魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第六章:プリンセス、絶望に挑む

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 気を取り直してダンジョン探索再開です。

「姫様右から魔物です」
「おっけい、『氷結の矢フリーズボルト』」

 アイスブランドは強力過ぎたので少々レベルを落としてみたけれど、これも大概な威力でちょっとびっくり。ある程度は記憶にあるので理解しているつもりだったけれど、実際に試してみると想像以上だった。
 今の自分と前回の自分がかなり馴染んだつもりだったけれど、まだまだ驚く事がいっぱいみたい。
 魔法でこんなにも驚いているのに、もし誰かとそういう事になったら私どうなっちゃうんだろう?
 初めてなのに初めてじゃない。
 痛いのに気持ちいい。
 自分の体なのに自分の体でないみたいにあんな風に乱れちゃうのかな……。おかしくなっちゃうのかな……。
 恥ずかしいけど興味がないわけでもなくて……でも怖くて……でも気持ち……いいのよね?
 胸の奥に凄く幸福感に包まれた想いが残ってる。
 もしそういう事になったら……私どうなってしまうのかしら……。

「ーー姫様、姫さま、ひーめーさーま! このおバカ姫!」
「ーーアン? 今なんと言いました?」

 ちょっとぼーっとしていた事は事実だけれど、だからといって何を言ってもいいわけではないでしょう?

「はい、左から魔物でございます。と申し上げましたが?」
「それでその続きは?」
「反応がありませんでしたので姫様と何度もお呼びいたしました」
「それだけ?」
「それ以外に何かございますか?」
「おバカと聞こえたのだけれど?」
「気のせいでは?」
「いいえ、ハッキリ聞こえたわ」
「空耳でございます。アンが敬愛する姫様を馬鹿呼ばわりするわけがございません」
「でもーー」
「それでもお疑いになるようでしたら致し方ございません。アンにお暇をお命じくださいませ」
「え、ちょっと待って!? 何でそういう事になるのよ!?」
「姫様の命に従います。いかようにもお命じくださいませ」
「だから待ってってば……。あなたに暇なんて出せる訳がないじゃない。私はアンがいないと困る事ばかりなんだから……それに……側にいて欲しい。アンがいないと寂しい……」

(……チョロいですね姫様は)

「聞こえているわよアン。それでも側にいてほしいと思う私は確かにおバカね。あなたの言う通りだわ……」
「えっと姫様……そんなに落ち込まないでくださいませ……。ほんの冗談のつもりでしたのに……どうなさったのですか? いつもと違って何だか少し変ですよ?」
「そんな事はないわ。いつも通りよ? ほら?」

 そう言って油断したアンを捕まえる。

「あの~どうして私は捕まえられたのでしょうか?」
「どうしてだと思う?」
「どうしてでしょうか? ちょっとよくわからないのですが、嫌な予感だけは凄くします。姫様、その笑顔おやめになりませんか? 特に目が何と言いますか……」
「うふふ。目だけが笑っていない笑顔ってとっても不思議でしょう? 背筋がゾクゾクするような気がしない? 見つめられると何故か身動きが出来なくなるような気がしてしまうのよね。逃げ出したいのに逃げられない……うふふ」
「えっと、その……」
「大丈夫よ。優しくするわ。あなたも初めてよね。心配いらないわ。私も経験がないけれど、記憶はあるから何とかなるわ。それにスキルもあるからきっと天国を体験できるはずよ……うふふ」

 効果がありそうなのは『誘惑』とか『調教』とか『百合の花園』かしら。今の私にアンを誘惑出来るとは思えないのだけれど、それでも効果が出るのかしらね? 以前は効果を発揮して酷い目にあったのよね……そのせいで知らないうちに夜な夜なアンに弄ばれていたのよね私……。
 今回はそうはいかないわよ? あなたが悪いのよ? ねぇアン?

「ひ、姫さま!? 私が悪うございました!? 本心です! 本心ですから!! 悪ふざけが過ぎた事はお詫びしますから!!!」

 私のスキルを思い出したのか物凄く必至になっている。必至に私の手から抜け出そうとしているけれど、うまくいかない。
 私はそれほど力は入れていないけれどそれでも抜け出せない。
 焦ってあたふたする姿が可愛らしい。思わず許してあげたくなるけれども、ちゃんとお仕置きしなくちゃね。
 今までの私だと思っていると痛い目を見るわよアン? ほらほら、早く脱け出さないと大変な事になるわよ?
 まぁ無理でしょうけれど。だって捕まえた時から少しずつ彼女の体力をドレインしているんだもの。うふふ。逃がさないわよ?

「ぁ……あれ? 姫さま……? 何だか体が熱いです……変です!?」

 ようやく効果が出てきたみたい。やっぱり汗にも含まれているのね~。

「あら? どうしたのかしらね? うーん……もしかしたら私に触れられて感じているのではないかしら? そういえば私の体からは媚薬が出るのだったかしら? あらあら、大変ね……」
「えっ!? いや、うそ……ぁぁん……ぅんくぅっ!?」

 私の手の中でアンが喘ぎ始めた。
 小さな体が熱くなってもぞもぞしている。
 そうして動くたびに甘い吐息を漏らす。

 こういうのは意識してしまうともうどうにもならない。気持ちの良さを感じれば感じるほど逃れられなくなっていく。焦りすらもスパイスにしかならない。

「ぁぁん……ダメです……ぁ、ぃゃぁ……あ、あ、あぁぁぁぁっっ!! らめぇぇぇぇっっ!!!!」

 えっちな妖精のいやらしい声が洞窟内に響き渡った。
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