魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第七章:プリンセス、物語を紡ぐ(仮)

(26)激闘VS勇者パーティー

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 剣聖の剣技は想像を絶するレベルだった。まずはその剣速に驚愕する。
 初手を右で受けたと思った次の瞬間には左からその鋭い切っ先が迫っているという具合に。正直意味がわからない。剣二本持ってるの!? そう思うほどに速い。勿論剣は一本しか持っていないからこそ驚愕している。
 次いでそのパワーに圧倒される。一撃一撃が非常に重いのだ。受けるたびに腕に痺れが走る。その細腕に一体どれほどの力を秘めているのだろうか? 確かにノインさんは貴族令嬢としては鍛え抜いた体格だけど、女性としての魅力がないようなゴツい人ではない。引き締まった身体は十二分に魅力的だと思う。ぜひ堪能したいーーって違うわ!? 私は何を妄想してるのよ! と連撃を受け止めながら妄想してしまうのであった。

「随分と余裕そうだな」
「……そうでもありませんよ?」

 速く重い剣を受け止め、逸らし、時には牽制の一振りでノインさんの剣技を封じる。決して楽な仕事ではない。研ぎ澄まされた切っ先を紙一重……というほどではないかもしれないけれど、そのくらいの見切りをしつつやり過ごすというのは存外ストレスを感じるものみたいでしんどい。
 やっぱり私は魔法使いなんだなって改めて思う次第です。

「それにしても本当に魔法使いなのか疑いたくなるな」
「正真正銘魔法使いですが信じて貰えませんか?」
「私の剣を容易く受け止める魔法使いなど聞いた事がない。驕るつもりはないが、これでも剣聖として相応の研鑽を積んできたと自負している」
「ええ。さすがですね」

 こうして会話しながらでも恐ろしく鋭い一撃が繰り出されている。一瞬たりとも気を抜くことのできない剣でのやりとり。これ観戦する側なら手放しですごい凄いって出来たんだろうけど、当事者なのでただただしんどい。
 それにしても、ふむ。ノインさんが冷静さを取り戻している? それが剣筋にも現れてきている様に思える。あまり悠長なことをしているとさすがに今の私でも足元を掬われてしまうかも……。

「ーーにも関わらず貴女に剣が届かない」
「そうですね。今のノインさんでは私には敵わないでしょう。こう見えても私だって頑張ってきたんですよ? それこそ幾度も死線をくぐり抜けて……ね?」

 死線どころかその先まで行っている訳だけれども、それはこの場では説明できない。

「信じられないな」
「でしょうね」
「だが信じるしかないようだ。貴女は強い。魔法使いだとは未だ信じられないが、私よりも剣の頂に近い場所にいるようだ」
「いえいえ。それ程ではありませんよ」

 だって私のはただのスキル任せなんですから。冥王様の剣。そのスキルを十二分に発揮するべく魔力チートによるステータスの底上げをしているだけに過ぎません。私自身の研鑽など貴女には及びもしませんよ、剣聖ノイン・ファランズ殿。それに……何度か繰り返せばおそらくは重ねてきた努力の差が出るでしょう。やはり私は剣士ではないということですね。

「故にここからは個ではなくチームの一員として我が剣を振るわせて貰おう! 皆でかかってこいという言葉には後悔してもらう」
「ーー!?」

 ノインさんの剣を弾いた瞬間直ぐ背後に剣を突き出す。軽い金属音に驚けばメルさんのいやらしい笑みがあった。
 ホント変わらない人だ。こうまで見事に気配を消すなんてさすがは一流の……暗殺者ね。

「ーー!!」

 息を吐く間も無くもう一人の剣士ーー勇者の剣が振り下ろされた。勇者のくせに不意打ちなんて卑怯よっ!!(笑)

「これを受け止めるとはな!」

 腕がちぎれそうなほどの勢いで更に別の方向へ剣を振るう。そこには上段から剣を振り下ろすルクス様がいた。

「三人がかりだが悪く思わないでくれよ?」
「うふふ……では私も本気を出させて頂きますね」

 人の限界を超える速度。通常ならば知覚が追い付かずただ速さに振り回されるだろうけれど、私の場合はそうはならない。こと後の先をとることに関しては我が冥王様の剣は史上最強と言って良い。
 例えこの倍の人数相手であろうとも今の私のステータスであれば打ち合うことができるだろう。

「クッ!?」
「…………」
「何だとッッ!!」

 あらゆる方向から繰り出される攻撃を全て受け止めてみせる。時に彼ら自身の攻撃を利用して相殺させつつも全ての剣を弾き返し続ける。ただの一撃たりとも私の身には掠らせない。

「そろそろ私も参戦させて頂きますね」

 声の方に目を向ければそこには癒しの聖女ソフィス様が両手にメイスを構えていた。一体どこに持っていたのかと問いたくなるトゲトゲのついた片手メイス二刀流。聖女様のお胸サイズの鉄球が何とも刺々しい。(笑)
 癒しの聖女とは一体……などと素朴な疑問が湧き上がってくるが、彼女が回復魔法の達人なのも知っている。私個人の見解としては虐殺聖女とか名付けたいところだ。あのゴブリン討伐戦を一度でも目にすれば彼女に癒しを求めるのは間違っているのだろうか? などと冗談を言いたくなる。
 つまり、メイスを振るわせれば彼女は一流の戦士でもあるのだ。現状の三人の優秀な剣士……とアサシンに加えて鉄球聖女様が参戦する。

(さてやれるかしら?)

 今の私に彼女ら勇者パーティーと渡り合うだけの力があるのかどうか。それも……この剣一本で!!

「全力で挑んでくださいませ。私キラリ・フロース・ヒストリア、新生魔王国女王が受けてたちましょう!!」

 改めて四人と対峙して剣を構える私。うふふ。ちょっと興奮してきたかもしれないわ。
 血湧き肉躍るってこういう事を言うのかしらね。自分の事なのに物凄く変な感じがする。全く、また変なスキルの効果じゃないでしょうね? もうホントやめてよ!?
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