魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第五章:プリンセス、最果ての地に散る

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「はぁぁ……やっぱり凄いですね勇者パーティーは」
「何回目かしらそれ」

 呆れた様な声で隣の聖女様。軽い上下振動がその立派な二つの至宝を弾ませている。私だって多少は成長した。実際人並み以上に立派なのだけれど、それでもCカップくらいかなと。でもね! 私の場合は小柄でキュートな体型だから実際の数値以上に大きく見えるのよ!!

「負けない……私だって揺れるんだから!!」
「……だ・か・ら! 何度も言いましたわよね!? 好きで揺らしてるわけではありませんし、いくらブラで支えていても結構痛いんです! その上貴方達は毎回毎回……!!」
「「それでも!! 崇めずにはいられない!!」」

 ーープチンーー。

「そう……そうなのね……巨乳が羨ましいならご自分も巨乳になればいいのです。ふふ……ふふふ……」

 あーーヤバイ!?

「ストップ! ストップ!! ちょっとメルーー??」

 えっ!? いない!? 嘘でしょ!? この狭い馬車の何処に隠れるのよ!?

「ーーぅヒゃぁ!? 聖女さまぁ!? ダメ! 待って!? 待ってください!? ぁ、ぃやぁ! そこダメぇ!! ぇ、ぁ、あ……ぁぁぁぁぁぁぁんんんん!!」


 ゴトゴトゴトゴト……。

「ーーぁぁぁぁぁんんん!!」
「……なぁノイン……物凄く辛いんだが……」
「頑張れ勇者」
「まったく、アイツら俺を何だと思ってるんだ? 若い男がパーティーにいる事をわかってないのか?」
「わかっていると思うが……そうだなメルは確信犯として、ソフィスは何が琴線を揺らすか本当の意味ではわかっていないだろうな。キラリはよくわからん。ああいう娘が意外と経験豊富かもしれないぞ? お前も今後の為に習っておいたらどうだ? 私はこれでも寛大だからな、別に彼女を口説いても構わんぞ?」
「婚約者の前で浮気とか地獄だろ?」
「その婚約者がいいと言っているんだがな……」
「ーーそうですよ、男ならここは一発!!」
「煽るなバカメル! だいたいいつもお前らが余計な事をするから俺の理性に過剰な負荷がかかるんだよ!!」
「そう言われましてもねぇ。あの弾み方を見ているとどうにも我慢できなくてねぇ」
「何で女のお前が我慢できないんだよ……」
「ある意味魔性の胸……だねぇ……」
「何故男は胸の大きな女が好きなんだろうか……こんなもの剣を振るのに邪魔なんだがな……」
「そうだねぇ……私も隠れるのに邪魔だねぇ……」
「いや、お前はそこまで邪魔にならなーー」
「ーー何か言ったかねぇ?」
「い、いや、何も……」
「口は災いの元……だからねぇ。勇者といえど気をつけた方がいいねぇ……」
「あ、ああ、気をつける事にしよう」
「おいおい、勇者を脅す奴があるか」
「いやいや、脅すだなんて人聞きの悪い……あくまで一般的な世渡り術の伝授……かねぇ?」
「そういう事にしておこうか……。それにしても後ろはいつまで続けるつもりなんだ?」

 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 ぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

「さぁねぇ?」
「お前も原因の一人だろうに……」
「そうだったかねぇ?」
「やれやれ……。とりあえず誰かが来たら止めに入ってくれ。勇者一行の馬車から女の嬌声が響いていたなどと噂になってはかなわないからな」
「はいはい……まったく面倒だねぇ……」



 うう……胸がヒリヒリする……。
 いくら何でもあんまりじゃないかな。

「これに懲りたら人のコンプレックスを弄らないようにしなさい!」
「はーい……(まぁムリねきっと)」
「何か言ったかしら?」
「いいえ。もう懲り懲りですから……はぅ……凄い赤くなってるんですけど……」

 服を捲り上げてみれば擦れたように両方の胸が赤くなっていて……少し腫れてるみたい。

「ヒーリング」

 癒しに魔法をかけると痛みと腫れがスッと引いていく。
 ホント限度というものを考えて欲しい。怪我や疲労は癒せても体の火照りは消せないんだから……。
 どうしよう……私そのうち勇者様を襲ってしまうかもしれない……。

 コンコンコン。

「そろそろいいか?」
「あ、はい! えっと、その……」
「あー気にするな。こっちも気にしないから! まぁそのなんだ、出来ればもっとこっそりやってくれると助かる」

 ああああああ!!!
 ごめんなさいぃぃぃ!!!!
 男の人だって大変よね!? すぐ側から女の子のアレな声が聞こえてくるなんて。
 ノインさんがさせてあげればいいのに、結婚前だからダメなんだって……生殺し? かと言って婚約者の前で他の女の子に手を出す訳にもいかないだろうし、それがパーティーメンバーというのは更に不味い気がする。
 だからと言って夜の街に行く訳にもいかない。勇者って大変だわ……。

「本当にごめんなさい! 勇者様だって男の人ですものね。ただでさえ溜まっているでしょうし……」
「待て待て!? そういう発言はよせ! 女の子が溜まってるとか言わないでくれ!!」
「あ、やだ!? ごめんなさい!!」

 ああ、あれね。女の子に勝手な幻想を抱いてる系? 女の子だって欲求もあるし、そんな綺麗なものじゃないんだよ……。まぁ俺くんも似たようなものだけど、どうして男の人ってそうなんだろうね……。


「さて、ここからは歩きで向かう」
「わざわざありがとうございます。私のランクアップの為に……」
「いや気にしなくていい。それも依頼を引き受けた一つの要因だが、主因は俺の意思だ。困っている人を放ってはおけないからね。この件は長い間解決されずにいたそうだし、俺たちならどうにかできるだろう」

 そうなんでしょうけれど……通称「人形使いの館」ねぇ……連想するのは「人形王の城」クエストなのよね……まったくもって嫌な予感しかしない。
 ちなみにあのクエストは古代魔法王国期の地方領主の一人が極度の人間不審に陥って起こった不幸な物語……かなぁ……?
 地方の小領地だったから数百人程度の被害で済んだ……いや待て、結構な被害だよねこれ。
 まぁ、不幸中の幸い大都市で無くてよかったとしか言えないけれど、狂った領主が領民全てを魔法道具をもって意思のない人形にしてしまった。男は兵士に女はメイドに……。勿論エ□ゲーらしく女には四六時中奉仕をさせていた。
 そしてここからがタチが悪くて領主が死んだ後も魔法道具は稼働し続けた。人形となった人達は死ぬ事なく朽ちる事なく命令を果たし続ける。永遠に……。唯一の終わりは魔法道具が停止する事。
 人形たちは領主の命令に従い永遠に城を守り続ける……。
 とまぁ救いのないクエストだったわけで、このクエストはそれを連想させるところがあると思う。
 詳細はわからないけれど、古代王国期の魔法道具が今も稼働しており、魔法人形が館と周囲の森を守っているらしい。
 ある程度森の奥に入らなければ実質的な被害や影響はないのだが、年に一人か二人は領域に踏み入ってしまい大怪我や酷ければ死んでしまっている。
 これまでに何度も攻略に挑んだが、魔法人形の圧倒的な物量に敗退してしまい、過去館までたどり着いた冒険者はいない。

「「「「………………」」」」

 どうにか出来るだろう。勇者様のそのセリフに頬を痙攣らせたのはどうやら私だけではなかったようだ。雰囲気を察するにその他全員。
 おいおい!? 大丈夫かこのパーティー!?

「……ルクス、お前の誰かの為に尽くそうとするその心意気は賞賛に値するが、このクエストはかなり難易度が高いのではないか? 聞けば過去王国騎士団を動員した事もあるようだが?」
「そうらしいな。だがそれがどうかしたのか?」
「どうかしたのかって、あなたねそんなクエストを五人でどうにか出来るとでも考えているの?」
「自殺行為ですかねぇ」
「何故だ? 魔法人形の強さは大したことはないらしいぞ? 俺とノインなら仮に百体いたとしても余裕だろう?」
「人形個々の強さは問題ではない。問題なのはその物量だ。このクエストで肝なのは継戦能力の高さだ。そして本来軍隊というのは冒険者一パーティーとは比較にならない継戦能力を備えているはずだと思うがどうかな?」
「それは否定しない。ほぼその通りだろう。だがこのクエストでなら話は別だ」
「どういう事かしら?」
「いくら俺でも勝算もなしに仲間の命を賭けはしないということさ。過去の資料をざっと見せてもらって確信した。このクエストは少数精鋭でなければクリア不可能だとな!!」
「精鋭ねぇ……」
「否定はしないわ。それでも……」

 えっ!? 私ですかソフィス様!?
 そんな目で見られても……。正直やろうと思えば私一人でも余裕ですーーとは言えないし、隠せとも言われている訳だし……取り敢えず頷いておけばいいかな?

「キラリのランクではパーティーとしては受領出来ないのでは?」

 ああ! 確かに!! 私ってばまだDランクだから勇者パーティーがいくらAランクでもクエスト受注に関しては足を引っ張ってしまう。私込みだと良くてB。基本的にはCまでしか受けられないはず。

「そこは問題ない。こういう時に勇者の名声を使わない手はないだろう? 俺たちで駄目なら当分挑戦する者がいないだろうからな。現にもう数年誰も手を出していないらしいし。俺がやろうと言えば喜んで許可してくれたよ。D級のキラリ込みでな。そして! クリアしたあかつきには昇級も約束してくれた。しかもBランクにな!!」

 どうだ俺凄いだろう? 誰の目にもそう映る表情ーーつまりはドヤ顔で勇者様は言いましたとさ。

「つまり……?」
「そうだな。またギルド長辺りに上手いこと丸め込まれたんだろう」
「ですよねぇ」
「………………」

 いやコレホントに大丈夫なの!?
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