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第五章:プリンセス、最果ての地に散る
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「ーーと言うわけで出発に先立ち新メンバーの実力テストを実施する」
「はぁ……」
いや、まぁそれくらいしか感想が思い浮かばなくて……。だってねぇ? いくら信頼する仲間の推薦とはいえ実力も確認せずに仲間にすると言うわけにもいかないでしょうよ。
「無論自信がないのならば強制はしない。しかし、パーティーを組む件もなかったことにしてもらう。これはソフィスも納得済みだ」
おっと……? 視線を読まれた? いいえ、この状況では共通の知人であるところのソフィス様に意識がいくのは当然ね。
ルクス様の言う通りソフィス様も納得済みのようで首肯した。
「わかりました。それでどうすればいいのでしょうか? 何か魔法を披露すればいいのでしょうか?」
当たり障りのないところでいうと……回復系統かバフ系統か……はたまた補助系統か……。
まぁ攻撃系統はやめておいた方が無難よね。
「いいや、我々と模擬戦をしてもらう。お互いに命を預け合う仲間になるんだ、キラリくんの実力を己の体で感じておきたい。どうかな?」
やっぱりそうなるか。ギルドの演習場に集合と言われた時点で予想はしていたけれども、勇者パーティーと模擬戦とは……まぁ予行演習? 的な感じでいいと言えなくもないかもしれないかしらね?
「承知しました。ですが一ついいですか?」
「なんだい? 質問かな?」
どうしてルクス様は子供番組のお兄さんみたいなキャラなんだろうか? 爽やかなイケメン微笑みキャラだから一層そう感じてしまうのかしら? これで「さぁみんな! 次は〇〇の時間だよ!」とか言ってみてほしいかもしれない。そうすると……ソフィス様がお姉さんで体操の……お兄さんが不足するわね。あとあまりお胸の大きい方もNGだって聞いた事がある。本当かどうかは知らないけれど、お子ちゃま相手にあまりセクシーな人はダメってことよねやっぱり。でもソフィス様ってセクシー度は低いのよね……あれだけ立派なものを持っているというのに、美人だし、清楚だし、上品なのにねぇ……。やっぱり白い神官ぽいローブがダメなのかしら? うーん。派手なドレスとか着せて見たいわね……。
「ーーキラリくん?」
「ーーあ、ごめんなさい。少し物思いに耽ってしまいました。それでえっと、質問というか確認? なんですけれど、私は魔法使いです。なので戦闘前に補助系の魔法をかけておきたいのですがそれは構いませんか? いくら私でも皆さんを相手取ってなんの準備もなしでは対応のしようがありませんから……」
「「「えっ!?」」」
「えっ!?」
思わず驚き返してしまった。
「えっと……やっぱりバフをかけてとか都合よすぎって事ですかね? 素の実力という事ですか? でもそれだとルクス様かノインさんにサクッと切られて終了だと思うんですけれども……それで実力を測れますか?」
「いや、そうではなくてだね……」
「そうではない? というと……初撃を凌げないようでは話にならないという事ですか? なかなか難易度が高いですね……少し作戦を練る時間を頂いてもいいでしょうか?」
模擬戦、実力テストと言えど緩い状況は想定しないという事ですね。さすがは勇者パーティーです。それでなくても実力者が揃っているのに油断や慢心をしないとはやはり手強い。
今回の魔王討伐に軍隊が動員されるとはいえやはり勇者を軽く見るわけにはいかないようですね。
「ちょっとキラリさん?」
「はい、ソフィス様?」
「あなたもしかして私たちパーティーと模擬戦をするつもりですか?」
「そうですがそれが何か? ルクス様もそう仰ったではありませんか?」
私の返答に盛大に溜息をつく聖女様。ぽよんと弾むお胸が素晴らしい。無意識に視線が誘導されていた。これが噂に聞く視線誘導ーーミスディレクションですか!?
「……ルクスーー」
「あ、ああ……まさか我々と模擬戦を……という部分をそう捉えるとは思わなかった。俺が言いたかったのは例えば技とスピード重視の剣士ーーノインとどのように戦うのか……とか、そこに力を加えた俺のようなバランスタイプならどうか。対魔法使いの戦いは……などを見るつもりだったんだが……安易に無理だと言わずAランクパーティーを相手に戦い方を考えているキラリくんにとても興味が湧いてきたよ……。よし、一度やってみようか」
「ちょっとルクス!?」
「それとも推薦者であるソフィスは無謀だと思うのかい?」
「い、いいえそうではなくて……」
ソフィス様がチラリと私の方を見た。
随分な思い違いをしていたけれど、上手くやれという事ですよね?
こういう時は……サムズアップでいいのかしら?
まぁ私としては模擬戦で勇者パーティーと戦える事のメリットもあるし、死ぬことがない戦いっていうのがいいわよねーー。
「なっ!? バカ!!」
「どうやらキラリくんはやる気のようだ……。自信があるのか……それとも我々を過小評価しているのか……見定めさせてもらおうか。それと魔法の件は構わない。あらかじめかけておいてくれ。こちらは戦闘開始後にやらせてもらう」
「わかりました。では準備しますので少し時間をください」
「ああ。整ったら言ってくれ」
基本的なバフを一式かけるとしてあとはどうしようかしら?
「ところで、私は見学ですかねぇ?」
「そんなわけないだろう。いつも通りやってくれ。ただしお互いに大怪我をさせるような攻撃はなしだ。それと出来るだけ寸止めでいくこと」
「了解した。フォーメーションはいつも通りのツートップでいいかな?」
「問題ない。ソフィスはフォローと防御系の補助魔法を頼む。メルは一先ず様子見だ。俺たちの攻撃の様子を見て対応してくれ」
「……わかりました。念の為言います、油断しないでください」
「もちろんだ」
「魔法使いの女の子相手にみんな大人気なくないですかねぇ?」
「メル、真剣にしなければ思わぬ怪我をすることもある」
「それはわかっているけどねぇ。まぁいつでもどうぞ」
彼らのやり取りを見つつ私の方も一般的な準備を済ませてある。
ステアップと物理、魔法防御アップ。あとは簡単な作戦? というほどのものでもないけれど一応作戦を考えておいた。お世話になりたくはないけれどガルム様のショートソードを手にする。
持っているだけで安心できる。ガルム様の愛(勝手な妄想)がこもっているに違いない。(笑)
どのみち対症療法的な戦闘になるとは思うのよねきっと。四対一だしね。
あ、でもこれってある意味チャンスでは……この機会に勇者を亡き者に……はさすがに不味いわよね。
ソフィス様の信頼を裏切る訳にもいかないか……。
さてと、あとはなるようになれ、なるようにしかならないってね。
「あ、私も準備オッケーです。えっとさすがにこの距離で開始は……」
ほんの二、三メートルの距離では開始早々にノインさんに斬られると思うの。彼女の剣技は一度見ている。あれほどの速さで動かれたら私には対処のしようがない。
「そうだな。十メートルくらいでいいかな? 戦闘はこの演習場内のみ、浮遊でこちらの手の届かない高さに浮かぶのは無しにしよう。それをしては実力の確認にならないからね。あとは何かあるかな?」
「……大怪我をさせないように、空中はなしの演習場内のみですね。あとは寸止めですね。大丈夫です。よろしくお願いします」
演習場の広さは東〇ドーム一個分ーーは冗談としてもそこそこの広さがある。これなら十分に戦えると思う。まさか開始と同時にノインさんの高速の剣技でバッサリということはないでしょうし、なんとかなるでしょう。
「よし、それでは始めよう。コインが落ちたら模擬戦開始だ!」
弾かれたコインが放物線を描き私たちの中央へと落ちていく。
さぁ! いざ尋常に勝負!!
「はぁ……」
いや、まぁそれくらいしか感想が思い浮かばなくて……。だってねぇ? いくら信頼する仲間の推薦とはいえ実力も確認せずに仲間にすると言うわけにもいかないでしょうよ。
「無論自信がないのならば強制はしない。しかし、パーティーを組む件もなかったことにしてもらう。これはソフィスも納得済みだ」
おっと……? 視線を読まれた? いいえ、この状況では共通の知人であるところのソフィス様に意識がいくのは当然ね。
ルクス様の言う通りソフィス様も納得済みのようで首肯した。
「わかりました。それでどうすればいいのでしょうか? 何か魔法を披露すればいいのでしょうか?」
当たり障りのないところでいうと……回復系統かバフ系統か……はたまた補助系統か……。
まぁ攻撃系統はやめておいた方が無難よね。
「いいや、我々と模擬戦をしてもらう。お互いに命を預け合う仲間になるんだ、キラリくんの実力を己の体で感じておきたい。どうかな?」
やっぱりそうなるか。ギルドの演習場に集合と言われた時点で予想はしていたけれども、勇者パーティーと模擬戦とは……まぁ予行演習? 的な感じでいいと言えなくもないかもしれないかしらね?
「承知しました。ですが一ついいですか?」
「なんだい? 質問かな?」
どうしてルクス様は子供番組のお兄さんみたいなキャラなんだろうか? 爽やかなイケメン微笑みキャラだから一層そう感じてしまうのかしら? これで「さぁみんな! 次は〇〇の時間だよ!」とか言ってみてほしいかもしれない。そうすると……ソフィス様がお姉さんで体操の……お兄さんが不足するわね。あとあまりお胸の大きい方もNGだって聞いた事がある。本当かどうかは知らないけれど、お子ちゃま相手にあまりセクシーな人はダメってことよねやっぱり。でもソフィス様ってセクシー度は低いのよね……あれだけ立派なものを持っているというのに、美人だし、清楚だし、上品なのにねぇ……。やっぱり白い神官ぽいローブがダメなのかしら? うーん。派手なドレスとか着せて見たいわね……。
「ーーキラリくん?」
「ーーあ、ごめんなさい。少し物思いに耽ってしまいました。それでえっと、質問というか確認? なんですけれど、私は魔法使いです。なので戦闘前に補助系の魔法をかけておきたいのですがそれは構いませんか? いくら私でも皆さんを相手取ってなんの準備もなしでは対応のしようがありませんから……」
「「「えっ!?」」」
「えっ!?」
思わず驚き返してしまった。
「えっと……やっぱりバフをかけてとか都合よすぎって事ですかね? 素の実力という事ですか? でもそれだとルクス様かノインさんにサクッと切られて終了だと思うんですけれども……それで実力を測れますか?」
「いや、そうではなくてだね……」
「そうではない? というと……初撃を凌げないようでは話にならないという事ですか? なかなか難易度が高いですね……少し作戦を練る時間を頂いてもいいでしょうか?」
模擬戦、実力テストと言えど緩い状況は想定しないという事ですね。さすがは勇者パーティーです。それでなくても実力者が揃っているのに油断や慢心をしないとはやはり手強い。
今回の魔王討伐に軍隊が動員されるとはいえやはり勇者を軽く見るわけにはいかないようですね。
「ちょっとキラリさん?」
「はい、ソフィス様?」
「あなたもしかして私たちパーティーと模擬戦をするつもりですか?」
「そうですがそれが何か? ルクス様もそう仰ったではありませんか?」
私の返答に盛大に溜息をつく聖女様。ぽよんと弾むお胸が素晴らしい。無意識に視線が誘導されていた。これが噂に聞く視線誘導ーーミスディレクションですか!?
「……ルクスーー」
「あ、ああ……まさか我々と模擬戦を……という部分をそう捉えるとは思わなかった。俺が言いたかったのは例えば技とスピード重視の剣士ーーノインとどのように戦うのか……とか、そこに力を加えた俺のようなバランスタイプならどうか。対魔法使いの戦いは……などを見るつもりだったんだが……安易に無理だと言わずAランクパーティーを相手に戦い方を考えているキラリくんにとても興味が湧いてきたよ……。よし、一度やってみようか」
「ちょっとルクス!?」
「それとも推薦者であるソフィスは無謀だと思うのかい?」
「い、いいえそうではなくて……」
ソフィス様がチラリと私の方を見た。
随分な思い違いをしていたけれど、上手くやれという事ですよね?
こういう時は……サムズアップでいいのかしら?
まぁ私としては模擬戦で勇者パーティーと戦える事のメリットもあるし、死ぬことがない戦いっていうのがいいわよねーー。
「なっ!? バカ!!」
「どうやらキラリくんはやる気のようだ……。自信があるのか……それとも我々を過小評価しているのか……見定めさせてもらおうか。それと魔法の件は構わない。あらかじめかけておいてくれ。こちらは戦闘開始後にやらせてもらう」
「わかりました。では準備しますので少し時間をください」
「ああ。整ったら言ってくれ」
基本的なバフを一式かけるとしてあとはどうしようかしら?
「ところで、私は見学ですかねぇ?」
「そんなわけないだろう。いつも通りやってくれ。ただしお互いに大怪我をさせるような攻撃はなしだ。それと出来るだけ寸止めでいくこと」
「了解した。フォーメーションはいつも通りのツートップでいいかな?」
「問題ない。ソフィスはフォローと防御系の補助魔法を頼む。メルは一先ず様子見だ。俺たちの攻撃の様子を見て対応してくれ」
「……わかりました。念の為言います、油断しないでください」
「もちろんだ」
「魔法使いの女の子相手にみんな大人気なくないですかねぇ?」
「メル、真剣にしなければ思わぬ怪我をすることもある」
「それはわかっているけどねぇ。まぁいつでもどうぞ」
彼らのやり取りを見つつ私の方も一般的な準備を済ませてある。
ステアップと物理、魔法防御アップ。あとは簡単な作戦? というほどのものでもないけれど一応作戦を考えておいた。お世話になりたくはないけれどガルム様のショートソードを手にする。
持っているだけで安心できる。ガルム様の愛(勝手な妄想)がこもっているに違いない。(笑)
どのみち対症療法的な戦闘になるとは思うのよねきっと。四対一だしね。
あ、でもこれってある意味チャンスでは……この機会に勇者を亡き者に……はさすがに不味いわよね。
ソフィス様の信頼を裏切る訳にもいかないか……。
さてと、あとはなるようになれ、なるようにしかならないってね。
「あ、私も準備オッケーです。えっとさすがにこの距離で開始は……」
ほんの二、三メートルの距離では開始早々にノインさんに斬られると思うの。彼女の剣技は一度見ている。あれほどの速さで動かれたら私には対処のしようがない。
「そうだな。十メートルくらいでいいかな? 戦闘はこの演習場内のみ、浮遊でこちらの手の届かない高さに浮かぶのは無しにしよう。それをしては実力の確認にならないからね。あとは何かあるかな?」
「……大怪我をさせないように、空中はなしの演習場内のみですね。あとは寸止めですね。大丈夫です。よろしくお願いします」
演習場の広さは東〇ドーム一個分ーーは冗談としてもそこそこの広さがある。これなら十分に戦えると思う。まさか開始と同時にノインさんの高速の剣技でバッサリということはないでしょうし、なんとかなるでしょう。
「よし、それでは始めよう。コインが落ちたら模擬戦開始だ!」
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さぁ! いざ尋常に勝負!!
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