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第六章:プリンセス、絶望に挑む
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折り重なって眠る裸の男と女。色っぽい場面だが血まみれなので心中現場的な雰囲気がある。そして更に床に転がった拷問器具が一層の恐怖を掻き立てる。
眠る二人は確認するまでもなくこの武の国の王様とお妃様だ。歳は知らないけれど緑の髪のこの娘は私とそう変わらないと思う。違っても二つか三つ。王様の方は知らない。
まだ何も知らなかった頃の私の目には王様と二人の少女らがとても仲の良い、そう、まるで父娘の様にも見えていた。
でも……。隣の牢に無造作に放り出されたもう一人の側室の女性、エルナさんを見てしまうと何を信じていいのかわからなくなる。
愛されていた。少なくともそう感じる何かがあったはずなのに……私の余計な一言が彼女の命を奪うキッカケとなってしまった。後悔はしている。彼ら、彼女らがしてきた事を思えば許される人達ではないかも知れないけれど、私個人としてならまだ命を奪う様な段階ではなかった。その後の事を思い出すと結局は相入れる事はなかったのは明白だけど。
「キラリ、時間が惜しい」
「ええ、わかっているわ……」
ガラードラの呼びかけで感傷から引き戻された。
特別な関係性のない彼女の事を何故か必要以上に引きずっている自覚はある。私自身その理由がわからなくて戸惑いを覚える。
でも今その事は関係ない。今私がしなければならないのは自分たちの未来を作ること。
「ーー『洗脳』」
だから禁断の魔法を使う。
頭の中を弄くり回す正真正銘の禁呪。
殺してしまう事は容易い。でもそれではこの国に余計な混乱を生じさせてしまう。
一ヶ月ほどだったけれど楽しく過ごした街での暮らしを思い出す。いい街だったと思う。いい人たちだったと思う。
だから少しだけ我慢する。どの様な名君であれ全てが清く正しいだなんて思っていない。自国の利を追求するという事はそれ以外の誰かの何かを犠牲にするという事。大国であればあるほどそれはきっと大きく深くなる。
だから少しだけ我慢する。
禁断の魔法により私が知ったこの国の王様の許し難い部分を消し去る事で。
実際のところは私にもどうなるのかわからない。初めて使う魔法であるという事と干渉する内容がハッキリと数値化されているモノではないという事。
この王の歪んだ性癖を正す。別にハーレムはいい。若い娘から相応の美女まで好きにすればいい。王様だし世継ぎも必要だろう。それこそ政略上の事もあるだろう。
だけどこの場の女性たちにした様な事はダメだ。少なくとも幸せにして欲しい。一人残らず。王様ならそれくらい出来るだろう。いや、やれ! 私はーー俺は女の子が愛されて幸せになるTL系の方が割と好きだ!! 男向けのエ□はどうにもその辺りが許せない。
まぁ……嫌いではないが……。
「………………」
……ごほん。
非常に僅かばかり邪念が入ったが気にしてはいけない。そう、俺くんや前回の記憶は私という幼気な美少女の心を蝕む甘い毒のようなもの……。
それに……。大丈夫、私の想いの本質的な部分は変わらない。
みんなまとめて幸せに!!
そんな私の願いを込めて魔法はその力を発揮する。
結果がどうなるかはわからない。
私に出来るのは上手くいくよう願うことくらい。
今のこの国がこれからも在り続ける為に……。
女の子たちがみんな幸せになれるように……。
「終わったのか?」
「……うん、一応は……」
「そうか……」
「うん」
「頑張ったな……」
「うん」
大きな手が頭を撫でる。遠慮がちで不器用な感じが少しキュンとする。
竜姫ーーファアが言うような甘い感情ではないけれど、少しだけ揺れるのはそういうことなのかもしれない。
「………………」
「……ちょっと……やめてくれる? その微妙な視線」
「邪魔しちゃ悪いと思って静かにしてたのだけれど……ほら、気にしなくていいわよ? 男ならここは一気に行くところよ! さぁ! やっちゃいなさい!!」
「やっちゃいません! ガラードラ、やっぱりこの人始末した方がいいと思うの」
「……我も少し悩んでおる」
「ちょっ!? 待って待って!? やぁねぇ~ガラードラまでそんな冗談を言わないでよ。もう、ほんとびっくりしちゃうじゃないのよ………………」
真剣に悩んでいる様子のガラードラに異様にチャラい竜の姫が絡む様子は何というか……シュールな笑いを誘う? そんな構図だ。
「我は冗談は好かぬ」
「そ、そうだったかしら~」
腕を組み黙って思考を巡らせるその姿は中々雄々しく似合っている。脳筋ではあるがバカと言うほどではない。まぁ賢くはないと思うけど……でも……いいところはいっぱいあるわよね……。
私だって彼の無骨な優しさに何度も救われた気がするし。
「ね、ねぇキラリちゃん。私を助けて!」
「自業自得という言葉をお贈りします」
「うふふ、ありがとう。でも要らないわ。私が欲しいのは可愛い女の子よ。だからキラリちゃんをいただくわ!!」
「はぁ……懲りない人ね……」
私に縋り付き、さらにあろう事か胸やお尻を弄ってくるとは……本当に懲りない人だ。
まったく……。
「ーーピギャァッ!?」
威力を超絶絞った『雷撃の檻』により痺れた彼女がずり落ちていく。
「あっ!?」
「どうしたーー!?」
振り向いたガラードラの視線が私の胸で止まる。
「すまぬ」
さっと目をそらすガラードラ。
「いいわよ別に……」
竜姫の手が引っかかって衣服がはだけ胸元が露わになっていた。今更胸を見られた程度でどうも思わない。……はずだけれど、妙に恥ずかしく感じるのは何故なのか?
「こ……の……リア充……共め……」
私が絡んだ手を取り払った事で床に崩れ落ちた竜姫。彼女の最期の言葉で私は唐突に理解する。
ああっ!! まるっきりラブコメ的展開だから変なむず痒さがあるんだ!?
リアルでこんな嬉し恥ずかしラッキースケベ(られ)なシチュを味わうことになろうとは……人生とはかくも奇妙なものなのか……。なんて思ってしまった。
この施設内……王宮の地下牢の中は今のところ安全が確保できている。
妙な言い方かもしれないけれど、今のところ囚われた者たち以外は王とメイドが一人いるだけ。しかも未だ深い眠りの中。警戒心が緩むのは仕方がないけど、緩みすぎないようにはしておかないといけない。でもいくつかのフロアを通り過ぎたけれど虚ろな女の子たち以外とは出会わないからちょっと難しい。
ファアに至っては鼻歌を歌い出すほど。単調な石造りの地下施設だから一度緊張が途切れてしまうとなかなか戻らないのかもしれない。
……いや待てよ、あの女は最初から緊張なんてしていなかったわね……。(苦笑)
それにしても彼らがここに来てから結構な時間が経っているはずだけれど誰もこないという事は……。
この場所を知る者が極端に少ないか、知っているが立ち入る事を禁じられているか。それとも両方か。
他にも考えられる事はこの程度の時間は日常的なもの……とか。
これだけの施設だしまさか王様以外に誰も知らないという事はないだろう。側室メイドを二人も連れて来ていたくらいだから側室たちは知っていてもおかしくはない……か? いや、あの拷問趣味には抵抗を示す妃もいるだろう。全員が知っているとは考えられない。
やはりこの場所を知る者はごく少数だと思う。
「それでこれからどうするの?」
「そうね……」
ようやく階段を登りきったところで行き止まりになった。真正面の壁に扉サイズの切れ込みがある。まぁ隠し扉の類ね。マップによって先の構造も明らかになっているから私にとっては隠されていないけれど、ぱっと見何もないようには見える。
しかし、隠し部屋の内側からの見た目を分かりづらくする意味がわからない。逃走防止とか?
あと幸いにも向こうの部屋には誰もいない。
マップと探索の組み合わせは存外チートだね。
ゲームではお馴染みの機能だけにそうとは思いづらいけれどリアルになるとここまで便利とは……。
「この先は王宮の地下か一階部分になるようね。狭い部屋で今のところ付近に人気はない。でも王宮に入れば全くの無人というわけにはいかないでしょう。これまで以上に気をつけて。それから竜ーーファアは絶対に余計な事をしないでね?」
「ちょっと信用なさすぎじゃない? 私だって時と場所を考えているわよ。いくらなんでもーーイタッ!?」
「この手を見て一体何処を信用すればいのよ? ホントに置いていくわよ?」
「ごめんなさーい」
軽い調子で謝りながら私が抓った手をさすり離れていく。
まったく、油断も隙も……というか常時発情状態みたいなのどうにかならないのかしら? すぐに胸やお尻に触れてくるんだから。こっちだって大変なんだよ!? 変なスキルのせいですぐに欲しくなっちゃうんだから……。
さてここから先は私のチート魔法の出番だ。いやここまでも大活躍ではあったのだけれども、更にといったところだろうか。
『気配遮断』、『静寂』、『幻惑の霧』。お忍び三点セット。(笑)
「へぇ……ホントに凄い魔法使いだったんだ~」
感心したようなファアのセリフ。やっぱりと言うか何というかガラードラの言葉を信じてはいなかったみたいだ。
まぁそれはある程度仕方がない。私だって私みたいな小娘がガラードラよりも強いとか言われても信じないからね。
「言ったであろう。魔法に関しては我よりも上だと」
「そう言えばそんな事も言っていたわね。でもさ、そもそもガラードラは魔法全然でしょ。だからそれより上とか言われてもねぇ?」
「そうね。上の幅が広すぎるわね」
「むっ……」
それを補って余りあるけれどもね、竜族の身体能力というやつは……。私が全力で魔法強化してもたぶん半分にも満たないんじゃないかしら? だからホント捕まったら最後ね。その上ダメージ減少のお陰でそう簡単に死なないから、永遠に嬲られ続ける可能性もある。
………………こわ!?
試していないからわからないけど、飲まず食わずでも大丈夫なのかしらね? それと頭とか心臓とか潰されたらどうなるのかしら……? 他にも何らかの要因で生命力がゼロになる様な事があるとしたらそれはどうなるのかしら?
どれも実験できないししたくないから起きてみないとわからない。
普通に攻撃されてもダメージは基本的に一しか受けない。ステータスが低くてもやっていける理由だけれど、いわゆる致命の一撃の扱いが不安ね……。
そういう事態に陥らないようにしないとね……。
「それじゃいい加減この辛気臭い場所から出るとしましょうか。ガラードラ、正面の壁を引っ張ってみてくれる?」
随分長い事いたような気がするけれど、目が覚めてからの時間は案外大した時間じゃなかった。それなりに濃い時間ではあったけれども。
眠る二人は確認するまでもなくこの武の国の王様とお妃様だ。歳は知らないけれど緑の髪のこの娘は私とそう変わらないと思う。違っても二つか三つ。王様の方は知らない。
まだ何も知らなかった頃の私の目には王様と二人の少女らがとても仲の良い、そう、まるで父娘の様にも見えていた。
でも……。隣の牢に無造作に放り出されたもう一人の側室の女性、エルナさんを見てしまうと何を信じていいのかわからなくなる。
愛されていた。少なくともそう感じる何かがあったはずなのに……私の余計な一言が彼女の命を奪うキッカケとなってしまった。後悔はしている。彼ら、彼女らがしてきた事を思えば許される人達ではないかも知れないけれど、私個人としてならまだ命を奪う様な段階ではなかった。その後の事を思い出すと結局は相入れる事はなかったのは明白だけど。
「キラリ、時間が惜しい」
「ええ、わかっているわ……」
ガラードラの呼びかけで感傷から引き戻された。
特別な関係性のない彼女の事を何故か必要以上に引きずっている自覚はある。私自身その理由がわからなくて戸惑いを覚える。
でも今その事は関係ない。今私がしなければならないのは自分たちの未来を作ること。
「ーー『洗脳』」
だから禁断の魔法を使う。
頭の中を弄くり回す正真正銘の禁呪。
殺してしまう事は容易い。でもそれではこの国に余計な混乱を生じさせてしまう。
一ヶ月ほどだったけれど楽しく過ごした街での暮らしを思い出す。いい街だったと思う。いい人たちだったと思う。
だから少しだけ我慢する。どの様な名君であれ全てが清く正しいだなんて思っていない。自国の利を追求するという事はそれ以外の誰かの何かを犠牲にするという事。大国であればあるほどそれはきっと大きく深くなる。
だから少しだけ我慢する。
禁断の魔法により私が知ったこの国の王様の許し難い部分を消し去る事で。
実際のところは私にもどうなるのかわからない。初めて使う魔法であるという事と干渉する内容がハッキリと数値化されているモノではないという事。
この王の歪んだ性癖を正す。別にハーレムはいい。若い娘から相応の美女まで好きにすればいい。王様だし世継ぎも必要だろう。それこそ政略上の事もあるだろう。
だけどこの場の女性たちにした様な事はダメだ。少なくとも幸せにして欲しい。一人残らず。王様ならそれくらい出来るだろう。いや、やれ! 私はーー俺は女の子が愛されて幸せになるTL系の方が割と好きだ!! 男向けのエ□はどうにもその辺りが許せない。
まぁ……嫌いではないが……。
「………………」
……ごほん。
非常に僅かばかり邪念が入ったが気にしてはいけない。そう、俺くんや前回の記憶は私という幼気な美少女の心を蝕む甘い毒のようなもの……。
それに……。大丈夫、私の想いの本質的な部分は変わらない。
みんなまとめて幸せに!!
そんな私の願いを込めて魔法はその力を発揮する。
結果がどうなるかはわからない。
私に出来るのは上手くいくよう願うことくらい。
今のこの国がこれからも在り続ける為に……。
女の子たちがみんな幸せになれるように……。
「終わったのか?」
「……うん、一応は……」
「そうか……」
「うん」
「頑張ったな……」
「うん」
大きな手が頭を撫でる。遠慮がちで不器用な感じが少しキュンとする。
竜姫ーーファアが言うような甘い感情ではないけれど、少しだけ揺れるのはそういうことなのかもしれない。
「………………」
「……ちょっと……やめてくれる? その微妙な視線」
「邪魔しちゃ悪いと思って静かにしてたのだけれど……ほら、気にしなくていいわよ? 男ならここは一気に行くところよ! さぁ! やっちゃいなさい!!」
「やっちゃいません! ガラードラ、やっぱりこの人始末した方がいいと思うの」
「……我も少し悩んでおる」
「ちょっ!? 待って待って!? やぁねぇ~ガラードラまでそんな冗談を言わないでよ。もう、ほんとびっくりしちゃうじゃないのよ………………」
真剣に悩んでいる様子のガラードラに異様にチャラい竜の姫が絡む様子は何というか……シュールな笑いを誘う? そんな構図だ。
「我は冗談は好かぬ」
「そ、そうだったかしら~」
腕を組み黙って思考を巡らせるその姿は中々雄々しく似合っている。脳筋ではあるがバカと言うほどではない。まぁ賢くはないと思うけど……でも……いいところはいっぱいあるわよね……。
私だって彼の無骨な優しさに何度も救われた気がするし。
「ね、ねぇキラリちゃん。私を助けて!」
「自業自得という言葉をお贈りします」
「うふふ、ありがとう。でも要らないわ。私が欲しいのは可愛い女の子よ。だからキラリちゃんをいただくわ!!」
「はぁ……懲りない人ね……」
私に縋り付き、さらにあろう事か胸やお尻を弄ってくるとは……本当に懲りない人だ。
まったく……。
「ーーピギャァッ!?」
威力を超絶絞った『雷撃の檻』により痺れた彼女がずり落ちていく。
「あっ!?」
「どうしたーー!?」
振り向いたガラードラの視線が私の胸で止まる。
「すまぬ」
さっと目をそらすガラードラ。
「いいわよ別に……」
竜姫の手が引っかかって衣服がはだけ胸元が露わになっていた。今更胸を見られた程度でどうも思わない。……はずだけれど、妙に恥ずかしく感じるのは何故なのか?
「こ……の……リア充……共め……」
私が絡んだ手を取り払った事で床に崩れ落ちた竜姫。彼女の最期の言葉で私は唐突に理解する。
ああっ!! まるっきりラブコメ的展開だから変なむず痒さがあるんだ!?
リアルでこんな嬉し恥ずかしラッキースケベ(られ)なシチュを味わうことになろうとは……人生とはかくも奇妙なものなのか……。なんて思ってしまった。
この施設内……王宮の地下牢の中は今のところ安全が確保できている。
妙な言い方かもしれないけれど、今のところ囚われた者たち以外は王とメイドが一人いるだけ。しかも未だ深い眠りの中。警戒心が緩むのは仕方がないけど、緩みすぎないようにはしておかないといけない。でもいくつかのフロアを通り過ぎたけれど虚ろな女の子たち以外とは出会わないからちょっと難しい。
ファアに至っては鼻歌を歌い出すほど。単調な石造りの地下施設だから一度緊張が途切れてしまうとなかなか戻らないのかもしれない。
……いや待てよ、あの女は最初から緊張なんてしていなかったわね……。(苦笑)
それにしても彼らがここに来てから結構な時間が経っているはずだけれど誰もこないという事は……。
この場所を知る者が極端に少ないか、知っているが立ち入る事を禁じられているか。それとも両方か。
他にも考えられる事はこの程度の時間は日常的なもの……とか。
これだけの施設だしまさか王様以外に誰も知らないという事はないだろう。側室メイドを二人も連れて来ていたくらいだから側室たちは知っていてもおかしくはない……か? いや、あの拷問趣味には抵抗を示す妃もいるだろう。全員が知っているとは考えられない。
やはりこの場所を知る者はごく少数だと思う。
「それでこれからどうするの?」
「そうね……」
ようやく階段を登りきったところで行き止まりになった。真正面の壁に扉サイズの切れ込みがある。まぁ隠し扉の類ね。マップによって先の構造も明らかになっているから私にとっては隠されていないけれど、ぱっと見何もないようには見える。
しかし、隠し部屋の内側からの見た目を分かりづらくする意味がわからない。逃走防止とか?
あと幸いにも向こうの部屋には誰もいない。
マップと探索の組み合わせは存外チートだね。
ゲームではお馴染みの機能だけにそうとは思いづらいけれどリアルになるとここまで便利とは……。
「この先は王宮の地下か一階部分になるようね。狭い部屋で今のところ付近に人気はない。でも王宮に入れば全くの無人というわけにはいかないでしょう。これまで以上に気をつけて。それから竜ーーファアは絶対に余計な事をしないでね?」
「ちょっと信用なさすぎじゃない? 私だって時と場所を考えているわよ。いくらなんでもーーイタッ!?」
「この手を見て一体何処を信用すればいのよ? ホントに置いていくわよ?」
「ごめんなさーい」
軽い調子で謝りながら私が抓った手をさすり離れていく。
まったく、油断も隙も……というか常時発情状態みたいなのどうにかならないのかしら? すぐに胸やお尻に触れてくるんだから。こっちだって大変なんだよ!? 変なスキルのせいですぐに欲しくなっちゃうんだから……。
さてここから先は私のチート魔法の出番だ。いやここまでも大活躍ではあったのだけれども、更にといったところだろうか。
『気配遮断』、『静寂』、『幻惑の霧』。お忍び三点セット。(笑)
「へぇ……ホントに凄い魔法使いだったんだ~」
感心したようなファアのセリフ。やっぱりと言うか何というかガラードラの言葉を信じてはいなかったみたいだ。
まぁそれはある程度仕方がない。私だって私みたいな小娘がガラードラよりも強いとか言われても信じないからね。
「言ったであろう。魔法に関しては我よりも上だと」
「そう言えばそんな事も言っていたわね。でもさ、そもそもガラードラは魔法全然でしょ。だからそれより上とか言われてもねぇ?」
「そうね。上の幅が広すぎるわね」
「むっ……」
それを補って余りあるけれどもね、竜族の身体能力というやつは……。私が全力で魔法強化してもたぶん半分にも満たないんじゃないかしら? だからホント捕まったら最後ね。その上ダメージ減少のお陰でそう簡単に死なないから、永遠に嬲られ続ける可能性もある。
………………こわ!?
試していないからわからないけど、飲まず食わずでも大丈夫なのかしらね? それと頭とか心臓とか潰されたらどうなるのかしら……? 他にも何らかの要因で生命力がゼロになる様な事があるとしたらそれはどうなるのかしら?
どれも実験できないししたくないから起きてみないとわからない。
普通に攻撃されてもダメージは基本的に一しか受けない。ステータスが低くてもやっていける理由だけれど、いわゆる致命の一撃の扱いが不安ね……。
そういう事態に陥らないようにしないとね……。
「それじゃいい加減この辛気臭い場所から出るとしましょうか。ガラードラ、正面の壁を引っ張ってみてくれる?」
随分長い事いたような気がするけれど、目が覚めてからの時間は案外大した時間じゃなかった。それなりに濃い時間ではあったけれども。
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