で切り落としちゃったのに…もう治ったんすか?」
「ああ、さっきクロードの魔法で治してもらったんだ。元の腕より調子がいいぞ」
「損失した部位の、再生なんて…すごい魔法、使えるんだね」
「ええ。魔力はとんでもなく使っちゃうんですけどね。でもシルビア先生の腕を元に戻せたんですから、このくらいなんでもないですよ」
一気に魔力を使ったせいでまだちょっとフラフラしているが、マナポーションをちびちび飲んで回復しているので問題はない。そんな俺を心配そうにユミナ先生が見ているが、彼女の頭を優しく撫でて大丈夫ですよと笑いかけておいた。
「そういえばクロっちは学園生活はもう慣れたっすか? まぁクロっちのことだから慣れたどころかもうすでに新しい彼女とか作ってそうっすけどね!」
ギクッ。
「…え、えーっと、クロっち? まさかの図星っすか?」
「…クロード、正直に言え。沈黙は肯定とみなすぞ」
「クロードくん…ちょっと、手が早すぎない? まだ3ヶ月位しか、経ってないよ?」
「えー、弁明してもよろしいでしょうか?」
「許す。詳しく言ってみろ」
そこからは再び俺の学園生活報告会が始まる。リムルやアリア、アーニャのこともなぜそうなったかを詳しく述べていく。俺の気持ちを聞くと、みんなはその寛容な心で納得してくれたようだ。
「同級生に侯爵令嬢に王女様って…とんでもない人選だな」
「同級生はわからなくもないっすけど、他の2人は成り行きでそうなった感じっすかね。まぁクロっちって女の子には優しいっすし、頼りにもなる上に肝心なところではきっちり助けてくれたりするから、そんなところに惚れられちゃったって感じっすか?」
「だ、大体はそんな感じです。先生達のことももちろん伝えてありますので、王都に来た時にでも紹介しますね。みんないい子ですから仲良くなれると思いますよ」
あいつらも無下にすることは多分ないだろう。
「王女様…会うとなったら、緊張しちゃいそう」
「まぁ今すぐってことじゃないですから大丈夫ですよ。俺のことより、先生達の方は俺が王都に行ってからはどんな感じだったんですか?」
「私達はいつも通りだったな。冒険者稼業に専念していたぞ」
「そうっすね。魔物倒したりダンジョンに潜ったり。あ、そういえばクロっちに見て欲しいものがあるんすよ。私達じゃこれが何に使えるのかわからないんすよね」
フラン先生は自分のマジックバッグの中から何かを取り出す。そ、それは!? 黒い外装に大きめの液晶。…間違いなくタブレットだよなこれ。電源スイッチを触ってみると、まだ辛うじて充電が残っているようだ。ただしロックが掛かっていて今の状態じゃ中を見ることができない。
「フラン先生、これってどこで手に入れたんですか?」
「3週間前位に隣国のエスターク王国にあるダンジョンで手に入れたんすよ。クロっちはそれが何かわかるんすか?」
「ええ。昔これと同じものを見たことがあるんですよ。ただ今は使うことができないみたいですけど。あの、これしばらく預かっておいてもいいですか? ちょっと調べてみたいので」
「別にいいっすよ。何かわかったら教えてくださいっす!」
「了解です」
タブレットはとりあえず【無限収納】の中に放り込んでおき、このあと先生達と何をするか話し合う。色々と意見は別れたが最終的には明日みんなでピクニックに行くことに決定した。弁当は自動的に料理が出来る俺とユミナ先生が担当することになる。それからも積もる話をしているうちに、いつの間にか外が夕暮れに染まっていた。楽しい時間は過ぎるのが早いものだ。
「む、少し長居しすぎたか。今日はそろそろ失礼するぞ。冒険者ギルドに行かなきゃならないからな」
「あ、私も用事の途中だったんす。クロっちに会いたくて放置してたから戻らないと…」
「私も明日の準備しなきゃいけないから、今日は帰るね」
「わかりました。それじゃ明日楽しみにしてますね。門のところまで送ります」
先生達とお別れのキスをしたあと家の外まで送り、それぞれ手を振って帰っていく。ちょっと修羅場になりかけたが、リムル達のことをとりあえず認めてくれてよかった。今度改めてちゃんと紹介しよう。
先生達が帰ったあと、先ほどフラン先生から預かったタブレットを見てみる。パスワード等がわからないが、この魔法世界ではそんなもんは大した役には立たない。
《魔法創造起動。
術式構成:魔力を無数の触手と化し電子機器に侵入させ、その内部構造及び記録媒体の内容を把握することができる。内容量の大きさによって消費魔力が変動する。
術式名:電子機器侵入》
※電子機器侵入を創造するコストとしてMPを2000消費します。よろしいですか? Y/N
YESっと。こういう魔法も作れるから魔法創造は便利なんだよな。
「早速やってみるか。【電子機器侵入】発動!」
俺の手から魔力で作られた細かい触手がタブレットに伸び、その中に侵入していく。すぐにロックが解除され、その内容を確認することができた。…文書等は特に無し。他には…何故かアニメの動画ファイルばかりが大量にあった。ごち○さにわ○天。か○や様にダン○ルなど。死ぬ前に見ていた割と新しい作品ばかりのようだ。あとはアニソンのmp3ファイルが多数。
個人情報は…持ち主の名前は日下部陽菜。女の子なのか。あとはメールやLINE、その他の情報を見る限り高校生のようだな。
しかしなんでこんな物がこの異世界に? 彼女は転移、もしくは召喚された際にこれを持っていたということか? 今もエスターク王国にいるのか? そもそもまだ生きているのか死んでいるのか? 分からないことだらけだが、とりあえずこの異世界には俺の他にも転生や転移、召喚された人間がいるというのは確認することができた。さすがにタブレットだけ飛ばされたということは考えにくいからね。今度女神様に聞いてみるか。
翌日、天気は快晴。絶好のピクニック日和だ。俺は朝4時に起床し弁当作りを開始する。どうせ作るなら気合の入った弁当を作って先生達に喜んでもらいたいからね。
そして制作時間4時間程かかり、重箱3つ分の弁当が完成した。ちょっと多い気がするがフラン先生なら食えるだろう。
待ち合わせの時間になり、【無限収納】に弁当をしまって現場に行くと既に先生達が待っていた。今日の先生達の格好は鎧やローブを脱いでピクニックっぽい服装をしている。でもそれぞれ腰に武器を携帯しているところは冒険者だな。
「お待たせしました先生達。待ちましたか?」
「おはようクロード。私達もさっき来たところだぞ」
「クロっち! お弁当作ってきたっすか!?」
「もちろん作ってきましたよ。フラン先生用に大量に作ってきたから楽しみにしておいてください」
「それじゃ行こっか。私が案内、するね」
街の門から外に出て、ユミナ先生の案内で進んでいく。目的地はユミナ先輩イチオシの場所であるルービック平原。ここから歩いて4時間ほどの距離だ。今の時期、ルービック平原には大量の花が咲き乱れる知る人ぞ知るピクニックには最適な場所なのだそうな。
「あ、そうだ。ただ歩くいていくのもなんですから、これ使いませんか?」
【無限収納】の中から最近作った魔道具を取り出す。それは頭脳は大人で見た目は子供の名探偵が使っているスケボーを参考にして作った大型の浮遊ボードだ。定員は4人まで可能。
「こ、これは一体何をする物なんだ?」
「これは馬車の代わりになる乗り物の試作型魔道具です。みんな乗ってみてください」
「おお、面白そうっすね!」
全員ボードの上に立って乗り、ハンドルを持ってアクセルを入れる。するとボードは宙に浮きそこそこの速度で走り出した。この異世界は当然舗装なんてされていない。このボードは底に仕掛けてある風の魔石から空気を噴出して地面から10cm程浮いて走る仕様なので、どんな悪路でも問題なく走れる。速度は大体30km位は出せるので風を切る爽快な感覚を楽しめるのだ。
「風が気持ちいいな。これもクロードが作ったのか?」
「ええ。何か新しい交通手段を考えていたらなんとなく浮かんだので作ってみました。作ったはいいけど試す時間がなくて。走行実験もしたかったのでちょうど良かったですね」
「クロっち、私も動かしてみたいっす!」
「私も、やってみたいな」
「いいですよ。途中でみんなで交代しながら走らせてみましょう」
それからみんなで交代して走ってを繰り返しながら進んでいくと、2時間ほどで目的地に到着できた。その平原には期待通り見渡す限り色とりどりの花が咲き乱れている。
「おお~、壮観ですね。こんな場所があったなんて」
「クロっちユミナっち! 早速お弁当食べたいっす!」
「うん。今出すから、ちょっと待ってね」
花の上に布を敷き、場所を確保してから俺もユミナ先生と一緒に【無限収納】から弁当を取り出す。ユミナ先生も結構な量の弁当を作ってきていた。内容もサンドイッチやおにぎり、唐揚げなどのオーソドックスなメニューだ。
「クロっちは何を作ってきてくれたんすか?」
「俺はこんな感じですよ」
重箱を広げると、中にはハンバーグやグラタン。コロッケやエビフライ。その中でも俺のイチオシは魔導オーブンで焼き上げたアルケー鳥のローストチキンだ。アルケー鳥は王都で売っていた高級食材で、食べてみるとジューシーで昔食べた名古屋コーチンのような深い味わいのするかなり美味い鳥だ。
みんなで広げた弁当に舌鼓を打つ。フラン先生がめっちゃいい笑顔で食べている。
「おおお! 両方とも美味しいっす! いくらでも入っちゃいそうっすよ!!」
「さすがクロードとユミナだな。料理の腕も上がっているようだ」
「うん、美味しいよクロードくん。このローストチキン、私も作ってみたいな」
よっしゃ、ユミナ先生からも美味しい頂きました! 俺の料理の師匠であるユミナ先生から美味しいと言われるのが一番嬉しい。俺もユミナ先生の作った料理を食べてみると、やはり俺の料理と比べると彼女の料理のほうが美味い。俺もまだまだということか…。
「さすがですユミナ先生。俺の負けです…」
「そ、そんなことないよ。クロードくんのも、美味しいからね?」
「そうっすよクロっち。クロっちのお弁当も絶品っす!」
「ああ、どっちも美味いぞ。お前達に任せて正解だったな」
みんなで楽しくお弁当を楽しんだあと、せっかく来たので周囲をみんなで散歩してみることにした。ついでに【探索魔法】で確認してみると、何やら不可解な場所がある。
「あっちに何かあるみたいですね。行ってみましょうか」
そこは花畑の中心にある空白地帯。地面にはなにやら魔法陣のような模様が刻まれている。
「なんでしょうかねこの魔法陣?」
「なにか、魔力を感じるね。ダンジョンでたまに見る、転移魔方陣っぽいけど…」
「面白そうっすね。なんか罠っぽいっすけど乗ってみるっすか?」
「罠だと? それじゃ私が先陣を切ろう。とぅ!」
「ちょ!?」
罠と聞いてシルビア先輩が喜々として魔法陣に乗ると、突如魔法陣が光り輝きシルビア先生はどこかに消えてしまった。どうやらシルビア先生の危険大好き病が発動したらしい。これヤバイやつじゃね?
「なんで考え無しに乗るんすかねシルっちは…」
「はぁ、まぁこうなってしまったら仕方ありません。俺達も追いましょうか」
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