魔法の国のプリンセス

中山さつき

文字の大きさ
上 下
120 / 278
第四章:プリンセス、聖都に舞う

(11)

しおりを挟む
 討伐隊到着まであと五時間……。十分な筈の時間は確保できたわ。彼らが来るまでになんとかしなくては……。
 しかしホントにピンクの木ね……。ここからだとまるで満開の桜のようだわ……。余計な習性さえなければ並木道にしたいくらいなのに……このエ□ゲーワールドめ……。

「姫様……討伐隊に任せてもよろしかったのでは?」

 件のピンクツリーを遠目に見つめて佇む一人の美少女冒険者にお供の妖精が話しかけた。
 小さな羽を持つこの超が付く程の美少女妖精はアン。ピンクゴールドの髪がフワリと風になびくと……とっても絵になる。

「アン……改めて思うのだけれど……あなたって凄く可愛いわよね……」
「ひ、姫様……私にその気は……」 

 器用に空中をホバリングしながら後ずさる私のお世話妖精。

「アン……その態度はちょっと傷つくわよ!? そういう意味じゃない事くらいわかるでしょ?」
「もちろんです。私は姫様の事を信じておりますから! ポッ♪」
「あなたね……」

 この子は……今全く信じていない様な行動を取っておいてよく言うわね……。でもまぁ……この子が私たちと同じサイズだったなら……もう手を出してるわね私。自分で言うのもなんだけれど最近抑えが効かないのよね……。

「だいたいね、信じているのならすぐに逃げようとしないでくれるかしら?」
「それとこれとはまた別のお話でございます。信じてはいますが、姫様の忍耐が日々失われている様を見ておりますので……。アンは……アンは……あの様なものをお股に挟みたくございません!」
「なっ、何を言うのよ!?」

 アンが眠ってからしかしてないから知られていない筈……よね!?

「夜な夜なブンブンとーー」
「アーーーキコエナーーーイ! ワタシハナニモシラナーイ!!」
「………………」
「………………」
「ハァ……わかりました。その件は一先ず置いておきましょう。それでどうして討伐隊にお任せにならないのでしょうか?」

 あ……結局その話題に戻るのね。
 任せてもいいのだけれど、自分自身の不始末を人任せにするのが少し引っかかっている。それと、ブルブルの実無くしちゃったのよ……。行く所に行けば買えるのだけれど、物がモノだけに私の様な女の子が早々行ける様なお店ではなくて……俺くんの世界の様にネット通販もないし……ね?
 なんて事を言うと怒られるわよねやっぱり……。どう言い訳しようかしら?

「姫様がご自身の不始末をご自身でとお考えなのは私にも理解はできるのですが……何かお悩みの様ですが、他にも理由がお有りなんでしょうか?」
「な、何もないわ。明確に言葉に出来なかっただけよ。今アンが言った様に自分の失態を人任せにしたくない。そういう気持ちだったのだわ。それだけよ! 他意はないわ!」
「そうですか。私……姫様を疑っておりました。よもや新しいブルブルの実欲しさにギルドの討伐隊を差し置いて討伐しようとお考えだと……そのように思っておりました。申し訳ございません姫様! アンが姫様を信じずして誰が信じるというのか!! アンは……アンは……」
「い、いいのよアン……。そ、そんな事を言いながらもあなたが私の事を信じてくれている事は分かっているわ。だ、大丈夫よ。ミガホシイダナンテカンガエテナカッタワ。ホントウヨ……」
「姫様何か口調がおかしい様な……それに視線も泳いでおられますが……」
「さぁ! 行きましょう。不自然に思われないようにうまくしなくてはいけないから……急ぎましょ!!」

 変に人為的な討伐を疑われない様に、出来れば枯らせてしまいたい。今の私ならなんとかできると思うの。
 それに……。
 首に下げたシーラくんの指輪に触れる。この指輪があれば大抵の状態異常は無効化できる筈。


 近くで見るとなかなか凄い。葉っぱがピンクの木って……何というか壮絶だわ。だいたい、私が無くした実から育ったにしては育ちすぎではないかしら?
 これどう見ても樹齢ウン十年クラスなのだけれど……。でもこの場所は確かにあの時のオーナル草の採取場所だわ。
 だから納得はいかないけれどあの木がアレなのは間違いないわね。
 そしてーー。

「これが女の子を惑わす甘い香りね。アン大丈夫?」
「はい。姫様の魔法のおかげですね」

 私はともかくアンには状態異常耐性アップの魔法をかけておいた。この様子なら大丈夫だろう。

「それじゃ急いで始末しましょう」

 偶然というか何というか、とてもタイミングよく手に入れた世界樹の力ーー植物支配。ただ……触れないとダメなのよね。

「アンは触手蔦に捕まらないように離れていてね。私はあいつと接触して枯らせてみる」

 支配下に置いてスライムの力で生命力をドレインすれば多分……いけるはず。
 さて、香りに惑っている振りをすればすぐにでも近づけるでしょう。
 ゆっくりと少しおぼつかない足取りで……。
 香りに酔った様に……。
 ふらふらと脱力して……。

「……何だか少し暑いわね……服を脱いだほうがいいかしら……」

 体が熱い……。お腹の奥からジワジワと染み出してくるような……何だろう……ああ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...