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第44話 みんなズル過ぎだよ!
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その夜。
四人はカンパナの安い宿屋に宿泊し、翌日の昼頃、おかみさんにチェックアウトを促されるまで爆睡していた。
「あーあ…もう少し寝てたかったのになぁ」
大衆レストラン“ボンボンジュール”でかなり遅めの朝食を取りながら、陸人は大欠伸をしていた。
「うーん…。このマグマドリア、なんか微妙だなぁ。他の料理にすればよかった」
「それじゃ、俺の灼熱地獄ナポリタンを分けてやろう」
オーガストは自分の食べ残しを陸人のマグマドリアの上に乗せた。先ほど水をがぶ飲みしたせいで、早くも河童の姿に変身している。
「ええ~!いらないよ!見るからに辛そうじゃん」
「なぁ、そんなこと言わずに食べてくれよ。舌が千切れそうなくらい辛くて、俺はもうギブアップだ」
「益々食べる気失せたよ。なんでそんなもの頼んだの?」
「いやぁ…。新メニューが出るとつい頼みたくなってしまってなぁ。まさかこれほど激辛だとは…」
「この岩石スコーンと一緒に食べたら少しは緩和されるんじゃないかしら?」
エレミアはオーガストの食べ残しのナポリタンの上に、文鎮のようにずっしりしたスコーンを置いた。ちなみに彼女は宿屋を出る前からすでに幼女化していた。
「これ本当にスコーン?かじったら歯が折れそうな気がするんだけど…」
「それじゃ、この溶岩トマトジュースをかけて湿らせろ。少しは柔らかくなるだろ」
シメオンは飲み残しのジュースをスコーンの上からジャバジャバ掛けた。
「うわぁ…。これ誰が食べるの?」
四人は無言で顔を見合わせた。
「これはもう公平に、ジャンケンしかないだろう」
オーガストが立ち上がり、拳を掲げる。
「チッ…。仕方ねーな…」
他の三人も立ち上がり、臨戦態勢を整える。
「最初はグー!ジャーンケーン…」
そのまま五秒が経過し、しびれを切らして陸人が口を開いた。
「どうして誰も出さないわけ?!」
「それはその…アレだ。なぁマトン君」
「ああ、アレだな」
「つまり全員が後出しで勝とうとしたのね」
「みんなズル過ぎだよ!」
「そういうお前だって出さなかっただろ」
「それはそうだけど…」
「ねぇ、無理して食べないでテイクアウトしましょうよ」
「おお、そうだな。非常食にしよう」
オーガストは賛同し、店員の人に持ち帰り用のパックを要求した。
“地獄の大噴火”こと食べ残しの特製弁当を手に、一行は大衆レストランを出て近くの広場へ向かった。
人気のなさそうな茂みを見つけ、いったんそこで巻物を広げて地図を確認する。
「最後の石があるのは、この緑のバツ印があるガインダってところだよ」
地名を聞くなりオーガストはがっくり項垂れた。
「はぁ…灼熱地獄のガインダか。テンション下がるな…」
「仕方ねーだろ。文句言ってないでさっさと転移魔法の準備しろよ、おっさん」
「はいはい…」
オーガストは渋々腰からステッキを抜き、地面に魔法陣を描き始めた。
いつものごとく一瞬にして景色が変わり、見渡す限りの砂漠が視界に広がる。
サウナのような乾いた熱気に、今にも体中の水分を奪われそうだ。
「あーーー!くそ暑い!!!」
それが陸人の発した第一声だった。
「だから言っただろ、灼熱地獄だと…」
オーガストはすでに意気阻喪している。
「本当にこんなところに石なんてあるのかなぁ?見るからに砂しかないじゃん…」
「あら、砂だけじゃないわよ」
エレミアが陸人の足元を指さす。
「そこにサソリが這ってるわ」
「うわっ!本当だ!」
「なんだ、陸人。サソリが怖いのか?こんなのエビと一緒だろう」
飛び上がる陸人を見て、オーガストがやれやれと首を振る。陸人はムッとして彼を睨みつけた。
「じゃあ後でおじさんが昼寝してる時に顔にサソリを乗せといてあげるよ」
「馬鹿にして悪かった!頼むからそれはやめてくれ!」
「おい、騒いでないで石を探すぞ!陸人、地図を出せ」
シメオンは暑さで苛立っているようだ。
流れる汗を拭いながら、全員で巻物の地図を見下ろす。
「印は砂漠の中心地辺りみたいだよ」
しかし周りを見回しても、宝を隠せそうな建物は見当たらない。
「もしかして…」
エレミアが砂漠を見渡しながら、小さく呟く。
「砂の下に埋まっているんじゃないかしら?」
十秒ほどの沈黙。
シメオンが砂を蹴って悪態をつく。
「こんなだだっ広い砂漠の中からどうやってあんな小さい石ころを探し出せっていうんだよ!永遠に見つかんねーだろ!」
「シメオン、怒っても石は出てこないよ。とにかく先へ進もう」
「進むって、どこへだよ」
「それは―――」
「陸人、そういう時はとっておきのおまじないがあるぞ」
オーガストは両手を大きく広げ、得意気にニヤリと笑った。
「目をつむって、十秒間回り続ける。止まった時に体が向いていた方向に進めばいいんだ!」
「一生回ってろ」
シメオンは冷ややかに言い放ち、どこともなく歩き出した。
「こんな暑いところでそんな激しい運動したら、体の水分がなくなってミイラになっちゃうと思うよ」
一応忠告してから陸人もシメオンの後についていった。
「二人とも冷たいなぁ…」
オーガストは吐息をつき、期待を込めた瞳でエレミアを見た。
「エレミア、君は俺のお遊びに付き合ってくれるよな?」
「ええ、いいわよ。どうぞ思う存分回って」
と、彼女は瞳を輝かせながら、
「河童のミイラなんてとても興味深いわ。しかもミイラ化する過程まで見られるなんて!」
「や…やはりやめておくことにする!」
オーガストとエレミアもシメオン達の後に続いて歩き始めた。
四人はカンパナの安い宿屋に宿泊し、翌日の昼頃、おかみさんにチェックアウトを促されるまで爆睡していた。
「あーあ…もう少し寝てたかったのになぁ」
大衆レストラン“ボンボンジュール”でかなり遅めの朝食を取りながら、陸人は大欠伸をしていた。
「うーん…。このマグマドリア、なんか微妙だなぁ。他の料理にすればよかった」
「それじゃ、俺の灼熱地獄ナポリタンを分けてやろう」
オーガストは自分の食べ残しを陸人のマグマドリアの上に乗せた。先ほど水をがぶ飲みしたせいで、早くも河童の姿に変身している。
「ええ~!いらないよ!見るからに辛そうじゃん」
「なぁ、そんなこと言わずに食べてくれよ。舌が千切れそうなくらい辛くて、俺はもうギブアップだ」
「益々食べる気失せたよ。なんでそんなもの頼んだの?」
「いやぁ…。新メニューが出るとつい頼みたくなってしまってなぁ。まさかこれほど激辛だとは…」
「この岩石スコーンと一緒に食べたら少しは緩和されるんじゃないかしら?」
エレミアはオーガストの食べ残しのナポリタンの上に、文鎮のようにずっしりしたスコーンを置いた。ちなみに彼女は宿屋を出る前からすでに幼女化していた。
「これ本当にスコーン?かじったら歯が折れそうな気がするんだけど…」
「それじゃ、この溶岩トマトジュースをかけて湿らせろ。少しは柔らかくなるだろ」
シメオンは飲み残しのジュースをスコーンの上からジャバジャバ掛けた。
「うわぁ…。これ誰が食べるの?」
四人は無言で顔を見合わせた。
「これはもう公平に、ジャンケンしかないだろう」
オーガストが立ち上がり、拳を掲げる。
「チッ…。仕方ねーな…」
他の三人も立ち上がり、臨戦態勢を整える。
「最初はグー!ジャーンケーン…」
そのまま五秒が経過し、しびれを切らして陸人が口を開いた。
「どうして誰も出さないわけ?!」
「それはその…アレだ。なぁマトン君」
「ああ、アレだな」
「つまり全員が後出しで勝とうとしたのね」
「みんなズル過ぎだよ!」
「そういうお前だって出さなかっただろ」
「それはそうだけど…」
「ねぇ、無理して食べないでテイクアウトしましょうよ」
「おお、そうだな。非常食にしよう」
オーガストは賛同し、店員の人に持ち帰り用のパックを要求した。
“地獄の大噴火”こと食べ残しの特製弁当を手に、一行は大衆レストランを出て近くの広場へ向かった。
人気のなさそうな茂みを見つけ、いったんそこで巻物を広げて地図を確認する。
「最後の石があるのは、この緑のバツ印があるガインダってところだよ」
地名を聞くなりオーガストはがっくり項垂れた。
「はぁ…灼熱地獄のガインダか。テンション下がるな…」
「仕方ねーだろ。文句言ってないでさっさと転移魔法の準備しろよ、おっさん」
「はいはい…」
オーガストは渋々腰からステッキを抜き、地面に魔法陣を描き始めた。
いつものごとく一瞬にして景色が変わり、見渡す限りの砂漠が視界に広がる。
サウナのような乾いた熱気に、今にも体中の水分を奪われそうだ。
「あーーー!くそ暑い!!!」
それが陸人の発した第一声だった。
「だから言っただろ、灼熱地獄だと…」
オーガストはすでに意気阻喪している。
「本当にこんなところに石なんてあるのかなぁ?見るからに砂しかないじゃん…」
「あら、砂だけじゃないわよ」
エレミアが陸人の足元を指さす。
「そこにサソリが這ってるわ」
「うわっ!本当だ!」
「なんだ、陸人。サソリが怖いのか?こんなのエビと一緒だろう」
飛び上がる陸人を見て、オーガストがやれやれと首を振る。陸人はムッとして彼を睨みつけた。
「じゃあ後でおじさんが昼寝してる時に顔にサソリを乗せといてあげるよ」
「馬鹿にして悪かった!頼むからそれはやめてくれ!」
「おい、騒いでないで石を探すぞ!陸人、地図を出せ」
シメオンは暑さで苛立っているようだ。
流れる汗を拭いながら、全員で巻物の地図を見下ろす。
「印は砂漠の中心地辺りみたいだよ」
しかし周りを見回しても、宝を隠せそうな建物は見当たらない。
「もしかして…」
エレミアが砂漠を見渡しながら、小さく呟く。
「砂の下に埋まっているんじゃないかしら?」
十秒ほどの沈黙。
シメオンが砂を蹴って悪態をつく。
「こんなだだっ広い砂漠の中からどうやってあんな小さい石ころを探し出せっていうんだよ!永遠に見つかんねーだろ!」
「シメオン、怒っても石は出てこないよ。とにかく先へ進もう」
「進むって、どこへだよ」
「それは―――」
「陸人、そういう時はとっておきのおまじないがあるぞ」
オーガストは両手を大きく広げ、得意気にニヤリと笑った。
「目をつむって、十秒間回り続ける。止まった時に体が向いていた方向に進めばいいんだ!」
「一生回ってろ」
シメオンは冷ややかに言い放ち、どこともなく歩き出した。
「こんな暑いところでそんな激しい運動したら、体の水分がなくなってミイラになっちゃうと思うよ」
一応忠告してから陸人もシメオンの後についていった。
「二人とも冷たいなぁ…」
オーガストは吐息をつき、期待を込めた瞳でエレミアを見た。
「エレミア、君は俺のお遊びに付き合ってくれるよな?」
「ええ、いいわよ。どうぞ思う存分回って」
と、彼女は瞳を輝かせながら、
「河童のミイラなんてとても興味深いわ。しかもミイラ化する過程まで見られるなんて!」
「や…やはりやめておくことにする!」
オーガストとエレミアもシメオン達の後に続いて歩き始めた。
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