77 / 278
幕間2
EP4:月夜の聖女と陽光が照らす未来
しおりを挟む
彼女の部屋からどのようにして帰ってきたのかわからない。
ふと我に帰ると私は借りた宿の部屋でベッドに伏せていた。
あの部屋での出来事を思い出して戦慄を覚える。
ありえない……あんな事はありえない!
でもありえた。実際にあった。
私の力の及ばないモノがあった。
それにより施された刻印への不安。
それ以上に私の心を掻き乱すのは……これは……悔しさ……?
私は自分が世界最高の魔法使い……だとまでは思っていなかった。それでもレベル10の高みに至った私は最高クラスの魔法使いだと自負していた。
それなのに……その私がまるで子供のような扱い!? あの女は何者なのか?
あれではまるで伝説の賢者ではないかーー。
ふと外から差す光が弱まった。空を仰ぎ見れば私の不安を具現化するかの様に夜空の月を暗雲が覆い隠していく。
「……ん……」
明るい……朝?
いつのまにか眠ってしまったみたいね。
「おはよう、起きたかソフィス」
「……ノイン……おはよう」
旅の仲間、剣士ノイン。
「珍しいな、お前が着替えもせずに眠るなんて……何かあったのか?」
「え、ええ……少しショックなことがあったのと……」
「お前がショックを?」
「失礼ね、私だってただの女よ……ショックを受けることもあるわ……」
「ほう……いつもと言ってることが違うな……男か?」
「ーー違うわよ!」
いつもと違う……か。
確かに自分でもおかしいのがわかる。あの女のせいだ。今まで積み重ねてきた自信を砕かれた。
「だったら……誰にやられた?」
「ーー!?」
ノインの雰囲気が一変する。
これは彼女が敵と相対するときの空気だ。私を打ちのめした相手に対する明確な敵意。仲間を傷つけるものは何者であっても許さない。それが彼女の強さ。
でも……。
「落ち着いてノイン。別に戦って負けたとかそういう事じゃないのよ。戦いにすらならなかったのよ彼女とはーーぃゃ!?」
あ、な、ナニ? コレ?
体の奥がキュンって……? いくら経験がなくたってこれが何かくらいはわかる……。
えっ、いや、まさか? 男はやめておけってそういう事なの!? ちょっと待って!? 冗談でしょ!?
「どうした?」
「だ、大丈夫よ、なんでもないわ……」
思い当たるのは宣告による制約しかない。しかもこの内容程度で発揮するの? まだ何も言ってないと思うのだけれど……。
「それで、その相手とは何者なんだ? お前が戦いにすらならない相手とは一体……? 彼女というからには女性。それも若い女か……何者だ?」
「ぅぅっ……」
ちょっと待って!? 私は何も喋ってない! それなのになんで!? いやよ! イヤ!! 仲間の前でそんなみっともない姿は晒せない!!
「どうした? 様子がおかしいぞ? やはり何かされたのか? 魔法か? だとすると何か呪いのようなモノをかけられているのか? どうなんだ!? ソフィス正直に言え!!」
ぁは……ぅん……だ、だめぇ……。
なんで!? ノイン、ちょっとダメよ……あなたが推測で至る結果にも反応するみたいなの!!
しかも相変わらず鋭すぎるわよ!!
そ、それ以上はダメよ……。
「ぁ……おね、がい……」
「ーー呪いだな!? そうかギルドからの頼みごとだな。まさか解呪が出来なかったのか……いや、それどころかお前まで呪いに侵されたのか?」
ちょ、ちょっと……ノインだめ! それ以上看破しないでーー!?
ちょっと、待って!
ダメェェェッッッ!?
「確か……白帝を退けた少女だったか? まさかお前まで白帝の呪いに? それともその少女が原因か?」
あ、いや、んっ……もう我慢できないーーあ、あ、あぁぁぁぁぁっっっ!!!
「ぃや、あ、ダメ! あ、あぁぁぁん!!」
仲間の前で……逝った……の私?
全身が気だるくて動けない。
熱い……体が……アソコが……。
「ソフィス……?」
「ぁ……ぃゃ……見ないで」
ノインの困惑した表情。
「その……気にするな……呪いなんだろう?」
気遣うようなその言葉でノインは今私に何が起きたのかを把握している。そう知らされたような気がした。
旅の仲間の剣士ノイン。
私と同年代の天才剣士。そんな彼女と仲間になってそろそろ一年になる。
まるで物語に出てくる騎士のように強く優しくカッコいい。当然女の子にモテた。だけど彼女は女の子だった。言い寄る娘もいたけれど彼女はそれに応じることはなかった。
ごくごく普通の男の子が好きな可愛い女の子だったのだからそれは当然のこと。
ただ、あまりにも優秀すぎるせいで多くの同年代の男の子からは敬遠されてもいたみたい。
もしも私が男の子だったなら、ノインを放っては置かないのにな……なんて思ったこともあった。
彼女は剣の腕こそとんでもないけれど、それ以外は実に可愛らしい。見た目も女性らしく顔だって整っている。
どうしてそんな体格であれだけの力を発揮できるのか? 不思議で仕方がない。
お互いに二十歳を超えた今は言いづらいけれど、彼女は相当の美少女だ。そうね、今は美女と言えばいいのだわ。私も自分の容姿には自信がある。コンプレックスの塊でしかないこの胸が男性たちに好かれることもわかっている。
小さな頃から聖女として教会で働いてきたから、この年まで男性と付き合った経験もない。当然その先の事もない。
そんな自分がまさか仲間の女性の前で逝ってしまうだなんて……。
ヒドイわ……キラリ……絶対に許さないわよ!
覚えてなさい! 必ずこんな呪いを解いてやり返してやるんだから!!
ふと我に帰ると私は借りた宿の部屋でベッドに伏せていた。
あの部屋での出来事を思い出して戦慄を覚える。
ありえない……あんな事はありえない!
でもありえた。実際にあった。
私の力の及ばないモノがあった。
それにより施された刻印への不安。
それ以上に私の心を掻き乱すのは……これは……悔しさ……?
私は自分が世界最高の魔法使い……だとまでは思っていなかった。それでもレベル10の高みに至った私は最高クラスの魔法使いだと自負していた。
それなのに……その私がまるで子供のような扱い!? あの女は何者なのか?
あれではまるで伝説の賢者ではないかーー。
ふと外から差す光が弱まった。空を仰ぎ見れば私の不安を具現化するかの様に夜空の月を暗雲が覆い隠していく。
「……ん……」
明るい……朝?
いつのまにか眠ってしまったみたいね。
「おはよう、起きたかソフィス」
「……ノイン……おはよう」
旅の仲間、剣士ノイン。
「珍しいな、お前が着替えもせずに眠るなんて……何かあったのか?」
「え、ええ……少しショックなことがあったのと……」
「お前がショックを?」
「失礼ね、私だってただの女よ……ショックを受けることもあるわ……」
「ほう……いつもと言ってることが違うな……男か?」
「ーー違うわよ!」
いつもと違う……か。
確かに自分でもおかしいのがわかる。あの女のせいだ。今まで積み重ねてきた自信を砕かれた。
「だったら……誰にやられた?」
「ーー!?」
ノインの雰囲気が一変する。
これは彼女が敵と相対するときの空気だ。私を打ちのめした相手に対する明確な敵意。仲間を傷つけるものは何者であっても許さない。それが彼女の強さ。
でも……。
「落ち着いてノイン。別に戦って負けたとかそういう事じゃないのよ。戦いにすらならなかったのよ彼女とはーーぃゃ!?」
あ、な、ナニ? コレ?
体の奥がキュンって……? いくら経験がなくたってこれが何かくらいはわかる……。
えっ、いや、まさか? 男はやめておけってそういう事なの!? ちょっと待って!? 冗談でしょ!?
「どうした?」
「だ、大丈夫よ、なんでもないわ……」
思い当たるのは宣告による制約しかない。しかもこの内容程度で発揮するの? まだ何も言ってないと思うのだけれど……。
「それで、その相手とは何者なんだ? お前が戦いにすらならない相手とは一体……? 彼女というからには女性。それも若い女か……何者だ?」
「ぅぅっ……」
ちょっと待って!? 私は何も喋ってない! それなのになんで!? いやよ! イヤ!! 仲間の前でそんなみっともない姿は晒せない!!
「どうした? 様子がおかしいぞ? やはり何かされたのか? 魔法か? だとすると何か呪いのようなモノをかけられているのか? どうなんだ!? ソフィス正直に言え!!」
ぁは……ぅん……だ、だめぇ……。
なんで!? ノイン、ちょっとダメよ……あなたが推測で至る結果にも反応するみたいなの!!
しかも相変わらず鋭すぎるわよ!!
そ、それ以上はダメよ……。
「ぁ……おね、がい……」
「ーー呪いだな!? そうかギルドからの頼みごとだな。まさか解呪が出来なかったのか……いや、それどころかお前まで呪いに侵されたのか?」
ちょ、ちょっと……ノインだめ! それ以上看破しないでーー!?
ちょっと、待って!
ダメェェェッッッ!?
「確か……白帝を退けた少女だったか? まさかお前まで白帝の呪いに? それともその少女が原因か?」
あ、いや、んっ……もう我慢できないーーあ、あ、あぁぁぁぁぁっっっ!!!
「ぃや、あ、ダメ! あ、あぁぁぁん!!」
仲間の前で……逝った……の私?
全身が気だるくて動けない。
熱い……体が……アソコが……。
「ソフィス……?」
「ぁ……ぃゃ……見ないで」
ノインの困惑した表情。
「その……気にするな……呪いなんだろう?」
気遣うようなその言葉でノインは今私に何が起きたのかを把握している。そう知らされたような気がした。
旅の仲間の剣士ノイン。
私と同年代の天才剣士。そんな彼女と仲間になってそろそろ一年になる。
まるで物語に出てくる騎士のように強く優しくカッコいい。当然女の子にモテた。だけど彼女は女の子だった。言い寄る娘もいたけれど彼女はそれに応じることはなかった。
ごくごく普通の男の子が好きな可愛い女の子だったのだからそれは当然のこと。
ただ、あまりにも優秀すぎるせいで多くの同年代の男の子からは敬遠されてもいたみたい。
もしも私が男の子だったなら、ノインを放っては置かないのにな……なんて思ったこともあった。
彼女は剣の腕こそとんでもないけれど、それ以外は実に可愛らしい。見た目も女性らしく顔だって整っている。
どうしてそんな体格であれだけの力を発揮できるのか? 不思議で仕方がない。
お互いに二十歳を超えた今は言いづらいけれど、彼女は相当の美少女だ。そうね、今は美女と言えばいいのだわ。私も自分の容姿には自信がある。コンプレックスの塊でしかないこの胸が男性たちに好かれることもわかっている。
小さな頃から聖女として教会で働いてきたから、この年まで男性と付き合った経験もない。当然その先の事もない。
そんな自分がまさか仲間の女性の前で逝ってしまうだなんて……。
ヒドイわ……キラリ……絶対に許さないわよ!
覚えてなさい! 必ずこんな呪いを解いてやり返してやるんだから!!
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説


ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる