魔法の国のプリンセス

中山さつき

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第一章:プリンセス、冒険者になる

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 ガルム様が女性用の下着をたくさん抱えて帰ってきたのはそれから程なくしてのこと。
 いくらイケメン王子様風とはいえ色とりどりのランジェリーを抱える殿方というのは……見ているこちらの方が恥ずかしかった。
 当人はなんとも思っていない様だったけれど何というか嬉し恥ずかしな感じ(?)だね。うん、さすがエ□狼だわ。

 そうした沢山の下着の中から自分に合うサイズのものを選んでもらった。
 いやぁおぱんつはともかくブラはよくわからない。おおよその身につけ方はわかるよ? ただ適正サイズがよくわからない。最初適当に身につけたらアンにダメ出しされた。
 そりゃそうだ。俺にもキラリにも縁がないものだから仕方がない。それでもある程度想像がつくのはこの世界の衣類が現代地球と同様のものが出回っている為である。
 それはもちろん下着も同様で素材、機能性、肌触り、デザインに至るまで十分に女の子を満足させてくれるものばかり。
 ファンタジー世界なのに何故衣類や下着が現代風なのか? それは勿論、可愛い下着を身につけた女の子にあんな事やこんな事をしたい制作者の趣味だから。
 理由なんて今更でしょ? リアルに中世風の野暮ったい下着じゃ萌えないもの。基本的な衣類もそういう理由から現代風のものが沢山ある。ただし、ファンタジーテイストを忘れてしまうとなんだかよくわからない世界観になってしまうので、あからさまに違和感のある衣類は存在しない。
 例えば……何があるだろうか? ……ちょっと思い浮かばない。
 まぁ別にその辺はどうでもいいわね。
 それとガルム様あれで意外と気がきくようでアン用のサイズのものも用意してくれた。ただし、何故お人形サイズとも言えるアンに合うものがあるのかという疑問には女物の服が色々ある点も含めて目をつむっておくことにした。
 詮索しない方がいい事も世の中にはあるわよね。私ってば大人だわ。

 お洋服は私とお揃いのデザインのものを。羽根があるから背中が開いていてちょっとセクシー。アン用の下着も適当にいくつかいただいた。
 その他何種類もの衣服や靴などの小物も沢山用意してくれたので好きに持っていけという言葉に甘えさせてもらった。
 洋服や小物なんかにウキウキするのは私も女の子らしくなってきたという事なのだろうか? 俺の記憶と経験にはない感なくだけど、意外と悪くないかもしれない。着飾るのがキラリ姫のような美少女だからかもしれないけれど……。
 思わず鏡に映る自分の姿に見惚れてしまったのは内緒です。
 可愛い服を着ると気持ちがウキウキするのはアンも同じようで凄く嬉しそうにしている。
 私もお揃いのワンピースが嬉しい。

 衣類の他にも護身用の短剣や丈夫な背負い袋、タオルや水筒などなど……あれもこれもと次々に用意してくれたんだけど……。こんなに持ちきれないわよね、困ったわ。
 どうお詫びしようかと悩んでいた時にふと思い至った。あれ? もしかして???

「ねぇアン、ストレージの魔法使える?」
「もちろんです。頂いたものは全てそちらに収納いたしましょうね」

 ダメ元で聞いてみたのだったがアンはとっくにそのつもりだったようです。
 ゲームと同様にアイテムボックスが利用出来るのはとても便利な事だ。これは旅をする上でとても重宝するし有利にもなる。
 ありがとう神様!! 他のことは色々と文句を言いたかったけれどこれに関しては超絶感謝いたします!! 本当にありがとうございます!!
 おかげで必要なものを全て持って行くことができる。今後の旅をスムーズに進められるようあれもこれもと言ってみればガルム様ったら全部用意してくれちゃいました。
 ガルム様……素敵です。でもちょっとチョロすぎませんか?(笑)
 それとも私のことをそんなにも気に入ってくださったのかしら?
 物に釣られてとか相応訳じゃないけれど、純粋に好かれるのは嬉しいと思う。ガルム様ってば見た目もそうだけど、意外と抜けている所とかもあって……こういうのを女性は可愛いって表現するのかな? なんて思ってしまった。
 そしてどうやらキラリ姫の心の琴線にもろに触れたらしい。キラリとしての感情が私にガルム様の事を愛おしく思わせるようだ。私自身も彼の事を嫌いだとは思っていないのだけれど……。うん。誰かに好かれるっていいわよね。そして誰かを好きになるのもいいわよね。

 一通り旅の支度を整え終わるといよいよお別れの時が迫ってきた。短い間だったけれどとても楽しかった……? いや待て。私ってばエ□いことされてただけのような気がする。
 なんか色々な事に惑わされていい思い出みたくなってたけど、よくよく考えるととんでもないわね。
 ちょっと気持ちを引き締めないといけないわ。やられたい放題だった事をいい思い出にしたらダメだわ。気をつけよう。
 それでも感謝しなくちゃいけない事は沢山ある。それはそれ、これはこれよね。

「ガルム様、色々とお世話になりました。ちょっとエ○チな事を沢山されましたけれどお礼を言わなくてはいけない事も沢山あります。だからありがとうございました」
「気にせずとも良い。我が眷属を救ってくれた礼だからな。それに我も久方ぶりに楽しかった。また訪ねて来るが良い。お前たちならいつでも歓迎しよう。夜明け前に森の端まで送ろう。それまでに一休みしておけ。湯の用意もしておいた。好きに使うといい」

 おおっ! お風呂は嬉しい。あとでアンと一緒に入ろう。

「何から何まで本当にありがとうございます。ガルム様のおかげで故郷への旅路に随分と光明が見えてきました」

 多分だけど、盗賊のアジトから直接街へ出ていた場合、うまく冒険者として登録できたかどうか怪しい。
 だってまるで逃亡奴隷の様なみすぼらしい小娘が一人で冒険者にだなんて、絶対に警戒されていたと思う。でも今なら身なりもしっかりしているし、最低限の道具と武器もある。これなら問題なく登録できると思う。

「それでも魔族の国へは相当困難な旅になるぞ」
「そうですね、覚悟は!? わかって……。気が付いていたのですか? 私が魔族だと」

 私たち魔族は特別魔狼王と敵対しているわけではないけれど、かといって仲良しでもない。そもそもこんなところに魔族がいる理由がないのに気がつかれるとは思わなかった。

「我も随分と見くびられたものだな。そんな事は見ればわかる」
「さすがですね……。ですが何か後ろめたい事があったわけではないのです」
「どちらでも良い。その方は我が眷属を救い、我が元へと届けたのだ。その恩に報いてやっただけだ。何が目的でも構わぬよ」
「ガルム様……」

 偶々助け出す事になっただけ。届けたと言ってもアジトまで迎えにきていたくせに……。
 この世界の頂点の一つの割に随分と優しいのですね。
 いやだ、なんだか胸が熱くなってきちゃったわ!? 凄くドキドキしてる。ホント、キラリちゃんったらガルム様の事が好きなのね。私まで影響されてしまいそうだわ。
 火照る頬を手で扇いで冷まそうとするけれど……もうっ! そんなに見つめないでくださいよ! ドキドキが治らないじゃないですか!!


ーーーーー
2021.02.07改稿
いつも通り誤字脱字と少し加筆致しました。
自分の未熟さを痛感してしまいます。
今ならもう少しだけ上手に表現できそうな気がしますが、別物にする訳にはいきませんので程々に。
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