271 / 278
第七章:プリンセス、物語を紡ぐ(仮)
(26)激闘VS勇者パーティー
しおりを挟む
剣聖の剣技は想像を絶するレベルだった。まずはその剣速に驚愕する。
初手を右で受けたと思った次の瞬間には左からその鋭い切っ先が迫っているという具合に。正直意味がわからない。剣二本持ってるの!? そう思うほどに速い。勿論剣は一本しか持っていないからこそ驚愕している。
次いでそのパワーに圧倒される。一撃一撃が非常に重いのだ。受けるたびに腕に痺れが走る。その細腕に一体どれほどの力を秘めているのだろうか? 確かにノインさんは貴族令嬢としては鍛え抜いた体格だけど、女性としての魅力がないようなゴツい人ではない。引き締まった身体は十二分に魅力的だと思う。ぜひ堪能したいーーって違うわ!? 私は何を妄想してるのよ! と連撃を受け止めながら妄想してしまうのであった。
「随分と余裕そうだな」
「……そうでもありませんよ?」
速く重い剣を受け止め、逸らし、時には牽制の一振りでノインさんの剣技を封じる。決して楽な仕事ではない。研ぎ澄まされた切っ先を紙一重……というほどではないかもしれないけれど、そのくらいの見切りをしつつやり過ごすというのは存外ストレスを感じるものみたいでしんどい。
やっぱり私は魔法使いなんだなって改めて思う次第です。
「それにしても本当に魔法使いなのか疑いたくなるな」
「正真正銘魔法使いですが信じて貰えませんか?」
「私の剣を容易く受け止める魔法使いなど聞いた事がない。驕るつもりはないが、これでも剣聖として相応の研鑽を積んできたと自負している」
「ええ。さすがですね」
こうして会話しながらでも恐ろしく鋭い一撃が繰り出されている。一瞬たりとも気を抜くことのできない剣でのやりとり。これ観戦する側なら手放しですごい凄いって出来たんだろうけど、当事者なのでただただしんどい。
それにしても、ふむ。ノインさんが冷静さを取り戻している? それが剣筋にも現れてきている様に思える。あまり悠長なことをしているとさすがに今の私でも足元を掬われてしまうかも……。
「ーーにも関わらず貴女に剣が届かない」
「そうですね。今のノインさんでは私には敵わないでしょう。こう見えても私だって頑張ってきたんですよ? それこそ幾度も死線をくぐり抜けて……ね?」
死線どころかその先まで行っている訳だけれども、それはこの場では説明できない。
「信じられないな」
「でしょうね」
「だが信じるしかないようだ。貴女は強い。魔法使いだとは未だ信じられないが、私よりも剣の頂に近い場所にいるようだ」
「いえいえ。それ程ではありませんよ」
だって私のはただのスキル任せなんですから。冥王様の剣。そのスキルを十二分に発揮するべく魔力チートによるステータスの底上げをしているだけに過ぎません。私自身の研鑽など貴女には及びもしませんよ、剣聖ノイン・ファランズ殿。それに……何度か繰り返せばおそらくは重ねてきた努力の差が出るでしょう。やはり私は剣士ではないということですね。
「故にここからは個ではなくチームの一員として我が剣を振るわせて貰おう! 皆でかかってこいという言葉には後悔してもらう」
「ーー!?」
ノインさんの剣を弾いた瞬間直ぐ背後に剣を突き出す。軽い金属音に驚けばメルさんのいやらしい笑みがあった。
ホント変わらない人だ。こうまで見事に気配を消すなんてさすがは一流の……暗殺者ね。
「ーー!!」
息を吐く間も無くもう一人の剣士ーー勇者の剣が振り下ろされた。勇者のくせに不意打ちなんて卑怯よっ!!(笑)
「これを受け止めるとはな!」
腕がちぎれそうなほどの勢いで更に別の方向へ剣を振るう。そこには上段から剣を振り下ろすルクス様がいた。
「三人がかりだが悪く思わないでくれよ?」
「うふふ……では私も本気を出させて頂きますね」
人の限界を超える速度。通常ならば知覚が追い付かずただ速さに振り回されるだろうけれど、私の場合はそうはならない。こと後の先をとることに関しては我が冥王様の剣は史上最強と言って良い。
例えこの倍の人数相手であろうとも今の私のステータスであれば打ち合うことができるだろう。
「クッ!?」
「…………」
「何だとッッ!!」
あらゆる方向から繰り出される攻撃を全て受け止めてみせる。時に彼ら自身の攻撃を利用して相殺させつつも全ての剣を弾き返し続ける。ただの一撃たりとも私の身には掠らせない。
「そろそろ私も参戦させて頂きますね」
声の方に目を向ければそこには癒しの聖女ソフィス様が両手にメイスを構えていた。一体どこに持っていたのかと問いたくなるトゲトゲのついた片手メイス二刀流。聖女様のお胸サイズの鉄球が何とも刺々しい。(笑)
癒しの聖女とは一体……などと素朴な疑問が湧き上がってくるが、彼女が回復魔法の達人なのも知っている。私個人の見解としては虐殺聖女とか名付けたいところだ。あのゴブリン討伐戦を一度でも目にすれば彼女に癒しを求めるのは間違っているのだろうか? などと冗談を言いたくなる。
つまり、メイスを振るわせれば彼女は一流の戦士でもあるのだ。現状の三人の優秀な剣士……とアサシンに加えて鉄球聖女様が参戦する。
(さてやれるかしら?)
今の私に彼女ら勇者パーティーと渡り合うだけの力があるのかどうか。それも……この剣一本で!!
「全力で挑んでくださいませ。私キラリ・フロース・ヒストリア、新生魔王国女王が受けてたちましょう!!」
改めて四人と対峙して剣を構える私。うふふ。ちょっと興奮してきたかもしれないわ。
血湧き肉躍るってこういう事を言うのかしらね。自分の事なのに物凄く変な感じがする。全く、また変なスキルの効果じゃないでしょうね? もうホントやめてよ!?
初手を右で受けたと思った次の瞬間には左からその鋭い切っ先が迫っているという具合に。正直意味がわからない。剣二本持ってるの!? そう思うほどに速い。勿論剣は一本しか持っていないからこそ驚愕している。
次いでそのパワーに圧倒される。一撃一撃が非常に重いのだ。受けるたびに腕に痺れが走る。その細腕に一体どれほどの力を秘めているのだろうか? 確かにノインさんは貴族令嬢としては鍛え抜いた体格だけど、女性としての魅力がないようなゴツい人ではない。引き締まった身体は十二分に魅力的だと思う。ぜひ堪能したいーーって違うわ!? 私は何を妄想してるのよ! と連撃を受け止めながら妄想してしまうのであった。
「随分と余裕そうだな」
「……そうでもありませんよ?」
速く重い剣を受け止め、逸らし、時には牽制の一振りでノインさんの剣技を封じる。決して楽な仕事ではない。研ぎ澄まされた切っ先を紙一重……というほどではないかもしれないけれど、そのくらいの見切りをしつつやり過ごすというのは存外ストレスを感じるものみたいでしんどい。
やっぱり私は魔法使いなんだなって改めて思う次第です。
「それにしても本当に魔法使いなのか疑いたくなるな」
「正真正銘魔法使いですが信じて貰えませんか?」
「私の剣を容易く受け止める魔法使いなど聞いた事がない。驕るつもりはないが、これでも剣聖として相応の研鑽を積んできたと自負している」
「ええ。さすがですね」
こうして会話しながらでも恐ろしく鋭い一撃が繰り出されている。一瞬たりとも気を抜くことのできない剣でのやりとり。これ観戦する側なら手放しですごい凄いって出来たんだろうけど、当事者なのでただただしんどい。
それにしても、ふむ。ノインさんが冷静さを取り戻している? それが剣筋にも現れてきている様に思える。あまり悠長なことをしているとさすがに今の私でも足元を掬われてしまうかも……。
「ーーにも関わらず貴女に剣が届かない」
「そうですね。今のノインさんでは私には敵わないでしょう。こう見えても私だって頑張ってきたんですよ? それこそ幾度も死線をくぐり抜けて……ね?」
死線どころかその先まで行っている訳だけれども、それはこの場では説明できない。
「信じられないな」
「でしょうね」
「だが信じるしかないようだ。貴女は強い。魔法使いだとは未だ信じられないが、私よりも剣の頂に近い場所にいるようだ」
「いえいえ。それ程ではありませんよ」
だって私のはただのスキル任せなんですから。冥王様の剣。そのスキルを十二分に発揮するべく魔力チートによるステータスの底上げをしているだけに過ぎません。私自身の研鑽など貴女には及びもしませんよ、剣聖ノイン・ファランズ殿。それに……何度か繰り返せばおそらくは重ねてきた努力の差が出るでしょう。やはり私は剣士ではないということですね。
「故にここからは個ではなくチームの一員として我が剣を振るわせて貰おう! 皆でかかってこいという言葉には後悔してもらう」
「ーー!?」
ノインさんの剣を弾いた瞬間直ぐ背後に剣を突き出す。軽い金属音に驚けばメルさんのいやらしい笑みがあった。
ホント変わらない人だ。こうまで見事に気配を消すなんてさすがは一流の……暗殺者ね。
「ーー!!」
息を吐く間も無くもう一人の剣士ーー勇者の剣が振り下ろされた。勇者のくせに不意打ちなんて卑怯よっ!!(笑)
「これを受け止めるとはな!」
腕がちぎれそうなほどの勢いで更に別の方向へ剣を振るう。そこには上段から剣を振り下ろすルクス様がいた。
「三人がかりだが悪く思わないでくれよ?」
「うふふ……では私も本気を出させて頂きますね」
人の限界を超える速度。通常ならば知覚が追い付かずただ速さに振り回されるだろうけれど、私の場合はそうはならない。こと後の先をとることに関しては我が冥王様の剣は史上最強と言って良い。
例えこの倍の人数相手であろうとも今の私のステータスであれば打ち合うことができるだろう。
「クッ!?」
「…………」
「何だとッッ!!」
あらゆる方向から繰り出される攻撃を全て受け止めてみせる。時に彼ら自身の攻撃を利用して相殺させつつも全ての剣を弾き返し続ける。ただの一撃たりとも私の身には掠らせない。
「そろそろ私も参戦させて頂きますね」
声の方に目を向ければそこには癒しの聖女ソフィス様が両手にメイスを構えていた。一体どこに持っていたのかと問いたくなるトゲトゲのついた片手メイス二刀流。聖女様のお胸サイズの鉄球が何とも刺々しい。(笑)
癒しの聖女とは一体……などと素朴な疑問が湧き上がってくるが、彼女が回復魔法の達人なのも知っている。私個人の見解としては虐殺聖女とか名付けたいところだ。あのゴブリン討伐戦を一度でも目にすれば彼女に癒しを求めるのは間違っているのだろうか? などと冗談を言いたくなる。
つまり、メイスを振るわせれば彼女は一流の戦士でもあるのだ。現状の三人の優秀な剣士……とアサシンに加えて鉄球聖女様が参戦する。
(さてやれるかしら?)
今の私に彼女ら勇者パーティーと渡り合うだけの力があるのかどうか。それも……この剣一本で!!
「全力で挑んでくださいませ。私キラリ・フロース・ヒストリア、新生魔王国女王が受けてたちましょう!!」
改めて四人と対峙して剣を構える私。うふふ。ちょっと興奮してきたかもしれないわ。
血湧き肉躍るってこういう事を言うのかしらね。自分の事なのに物凄く変な感じがする。全く、また変なスキルの効果じゃないでしょうね? もうホントやめてよ!?
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる