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第七章:プリンセス、物語を紡ぐ(仮)
(19)わたしの大切な人(笑)
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ファンタジーで一番便利な魔法はきっと転移魔法だと思う。文明の発達した世界ではわかりにくいかもしれないけれど移動時間の短縮というのは替え難い利点が多々ある。ふーん、利点て? と問われるとえーと……。ってなるのだけれど、ある事は間違いない。たぶん……。
ほら、ついさっきまでスイートルームで寛いでいた私がほんの瞬きする一瞬で全く別の土地に立っているのだからすごく便利よね。一度でもこれを経験してしまうと主要交通機関(馬車)のお世話になれなくなること請け合いである。
普段の私の移動方法ーー飛行魔法ですらチート以外の何物でもないのだけど転移はその上をいく。
そして転移で世界中を周るってなんだかRPGの大詰めっぽくないですか!?
「……ごほん」
「喉の調子が悪いのですか姫様?」
「いいえ、そうではないわ。大丈夫よアン」
「何かあれば直ぐに仰ってくださいね」
「ええ、ありがとう」
さてところ変わってここは大陸の遥か西の端。武神王国の更に西に位置する昇竜山脈の麓。
竜族が住むと言われている地。実際に人に紛れて住んでいるのだから驚きよね。ただその見た目は人と変わらないから誰も気が付かない。此処から竜の聖地と言われる山頂を目指せば竜の姿の竜族と遭遇するのだけれど、命が惜しければ登山はお勧めしない。
山は基本的に立入禁止区域となっている。誰だって竜の怒りなど買いたくないのだから当然の対処だろう。それでも冒険者という奴らは腕試しなのか度胸試しなのか、それとも一攫千金を狙ってなのか立ち入る者が後を経たない。
当然討伐したという話は聞かない。でも時折超高額で竜素材が出回る事がある。どうやって入手しているのだろうか……?
「キラリよ、このような辺鄙な所に何の用があるのだ? 少々竜臭くて鬱陶しいのだが……」
いやアンタそれ絶対わかってるでしょ? 思わず突っ込みたくなるようなガルム様のセリフ。そもそも竜臭いってどんな匂いよ!? 私には全くわからない匂いだわ。
「ここに大切……? な人がいるのよ」
「大切な人? 姫様いつの間にそのような方とお知り合いに……? ですがいけません。姫様に不純異性交遊はまだ早いと思います」
何を言ってるのこの子は? 私なんて経験豊富なベテランみたいなモノよ? あんな事やこんな事、あまつさえあのような大胆な事まで。自慢じゃないけど結構多種多様なプレイの経験が……。まぁ今世ではないけれどもさ……。
「ほう? 貴様の想い人か……それはそれはしかと見極めねばならぬな」
ちょっとこの黒執事さん怖いんですけど!? あ、今は素のガルム様のままかしら?
「あのね、言っておくけれど相手は女の人よ?」
「そうなんですか!?」
「ほう?」
嬉しそうだなおい!? 私だって男の一人や二人……いないわね。今回は絶賛処女継続中だったわ。スラちゃんはノーカンよ。お尻だしね。
「というわけで今から彼女をナンパしに行きますので二人は適当に過ごしててくださいね」
「「ーー!?」」
何を驚いているのだか。執事を連れて女性をナンパ出来ないでしょ?
「貴様一人では危ないのではないか?」
「そうですよ! 私なら姿が見えませんからいつも通りお側にお置きくださいませ!!」
「別に危なくはないと思うけど……」
「いいえ! 姫様は見目麗しゅうございます!! お一人では歩けば不埒な輩に何をされるかわかったモノではありません!!」
「その通りだ。貴様が一人で歩くなどもっての外だ。我は認めぬ」
いやいやこの人たち過保護すぎません? 普通に町を散策するだけでトラブルに遭遇することなんて滅多に無いと思うわ。
でもまぁ心配してくれているのに無下にもしづらいというか何というか……。
「うーん。それなら少し離れて護衛するでどう? 彼女の事は知っているけれど、今回は初めて会うのよ。姿の消せるアンはともかくガルム様が側にいたのでは警戒されてしまうかもしれません。ですからこれが最大譲歩ですね」
「……仕方がない。見えてさえいればどうとでもなる。承諾しよう」
「よかった。ではそれでお願いしますね」
「私はお側を離れませんからね!」
「わかったわよ。でも大人しくしていて頂戴ね? これから竜姫ファアを拐かしにいくんだから」
「「は?」」
「だから、竜姫を攫いにいくのよ?」
「誰が誰を?」
「私が竜姫を攫うのよ?」
「やめておけ。竜王の逆鱗に触れる行為だ」
「だからよだから。彼女の安全を確保しなければ世界が滅びてもおかしくないでしょう?」
「つまりこの先彼女の身に何かが起こるわけか?」
「ええ。放っておけば死ぬわね」
「え、え、え!?」
「なるほど。理解した。それならば致し方あるまい。保護することに同意しよう」
同意されなくても攫いにいくけれど、同意してくれた方が余計な軋轢を産まずに済む。それに……いざとなれば竜王VS魔狼王という史上屈指の好カードを観戦できるかもしれない。いやダメか。世界が滅びかねない。ハデス様ならそうはならないと思うのだけれど、あれで意外とガルム様ったらムキになる方だから……。
「ーーというわけで私は彼女を探して回るので暫く一人にして頂戴」
「お供します!」
「影から見守っておこう」
こうしてファア誘拐作戦が開始されたのであった。取り敢えずこの町に居てくれればいいのだけれど……。
あの色ボケ娘の事だから何処かでやらしい事してる可能性もあるのよね……。さすがに町に居なければお手上げだし、神様どうか、どうかよろしくお願いします!
そんな事を願いながら町の大通りを歩くこと五分少々。それは突然やってきた。
「ーーやぁ久しぶりだね。私の事覚えてる?」
そんな風に妙に人懐っこく声をかけてきたのは長い黒髪を肩のあたりで一つに束ねた美人さんだった。
歳の頃は二十歳くらい。もう少し落ち着いた方がいいのではないかしら? 服装は一体どこの王子様だと言いたくなるような白を基調とした上等なもの。襟を少しラフにして軽薄さーーええと……チャラさ? いや違うな。カジュアルっぽく着こなしている。うんコレだわ。
まぁ服装なんてどうでもいい。速い話が竜姫ファアの登場である。開始五分でエンカウントって酷い遭遇率だわ。
「ええ、ファア様。お久しぶりでございます」
「覚えていてくれたんだね。嬉しいよ。ところでどうかな? これから二人で愛を語り合わないかい?」
「まぁ嬉しいですわ。私もファア様と語り合いたいと思っていたのです」
「そうなんだ。これはもう運命だね。さぁ行こうじゃないか!」
「はい。喜んで♪」
差し出された手を迷わず握りしめる。というか掴む? 言うなれば犯人を逮捕するときのような絶対に逃さないという感じ。
「あれ? なんていうか随分と積極的なお嬢さんだね……ところでキミ誰? 初対面だよね?」
大通りから狭い路地へとターゲットを誘い込む。というか引き摺り込む。へっへっへ。逃がさないぜネェちゃん。(笑)
「あらあら? キラリの事をお忘れですか? あんなにも私の事を愛してくださったというのに……悲しいですわ」
「ちょっと待ってくれるかな!? すぐに思い出すから! キミのような美少女を忘れる筈がないんだけどなぁ……あーうーえーんー誰だったかなぁ……」
「過去の事は構いません。今の私を見てくださいませんかファア様」
さりげなく束縛の魔法で私の腕とファアの腕をグルグルと縛り付けていく。
「ちょっ、ちょっと待って!? これ何かおかしくない!? 私のナンパが上手くいくのはデフォだけどキミ絶対魅了されてないよね!?」
「あらやだ。魅了されていますよ。ええ、ええ。もちろんですとも。ああ、ファア様が愛しくて愛しくて仕方がありませんわ。もういっそ食べてしまいたいくらいに……」
ちょっとした悪戯心で触れた指先からちょっぴり吸収のスキルを使ってみる。
「んあっっ!? な、何コレ!?」
「うふふ。可愛らしいお声ですわ」
「待って!? 今の何!? ちょっと何か吸われたような気がする!? しかもいつの間にか縛りつけられてるし!?」
「お気に召しませんでしたか? 確か拘束されるのもお好きだったと思いましたけれど?」
ねぇ? 触手でぐっちょぐちょもいけるクチでしたわよね?
「それは否定しないけれども……ちょっと何か違う気がするなぁ……あれぇ……なんだかコレいつになくヤバイ気がしてきたんですけどぉ……」
「気のせいですわ。今からファア様には私と一緒に目眩く官能の世界へと旅立って頂くだけですわ。大丈夫。天井のシミでも数えていればいいのですわ。さぁ、犬に噛まれたとでも思ってくださいませ(笑)」
「うわぁ~いつもは自分が言ってるセリフなのにこんなにも怖いって知らなかったなぁ~あはは。私やっぱりキミのこと知らないからこの辺でお暇したいんだけど……ダメだよねぇ?」
「はいもちろんです。ご心配なく。何も命まで頂戴しようとは思っていませんから」
そもそも何も取りませんけどね。でもまぁ、ちょっと楽しくてはしゃぎすぎちゃいましたかね? 随分と怯えさせてしまった様子……。ここはあれですね! 最近不足気味なエ□要素を補充するチャンス!! 私の代わりにこのエ□娘で代用しましょう!! ああッッナイスアイディア!!!
「うわぁ~その笑顔超嫌な予感なんですけどぉ!?」
「うふふ。それほどでもありませんわ♪」
「……顔と言葉の不一致ってこんなにも怖かったのね……」
「あら? 何のことでしょうか? 私は終始ファア様に魅了されておりますわ。もうホント年中無休ですのよ♪」
二人の腕を繋ぐ愛の蔦。(笑)それをホンのすこーし伸ばして彼女の袖口から服の中へ。
「ーーひぁっっ!? 待って!? いやッッ!! 何か入ってくるっっ!?」
「大丈夫ですよ~痛くないですからね~。ほんの少しさっきぽが入ったり出たりするだけですからね~」(笑)
「いやいやっぁぁん! それ完璧にアレじゃん!?」
「アレが何かはよくわかりません。私たち女の子同士ですから……あ!」
そういえばこの人はアレもついてたんでしたね……。つまり二つの性の快楽を同時に……ゴクリ。コレは興味深いです!!
スルスルとその肢体を舐めるように絡みつきながら胸の方へと蔦を這わせてゆく。
白い肌に絡みつく濃い緑の蔦。コレが赤黒いある種の卑猥さを感じさせる触手とかだったら最高なのだけれど……。さすがの私でもそれをする手段は持ち合わせていない。何処かでそれ系の魔物と交わればもしかしたら得られるかもしれないけれど、その前提がちょっと嫌かもしれない。
ファアが幽閉されていた水槽を思い出して少し後悔した。
「んあ……ぁぁんっ……そこダメェぇぇっっ!!」
などと思案している間にすっかりエ□担当がその役目を果たしてくれていた。既に全身を絡め取った蔦は彼女の敏感なところを責めたてている。それはもちろん上も下も……うふふ。
「ファア様いいお声ですわ。んふふ。何も気になさらず全て私にお任せくださいませ。アソコもココも気持ちよくさせてあげますからね……うふふ」
さぁ! 禁断のアソコへいざッ!! アレをアレしながらアソコも一緒にクチュクチュしてあげますからねっっ!!!
………………。
それからしばらくの間放送禁止な感じのシーンが続きます。
アレがアレしてああなってしまう。アソコがグッショリでアレからアレが迸り独特な匂いが辺りに漂う。
絶えず喘ぐ若い女の声が響いているが、この路地から漏れることはない。
魔法って本当にいいもんですね!!
………………。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
息も絶え絶え。熱く火照る体としっとりと滲む汗。腰砕けでピクンピクンと痙攣するように震える肢体。蔦で絡め取っていなかったら間違いなく地面に倒れていたでしょう。
あまりにも短い時間に男と女の絶頂を繰り返し繰り返し迎えた体はある意味瀕死の重症と言えるかもしれない。
そう気がついたのはつい先程のこと。その時には今よりももっと酷い有様だった。ああいうのを完堕ちというのかしらね。白目を剥いて涎を垂らしながら……ちょっと人様にはお見せできない様相でした。
……はい。やり過ぎました、ごめんなさい。
でも大丈夫。安心してください! はいてーーじゃなかった。完全回復しましたからっ!!
だから大丈夫。ちょっと呼吸が荒いだけで命に別状はありません。
「はぁはぁはぁはぁ……あふん……」
多分……きっと。
「姫様大丈夫でしょうか? 何やら痙攣しておりますが……?」
「だ、大丈夫よ! ちゃんと魔法で回復したわ。私の魔法なら死んでさえいなければなんとかなるから大丈夫よ!!」
「そうなのですね……」
疑わしげなアンの視線はファアへと向けられる。
黒髪美女のあられもない姿。そして未だ恍惚とした表情のままビクンビクンと震える様子はとても大丈夫とは思えない。
でもきっと大丈夫だと思う。だってこの人あの触手プールを平然と乗り切ったんだもん。アレくらいなら余裕よ。
さて、いつまでも遊んでいるわけにはいかないので本題に入りましょう。
「ガルム様転移をお願いします。行き先はハデス様のもとです」
「あの男は放って置けばいい。未来永劫竜王と戯れておればよい」
「そういうわけにはいきません。もう、わかってるくせに……。ガルム様、お願いします。私を連れていってくださいませ」
少し甘い声色でおねだりする。
ガルム様は渋々承諾してくれるのだけれど……はぁ……いちいち面倒なんですけど。ほんとにこの男どもときたら面倒なんだからっっ!!
ほら、ついさっきまでスイートルームで寛いでいた私がほんの瞬きする一瞬で全く別の土地に立っているのだからすごく便利よね。一度でもこれを経験してしまうと主要交通機関(馬車)のお世話になれなくなること請け合いである。
普段の私の移動方法ーー飛行魔法ですらチート以外の何物でもないのだけど転移はその上をいく。
そして転移で世界中を周るってなんだかRPGの大詰めっぽくないですか!?
「……ごほん」
「喉の調子が悪いのですか姫様?」
「いいえ、そうではないわ。大丈夫よアン」
「何かあれば直ぐに仰ってくださいね」
「ええ、ありがとう」
さてところ変わってここは大陸の遥か西の端。武神王国の更に西に位置する昇竜山脈の麓。
竜族が住むと言われている地。実際に人に紛れて住んでいるのだから驚きよね。ただその見た目は人と変わらないから誰も気が付かない。此処から竜の聖地と言われる山頂を目指せば竜の姿の竜族と遭遇するのだけれど、命が惜しければ登山はお勧めしない。
山は基本的に立入禁止区域となっている。誰だって竜の怒りなど買いたくないのだから当然の対処だろう。それでも冒険者という奴らは腕試しなのか度胸試しなのか、それとも一攫千金を狙ってなのか立ち入る者が後を経たない。
当然討伐したという話は聞かない。でも時折超高額で竜素材が出回る事がある。どうやって入手しているのだろうか……?
「キラリよ、このような辺鄙な所に何の用があるのだ? 少々竜臭くて鬱陶しいのだが……」
いやアンタそれ絶対わかってるでしょ? 思わず突っ込みたくなるようなガルム様のセリフ。そもそも竜臭いってどんな匂いよ!? 私には全くわからない匂いだわ。
「ここに大切……? な人がいるのよ」
「大切な人? 姫様いつの間にそのような方とお知り合いに……? ですがいけません。姫様に不純異性交遊はまだ早いと思います」
何を言ってるのこの子は? 私なんて経験豊富なベテランみたいなモノよ? あんな事やこんな事、あまつさえあのような大胆な事まで。自慢じゃないけど結構多種多様なプレイの経験が……。まぁ今世ではないけれどもさ……。
「ほう? 貴様の想い人か……それはそれはしかと見極めねばならぬな」
ちょっとこの黒執事さん怖いんですけど!? あ、今は素のガルム様のままかしら?
「あのね、言っておくけれど相手は女の人よ?」
「そうなんですか!?」
「ほう?」
嬉しそうだなおい!? 私だって男の一人や二人……いないわね。今回は絶賛処女継続中だったわ。スラちゃんはノーカンよ。お尻だしね。
「というわけで今から彼女をナンパしに行きますので二人は適当に過ごしててくださいね」
「「ーー!?」」
何を驚いているのだか。執事を連れて女性をナンパ出来ないでしょ?
「貴様一人では危ないのではないか?」
「そうですよ! 私なら姿が見えませんからいつも通りお側にお置きくださいませ!!」
「別に危なくはないと思うけど……」
「いいえ! 姫様は見目麗しゅうございます!! お一人では歩けば不埒な輩に何をされるかわかったモノではありません!!」
「その通りだ。貴様が一人で歩くなどもっての外だ。我は認めぬ」
いやいやこの人たち過保護すぎません? 普通に町を散策するだけでトラブルに遭遇することなんて滅多に無いと思うわ。
でもまぁ心配してくれているのに無下にもしづらいというか何というか……。
「うーん。それなら少し離れて護衛するでどう? 彼女の事は知っているけれど、今回は初めて会うのよ。姿の消せるアンはともかくガルム様が側にいたのでは警戒されてしまうかもしれません。ですからこれが最大譲歩ですね」
「……仕方がない。見えてさえいればどうとでもなる。承諾しよう」
「よかった。ではそれでお願いしますね」
「私はお側を離れませんからね!」
「わかったわよ。でも大人しくしていて頂戴ね? これから竜姫ファアを拐かしにいくんだから」
「「は?」」
「だから、竜姫を攫いにいくのよ?」
「誰が誰を?」
「私が竜姫を攫うのよ?」
「やめておけ。竜王の逆鱗に触れる行為だ」
「だからよだから。彼女の安全を確保しなければ世界が滅びてもおかしくないでしょう?」
「つまりこの先彼女の身に何かが起こるわけか?」
「ええ。放っておけば死ぬわね」
「え、え、え!?」
「なるほど。理解した。それならば致し方あるまい。保護することに同意しよう」
同意されなくても攫いにいくけれど、同意してくれた方が余計な軋轢を産まずに済む。それに……いざとなれば竜王VS魔狼王という史上屈指の好カードを観戦できるかもしれない。いやダメか。世界が滅びかねない。ハデス様ならそうはならないと思うのだけれど、あれで意外とガルム様ったらムキになる方だから……。
「ーーというわけで私は彼女を探して回るので暫く一人にして頂戴」
「お供します!」
「影から見守っておこう」
こうしてファア誘拐作戦が開始されたのであった。取り敢えずこの町に居てくれればいいのだけれど……。
あの色ボケ娘の事だから何処かでやらしい事してる可能性もあるのよね……。さすがに町に居なければお手上げだし、神様どうか、どうかよろしくお願いします!
そんな事を願いながら町の大通りを歩くこと五分少々。それは突然やってきた。
「ーーやぁ久しぶりだね。私の事覚えてる?」
そんな風に妙に人懐っこく声をかけてきたのは長い黒髪を肩のあたりで一つに束ねた美人さんだった。
歳の頃は二十歳くらい。もう少し落ち着いた方がいいのではないかしら? 服装は一体どこの王子様だと言いたくなるような白を基調とした上等なもの。襟を少しラフにして軽薄さーーええと……チャラさ? いや違うな。カジュアルっぽく着こなしている。うんコレだわ。
まぁ服装なんてどうでもいい。速い話が竜姫ファアの登場である。開始五分でエンカウントって酷い遭遇率だわ。
「ええ、ファア様。お久しぶりでございます」
「覚えていてくれたんだね。嬉しいよ。ところでどうかな? これから二人で愛を語り合わないかい?」
「まぁ嬉しいですわ。私もファア様と語り合いたいと思っていたのです」
「そうなんだ。これはもう運命だね。さぁ行こうじゃないか!」
「はい。喜んで♪」
差し出された手を迷わず握りしめる。というか掴む? 言うなれば犯人を逮捕するときのような絶対に逃さないという感じ。
「あれ? なんていうか随分と積極的なお嬢さんだね……ところでキミ誰? 初対面だよね?」
大通りから狭い路地へとターゲットを誘い込む。というか引き摺り込む。へっへっへ。逃がさないぜネェちゃん。(笑)
「あらあら? キラリの事をお忘れですか? あんなにも私の事を愛してくださったというのに……悲しいですわ」
「ちょっと待ってくれるかな!? すぐに思い出すから! キミのような美少女を忘れる筈がないんだけどなぁ……あーうーえーんー誰だったかなぁ……」
「過去の事は構いません。今の私を見てくださいませんかファア様」
さりげなく束縛の魔法で私の腕とファアの腕をグルグルと縛り付けていく。
「ちょっ、ちょっと待って!? これ何かおかしくない!? 私のナンパが上手くいくのはデフォだけどキミ絶対魅了されてないよね!?」
「あらやだ。魅了されていますよ。ええ、ええ。もちろんですとも。ああ、ファア様が愛しくて愛しくて仕方がありませんわ。もういっそ食べてしまいたいくらいに……」
ちょっとした悪戯心で触れた指先からちょっぴり吸収のスキルを使ってみる。
「んあっっ!? な、何コレ!?」
「うふふ。可愛らしいお声ですわ」
「待って!? 今の何!? ちょっと何か吸われたような気がする!? しかもいつの間にか縛りつけられてるし!?」
「お気に召しませんでしたか? 確か拘束されるのもお好きだったと思いましたけれど?」
ねぇ? 触手でぐっちょぐちょもいけるクチでしたわよね?
「それは否定しないけれども……ちょっと何か違う気がするなぁ……あれぇ……なんだかコレいつになくヤバイ気がしてきたんですけどぉ……」
「気のせいですわ。今からファア様には私と一緒に目眩く官能の世界へと旅立って頂くだけですわ。大丈夫。天井のシミでも数えていればいいのですわ。さぁ、犬に噛まれたとでも思ってくださいませ(笑)」
「うわぁ~いつもは自分が言ってるセリフなのにこんなにも怖いって知らなかったなぁ~あはは。私やっぱりキミのこと知らないからこの辺でお暇したいんだけど……ダメだよねぇ?」
「はいもちろんです。ご心配なく。何も命まで頂戴しようとは思っていませんから」
そもそも何も取りませんけどね。でもまぁ、ちょっと楽しくてはしゃぎすぎちゃいましたかね? 随分と怯えさせてしまった様子……。ここはあれですね! 最近不足気味なエ□要素を補充するチャンス!! 私の代わりにこのエ□娘で代用しましょう!! ああッッナイスアイディア!!!
「うわぁ~その笑顔超嫌な予感なんですけどぉ!?」
「うふふ。それほどでもありませんわ♪」
「……顔と言葉の不一致ってこんなにも怖かったのね……」
「あら? 何のことでしょうか? 私は終始ファア様に魅了されておりますわ。もうホント年中無休ですのよ♪」
二人の腕を繋ぐ愛の蔦。(笑)それをホンのすこーし伸ばして彼女の袖口から服の中へ。
「ーーひぁっっ!? 待って!? いやッッ!! 何か入ってくるっっ!?」
「大丈夫ですよ~痛くないですからね~。ほんの少しさっきぽが入ったり出たりするだけですからね~」(笑)
「いやいやっぁぁん! それ完璧にアレじゃん!?」
「アレが何かはよくわかりません。私たち女の子同士ですから……あ!」
そういえばこの人はアレもついてたんでしたね……。つまり二つの性の快楽を同時に……ゴクリ。コレは興味深いです!!
スルスルとその肢体を舐めるように絡みつきながら胸の方へと蔦を這わせてゆく。
白い肌に絡みつく濃い緑の蔦。コレが赤黒いある種の卑猥さを感じさせる触手とかだったら最高なのだけれど……。さすがの私でもそれをする手段は持ち合わせていない。何処かでそれ系の魔物と交わればもしかしたら得られるかもしれないけれど、その前提がちょっと嫌かもしれない。
ファアが幽閉されていた水槽を思い出して少し後悔した。
「んあ……ぁぁんっ……そこダメェぇぇっっ!!」
などと思案している間にすっかりエ□担当がその役目を果たしてくれていた。既に全身を絡め取った蔦は彼女の敏感なところを責めたてている。それはもちろん上も下も……うふふ。
「ファア様いいお声ですわ。んふふ。何も気になさらず全て私にお任せくださいませ。アソコもココも気持ちよくさせてあげますからね……うふふ」
さぁ! 禁断のアソコへいざッ!! アレをアレしながらアソコも一緒にクチュクチュしてあげますからねっっ!!!
………………。
それからしばらくの間放送禁止な感じのシーンが続きます。
アレがアレしてああなってしまう。アソコがグッショリでアレからアレが迸り独特な匂いが辺りに漂う。
絶えず喘ぐ若い女の声が響いているが、この路地から漏れることはない。
魔法って本当にいいもんですね!!
………………。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
息も絶え絶え。熱く火照る体としっとりと滲む汗。腰砕けでピクンピクンと痙攣するように震える肢体。蔦で絡め取っていなかったら間違いなく地面に倒れていたでしょう。
あまりにも短い時間に男と女の絶頂を繰り返し繰り返し迎えた体はある意味瀕死の重症と言えるかもしれない。
そう気がついたのはつい先程のこと。その時には今よりももっと酷い有様だった。ああいうのを完堕ちというのかしらね。白目を剥いて涎を垂らしながら……ちょっと人様にはお見せできない様相でした。
……はい。やり過ぎました、ごめんなさい。
でも大丈夫。安心してください! はいてーーじゃなかった。完全回復しましたからっ!!
だから大丈夫。ちょっと呼吸が荒いだけで命に別状はありません。
「はぁはぁはぁはぁ……あふん……」
多分……きっと。
「姫様大丈夫でしょうか? 何やら痙攣しておりますが……?」
「だ、大丈夫よ! ちゃんと魔法で回復したわ。私の魔法なら死んでさえいなければなんとかなるから大丈夫よ!!」
「そうなのですね……」
疑わしげなアンの視線はファアへと向けられる。
黒髪美女のあられもない姿。そして未だ恍惚とした表情のままビクンビクンと震える様子はとても大丈夫とは思えない。
でもきっと大丈夫だと思う。だってこの人あの触手プールを平然と乗り切ったんだもん。アレくらいなら余裕よ。
さて、いつまでも遊んでいるわけにはいかないので本題に入りましょう。
「ガルム様転移をお願いします。行き先はハデス様のもとです」
「あの男は放って置けばいい。未来永劫竜王と戯れておればよい」
「そういうわけにはいきません。もう、わかってるくせに……。ガルム様、お願いします。私を連れていってくださいませ」
少し甘い声色でおねだりする。
ガルム様は渋々承諾してくれるのだけれど……はぁ……いちいち面倒なんですけど。ほんとにこの男どもときたら面倒なんだからっっ!!
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