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第57話「部活対抗戦 決勝ラウンド 2」

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 決勝ラウンド第一試合は一騎当千探求部の圧勝で終わった。次は俺達学園探偵部と冒険部の試合だ。冒険部の面々は前の試合で結構な重傷を負っていたが、今はもうすでに全回復しているみたいで既に全員リングに並んでいる。

「あの最強娘リョフィールにはボコられたがお前等にはやられねぇぜ。一年坊主共」

「胸を借りるつもりで殺らせてもらいますよ。先輩」

「私達2年生なんですけど…」

『両チーム既にリング上で睨み合って気合充分な模様です。ですがオーダーを発表する前にお知らせいたします。第1試合で試合後にも関わらず暴走して暴れたラーハルト選手ですが、体内から薬物反応が検出されたため失格となりました。よって連帯責任のペナルティとして先鋒戦は学園探偵部の不戦勝。冒険部は次鋒から開始とさせていただきます。
 それでは決勝ラウンド第2試合の対戦オーダーを発表してください』

『わかりました。第2試合の各部のオーダーは

 冒険部              学園冒険部
―――――×   先鋒  ○シャルロッテ
 アシュトン  次鋒       アリシア
 トリニティ  中堅      ユリア
  イザーク    副将       クロード
  リョーガ    大将       アステル

以上の様になっております』

『さて、4人での試合となる冒険部ですが一部オーダーを変えてきましたね。ガレイラ選手と交代してアシュトン選手が入っております。資料によりますと、アシュトン選手は現在2年生でCランク冒険者の魔物使いだそうです。学園探偵部のオーダーは部長のアリシア選手が次鋒、Aブロック決勝で活躍したクロード選手が副将になっております。このオーダーには何か意味があるのでしょうか!』

『学園探偵部の真意はわかりませんが、きっと何か深い意味があるのでしょう。それはこの試合で見せてくれるはずです!』

 実際はオーダーの順番にそんなに深い意味はない。シャルロッテは先鋒がいいと譲らなくて、アリシア先輩は自分はそんなに強くないから次鋒でいいそうだ。アステルが大将なのは念のためである。

『それでは決勝ラウンド第2試合、いよいよ開始です!』


~シャルロッテ視点~

 リングに上がり、気持ちを落ち着かせてから双斧を構える。私はこの戦いに勝ち上がり、クロード君の負担を極力減らすために先鋒を志願したんです。こんなガリガリに痩せた見た目男らしくない人に負けるわけにはいかないんです! この人は魔物使いらしいですから、速攻で彼の前に居る巨大なスライムを潰せば勝機はあるはずです。

「それでは第一試合、シャルロッテ 対 アシュトン、試合開始!」

 カーンッ!

「速攻で終わらせます! はぁあ!」

 開始と同時に相手のスライムを斧で攻撃した瞬間、斧がスライムに張り付いて取れなくなってしまいました。そして狼狽えている隙に私の腕がスライムの触手に捕まってしまう。

「こ、これは!」

「かかったね。このスライムは超粘着性でね。一度張り付いたら取れなくなるんだ」

 確かに張り付かれた腕は押しても引いても全く離れる気がしない。それに力も強く、腕を動かそうとしても押さえ付けられているような感じで動かない。でもこの距離なら!

暗黒の斬撃ダークスラッシュ!』

 シュパァンッ! ふにょん。

「えっ!?」

 闇魔法でスライムを攻撃するも、その柔らかい体に吸収されたかのように消えてしまい全く効果がないようです。

「無駄だよ。このスライムには戦闘能力がない代わりに魔法耐性が恐ろしく高いんだ。並みの魔法じゃ全て弾かれてしまうんだよ。そして…」

 ドクンッ!

「んあっ!?」

 体が、熱い!? 何かが私の体に入ってきて暴れているのを感じる。それを感じると共に意識が朦朧として呼吸が荒くなり、体が疼いてしょうがない。なんなんでしょうこれは…。

「このスライムに触れた人種には洩れなく毒が注入されるんだよ。強力なヤツがね。ふへへへ」

 毒…この体の疼きはそれが原因のようですね。スライムが徐々に私の体に巻きついてきている。そのヌメヌメした体が私の体に触れる度に、敏感になった体に電気が走るようにビリビリとした快楽的な感覚が流れ込んできていた。これは…!!

「気持ちいいのかい? 気持ちいいだろうねぇ。あぁ、安心していいよ。このスライムの毒は別に死ぬような類の物じゃない。ちょっと気持ちよくなってしまう毒っていうだけだからね。ふひゃひゃひゃ!」

 気持ちよくって…あれですか。媚薬とかいう薬ですか。この人は私に一体何をするつもりなんでしょう…。そんな事を思っている間にスライムにもう一方の腕も捕まり、そのまま上に持ち上げられてしまった。武器も取り込まれてしまい、体が動かなくて抗うこともできない。
 
「くあっ! はぁ、はぁ…」

「ひゃは! いい眺めだなぁ。顔も赤くなって息も荒い。分かるよぉ。今お前の体は全身性感帯になってスライムの触れてる部分が気持ちよくなってるんだろう? こうしたらもっと気持ちよくなれる。オラァ!」

 ビシィ!!

「うぁあ!!」

 魔物使いの持つムチに叩かれると全身に電流が走った。防具で守られた部分を攻撃されて大したダメージはないはずなのに、その叩かれた部分が異常なまでに疼いてしまう。痛いはずなのに、その痛みが快感に変化してしまっているかのようだ。

「オラ鳴け、鳴け、鳴けぇ!!」

 ビシッ、ビシッ、ビシィッ!

「うっ、ぐっ、ああっ!」

『こ、これはまずい状況になってまいりました。シャルロッテ選手がアシュトン選手に媚薬を盛られ、その体をいいようにされています。このままではこの大会が成人指定されてしまいそうです!!』

『アシュトン選手いい趣味してますね、悪い意味で。おそらくこの学園の女性陣からの評価は右肩下がりの酷いものになっているでしょう』

「うへへへ、僕の評価なんてもともと最底辺だから気にしたりしないよ。それに周りのブス共の評価より、今はこの可愛いメス犬ちゃんと楽しんだ方が有意義だからね。オラァ! 泣けメス犬がァ!」

 ビシッ、ビシッ、ビシッ!

「くはっ! あうっ! んひぃ!!」

 このままでは…拙いですね。意識が朦朧として快楽に取り込まれてしまいそうです。もう私の負けなんでしょうか。こんなことで…。そんなことが頭を過ぎった時、クロード君の声が聞こえてきた。

「…いい加減にしろよクソ野郎がぁ!! 諦めるなシャルロッテ!! お前はこんなゲス野郎にいいようにされる程弱いわけがないだろうが!!」

「そうだよシャルロッテちゃん! 頑張って!!」

 クロード君、アリシア先輩…。そうでした。私の目的はなんでしたか? クロード君の負担を減らすために先鋒に志願したくせにこの体たらくはなんですか! 私は…こんなところで…こんな男に負けるわけにはいかないんです!!

「はぁ、はぁ、クロード君…。うぐっ…うああああああ!!!」

「な、なんだ!?」

 メキッ…パキッ…わさぁ…。 

 私の体がミシミシと音を立てて変わっていくのを感じる。全身に力が漲り、さっきまで襲っていた快楽がまるで無かったかのように調子が良くなった気がした。捕まっていた腕を振りおろし、スライムを無理やり引きちぎる。さっきまでとはまるで別人になったかのようにあっさりと抜け出すことができた。

「ひぃぃ、し、白い…狼!?」

「グルルルルル…ワオォォォォン!!」

『なんと! シャルロッテ選手が白い狼へと変身し、スライムの拘束を引きちぎったぁ!』

『白狼族の獣化能力が発動したようですね。古い文献を見るに、白狼族の狼形態は普通の獣人とは桁違いの力を秘めていると書いてありました。これはチャンスですね!』

「し、白いからってなんだってんだ! ただの獣だろうが!! やれスライム、あの狼を取り込め!」

「グルルル、シャアアアアアア!!」

 私は無意識に口から白い何かを吐く。それを浴びたスライムはあっという間に凍ってしまい、そのまま砕けて消えてしまった。

「なん…だと…。僕のスライムが…えっ!? ちょ、待って!!」

 バクッ! ブチブチッ! ブシャアアアア!

「ぎ、ぎゃああああ!! 足…僕の足ぃぃぃ!! いや! 助けて! もう無理!! ギブアップ…ギブアップゥゥゥゥゥ!!」

「グルルルル…ガアアァァァ!!」

「ぎゃあああああ!!!」

 何となくこの男の足を喰いちぎってみる。でも不味いからすぐに吐き出した。腕にも噛み付き、喰いちぎってみたけどやっぱり不味いですね。次は何処を試してみましょうか…。

「そ、それまで! 勝者シャルロッテ! もう止めなさい!」

 うるさいですね。私はこの男を噛み殺さなきゃならないんです。邪魔しないでください。

「ガアアァァァァ!! グルル!?」

 いつの間にか何かに縛られています。なんでしょうかこの鎖は。動けません。

「そこまでだシャルロッテ。【状態異常解除ディスペル】発動!」

 私の知っている優しい声が聞こえ、淡い光が私を包み込んでいく。なんか気持ちいいですね…。


~クロード視点~

 全ての状態異常を解除する【状態異常解除ディスペル】でシャルロッテが元の獣人の姿に戻っていく。彼女が着けていた装備は獣化した時に全て外れてしまったので元に戻った途端に全裸になってしまったが、人目に触れる前に俺のローブを掛けてあげているのでセーフだ。それにしてもこいつが獣化したら意識も獣になるのか。もう緊急時以外使わないように釘指しておかないとな。

「学園探偵部、次の試合はどうする?」

 シャルロッテはあいつの毒のせいで疲れてしまったのか、今も眠ってしまっているので次の試合は出られない。これはしょうがないか。

「シャルロッテは棄権させます。アリシア先輩、次お願いしていいですか?」

「うん! シャルロッテちゃんの分も頑張るよ!」

 第1試合はある意味相打ちで終わった。今も一応俺達が一歩リードしているが、この先どうなるかはわからない。今はアリシア先輩を信じて見守ろう。

『シャルロッテ選手、元の姿には戻りましたが、眠ったまま起き上がれなくなったので棄権するようです。次の試合はアリシア選手対トリニティ選手です。どのような戦いが展開されるのか!』

『アリシア選手の力をまともに見るのは初めてなので期待大ですね。熱い戦いを期待しましょう!』

 アリシア先輩はリングに登り、トリニティさんと向き合っている。

「ふふっ、よろしくね焼却の魔女さん」

「私はそんな大層な名前じゃないよ。私は学園探偵部部長、アリシアです!」


「それでは第2試合、アリシア 対 トリニティ、試合開始!!」


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