魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第七章:プリンセス、物語を紡ぐ(仮)

(13)とある高度の高いところにあるお城にて

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 この世界を最後にする為に私がすべき事は……まぁざっくり言って物凄く沢山あると思う。だから必然的に優先順位をつけなくてはならない。それはまるで命の選択の様で心苦しいが私は神様でもなんでもなく一人の女の子に過ぎない。多少普通ではない力を持ってはいるけれどそれで全てを好きにできる訳ではない。いっそそれくらいの力があればよかったのにと思う。

「………………」

 さて無い物ねだりをしても仕方がない。できることをやる。そして理想を叶える。
 その為に必須な事は何か?
 真っ先に思い浮かぶのは竜王参戦の阻止。これはもう確実に阻まなければならない。あれはダメだ。あれに関わられたらどうにもならない。チート・オブ・チート。チートの私が言うのだから間違いない。
 次に人族を真に率いる……操る(?)聖王を止める事。おそらくは聖王国国王の背後に彼がいるはずだ。世界樹が語った人族の王。彼こそが世界の王たる十柱の一人聖王だろう。彼を止めなくてはこの世界の在り様は変えられない。まぁ彼だけではダメなのかもしれないけれど。

 とまぁ、この二つは必須クエストだ。これをクリアしない限り私に未来はない。少なくとも魔族滅亡のシナリオを超える為にはこの二つのクエストの完全攻略が必要だろう。
 その為のチャートを描きつつ、私個人の願いを組み込んでいく。これまでの人生で出会った沢山の人を救いたい。そこには種族も何も関係ない。嫌な人もいれば素敵な人もいる。それはいつの時代もどんな国でもどんな種族でも同じ事。だからと言って好きな人だけを選んで救うなんて器用な事は出来そうにない。
 だって好きな人の好きな人の好きな人の好きな人……。こんなのどこまでも広がっていくんだからもうキリがない訳ですよ。だからまとめて全部救ってしまおう! って事なのです。
 私の手の届く範囲。私たちの手の届く範囲。両手いっぱいに広げて包み込めるだけ全部。

 今の私はとっても欲張りなの。これまで幾度となく諦めてきた事をぜーんぶ、ぜぇぇぇぇんぶ諦めてあげない事にした。そうしたら見えてきたことがある。今まで思いもしなかった方法があった事に気がついた。
 どうして私は一人でどうにかしようと思っていたのか。一人でできる事には限りがあるとわかっていながら一人でどうにかしようと必死になっていた。
 よくわからない。
 おかしなステータスを持ってしまったが為の思い込みだったのかもしれない。でも気がついた。
 一人で頑張らなくてもいい。共に歩もうとしてくれる大切な人たちがいる。私自身共に歩みたいと願う人たちがいる。
 道が開けた。いいえ、最初からあったそれに今更気がつくことができた。普通なら今更気がついても遅いかもしれないそれは私にとってはそうではなかった。今目の前に広がる無限の可能性。そこから最良の未来を選び取る。大切な仲間と共に!!

「ーーということで天空王様、私たちの……いいえ、私の勝ちでよろしいですね?」

 目の前で伏す天空王クアラに私は勝利を宣言した。
 ここは天空城の最上層にあるクアラの私室。
 いつか見た最高の絶景を望むことができる場所。
 あの時の私はまだまだ幼くてクアラの好意とその裏に潜む思惑や感情を見抜けなかった。彼女に悪意がなかった事が幸いして今ではいい思い出……かしら? まぁいいわ。いい思い出だけれど、今回はそうはいかない。彼女を屈服させて私は勝利を掴み取った。

「卑怯……とでも言えればいいが……妾の負けだ。認めよう。例えその方の後ろに二人も王がおったとしてもな」
「でしょうね。ただいるだけの存在ですからね。一切手出しをしていないですし、仮に私が窮地に陥ったとしても彼らは動きません。そしてその事をしっかり理解しておられる天空王様がこの後に及んで負けを認めないはずがありませんわよね」
「くっ……」
「では約束通り私の、我が新生魔王国の軍門に降っていただきます。そうですね、あなたの役どころはーー」

 お世話妖精に執事。守護騎士とくれば次は……何かしら? やっぱりメイドかしら? 金髪褐色肌のお色気ねーちゃんがメイド? ちょっと私のイメージとかけ離れている気がするわね。でも意外とMっ気もあるからいいかもしれないわね。お付きのメイド? それとも侍女にエ○チな悪戯をする女王様……アリね。うふふ……。



 悩んでいる間に少しこれまでの流れを確認しておこうかしら。
 まず今私たちは天空城にいる。本来であれば特別な場所からしか来ることが出来ない場所なのだけれど、王がいればなんとでもなる。セキュリティも何もあったもんじゃない。ファンタジーこわ!(笑)
 というわけで、どうとでもした。
 二番煎じではあるけれどもいきなり城門前に転移。
『くーあーらちゃん! あっそびましょー』とやってみた訳である。
 ちなみに本当にやってみた。大きな声(魔法で拡声)して城中に響き渡る様に。(笑)
 いやぁー面白かったわー。あはは。
 衛兵やらなんやらがわらわらと飛び出してきてそこにいる私たちを見て絶句。
 これも二度目で申し訳ないのだけれどまたお茶をしていました。(笑)
 次に備えて何か新ネタを考えておく必要があるかもしれない。二度あることは三度あるか、三度目の正直か……。私の芸人としての力量が試されようとしているわね!! 芸人と違うけどな!(笑)

 さて登場した人物の中にセロを見つけたので思いっきり絡んでやった。突っかかってきたのでねじ伏せて案内役ゲット。
 彼に先導させて謁見の間へ。時々こちらを睨んでくるけれど私の背後にいる二人にジロリと見られると即座に目を逸らす。まぁはっきり言って格が違う。違いすぎる。だから彼の反応は正しい。でもそれがわかる力量があるのに私に楯突く意味がわからない。やはりこの見た目なのだろうか?
 超絶美少女天才魔法使いーー改め新生魔王国女王キラリちゃんの可憐すぎる姿が男どもを惑わせてしまうのだろう。うむ。それは仕方がない事ね。
 まぁストライクゾーンは人それぞれだから今のJKちっくな私が好みではない人もいるでしょうけどね。まぁラノベなら鉄板ヒロイン枠間違いなしの見た目と性格(?)なのよ! 異論は許さないわ!!

「ちょっとセロ! そこ真っ直ぐでしょ! 今更時間稼ぎしても無駄だからさっさと案内しなさい」
「くっ……貴様何故城の構造を知っている!?」
「無礼な奴だな。コイツはこれでも一国の女王だぜ? それなりの敬意を払えよ」

 そうなんだけど、お前が言うな感が強いぞハデス様。あなた私をコイツ呼ばわりですよ!? だったら私もアイツ呼ばわりしちゃいますよ?

「突然やってきた事を棚に上げてよく言う! 一体どちらが無礼だと思うのだ!」
「上位者が下位者の承諾を得る必要があるのか? 例えば貴様は道を歩くのにアリの許諾を得るのか?」
「なっ!? 我らを虫けら扱いするのか!?」
「扱いではない。我々の間にはそのレベルの差があるという事だ。先ほど思い知ったのではなかったか? それとも差がありすぎて理解が及ばぬか?」
「くっ……」
「おいおい、ひでぇ言い方だな。一寸の虫にも五分の魂って言うだろうが。ちょっとは気遣ってやれよ。なぁキラリ。それが王たる者の務めだよなぁ?」
「ええ、否定はしませんが、ハデス様、あなたも少しは私に礼を尽くしてもいいのですよ?」
「なんだ? そういうお姫様プレイの方がいいのか?」

 言うが早いかさっと踵を返して私の前に膝をつく。すっと差し出した手はまるで私をエスコートする騎士の様でうっとりとしてしまう。
 うふふ。彼を守護騎士役とした私の選定眼は確かだった様ですね!! 漆黒の鎧姿が尊いです!!

「……悪くはありません」

 差し出された手にそっと手を添えると彼は私の手に口付けた。ホントこういう仕草もよく似合うわ。黙って立っていればとんでもない美形キャラだものね。

「はっ、意外と乙女だな。これだから処女は容易いな」
「バカね。色々経験しているからこそこういうのにキュンとするのよ」
「……そういえば耳年増だったなお前は……」
「でも確かに今はまだ処女よ。今世では好きな人と結ばれる予定なの。だからあなたの言う通り私は乙女なのよ。うふふ」
「では女王様参りましょうか。もっといい女になったら俺が嫁に貰ってやるよ」
「あら? 今でも十分いい女でしょ? まだ足りないかしら?」
「そうだな、ま、90点ってところか?」
「へぇ……それじゃ残り10点頑張るわ。ねぇガルム様は何点?」
「……くだらん。お前はお前だ。それ以上でも以下でもない。他者と比べる必要はない」
「あら? ガルム様にとって私はどのくらい好みなのかって事なんだけど……。でも、そうね。こういう軽薄な話はガルム様っぽくないですね」
「ひでぇ言い草だな」
「うふふ。気を悪くしないでくださいねハデス様。私はあなたの事も好きですよ」
「へいへい。精々役目を全うしますよ女王様」
「ええ、よろしくね、私の守護騎士様」

 なんとも緊張感のない道中だけれど、今向かっているのは敵の本丸、天空城の主が座す場所。
 彼女を屈服させる作戦はもう決めてある。やられたらやり返す。倍返し……はやり過ぎかしら?
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