38 / 55
第38話 今まで生きてて本当に良かった!もういつ死んでもいい!
しおりを挟む
会場には小さな円卓と椅子がいくつも設置されており、料理を皿に取った後は好きな席に着いて食事を楽しめるようになっている。
陸人達も空いているテーブルを見つけてそこで食事を取っていた。
「このローストビーフヤバいよ!舌も歯もいらないくらい柔らかい!」
「うむ、最高だ!いくらでも食べられるぞ!口の中でアイスのようにとろけてゆく!今まで生きてて本当に良かった!もういつ死んでもいい!」
陸人とオーガストは感動の雄叫びを上げながら、ひたすら肉料理にがっついていた。
「ったく…。肉くらいでいちいち大袈裟なやつらだな」
シメオンは焼き鳥を片手に冷ややかな視線で二人を見つめている。
「あなたは食べるよりも、飲む派だものね」
そう言って、エレミアが得体の知れない液体の入ったグラスを彼に差し出す。
「なんだその黒いドリンクは?」
「めんつゆよ」
「だから飲まねーよ!!」
ちょうどその時、二人組みの男女が陸人達のテーブルにやってきた。
一人は大柄で筋骨隆々の青年、もう一人は胸元の開いたドレスを纏ったナイスバディの美女。妖精にも色々とタイプがあるらしい。
「よう、祭りは楽しんでるか?」
青年が気さくに声を掛けてきた。
「あんたらのことはロティーから聞いてるぜ。なんだかワケありなパーティーみたいだな」
「なんだ、貴様は?」
シメオンが忌々し気に眉を寄せる。
「そんな怖い顔しなくても、取って食ったりしねーよ」
男はヘラヘラ笑ってシメオンの肩を叩き、勝手に自己紹介を始めた。
「俺ぁロック。ロティーの兄貴だ。で、こっちが従妹のアレーナ」
「よろしくね。人間様は大歓迎だよ」
女は胸を突き出すようにテーブルに身を乗り出し、オーガストやシメオンに秋波を送った。
「おお…」
言うまでもなく、オーガストは彼女の豊満な胸に釘付けになっていた。
「ねぇ、あたし達もここで一緒に食べていい?」
アレーナが甘えるようにオーガストの腕に両手を絡める。
「ももも…勿論いいとも!」
「おい、ここはもう満員だぞ!」
「君がもう少し詰めれば座れるだろう」
オーガストは無理やりシメオンに席を詰めさせ、二人分の席を作った。
「あたし、皆の飲み物取ってくるよ」
アレーナはロックを残していったんテーブルを離れていった。
「じゃあ俺達は楽しくお喋りでもしようか」
ロックが慣れ慣れしくシメオンの肩に手を回す。
「おお…。お前、中々良い筋肉してんじゃねぇか」
「気安く触るな。この変態野郎」
「はは…照れなくてもいいんだぜ。本当は嬉しいくせに」
「ちっとも嬉しくねーよ!」
シメオンはロックの手を払いのけ、陸人に視線を送って席を代われと命令した。
「ほら、早くしろっ」
「面倒くさいなぁ、もう…」
陸人は渋々立ち上がり、彼と席を代わってやった。
「おまたせ~!」
ちょうどアレーナが盆に飲み物を乗せて戻ってきた。
「おお…」
彼女の胸が揺れる度、オーガストは興奮の吐息を零していた。
「数量限定で提供されてるスペシャルカクテルだよ。あ、坊やにはこっちね」
未成年である陸人にはオレンジジュースが手渡された。
「え~。僕もそっちのカクテルが良かったなぁ」
陸人はオレンジジュースがあまり好きではないのである(※第一話参照)。
「ははは!お前にカクテルはまだ早いだろう」
オーガストは笑いながらカクテルを一気飲みした。
「あんたいい飲みっぷりだね。気に入ったよ」
「いやぁ、それほどでも…あるかな?ははは!」
オーガストはアレーナにおだてられてすっかり舞い上がっているようだが、シメオンはさっきからずっと神妙な顔つきでパーティー会場を見回していた。
「おい…」
シメオンは声をひそめ、両隣りにいる陸人とエレミアに囁いた。
「今ならモヒカン野郎に近付けるんじゃないか?あのロティーってガキもいねーし」
「え…でも――――」
「これはまたとないチャンスだ。ちょっと行ってくる」
そう言って意気盛んに人ごみの中へと進んでいったシメオンであったが、五分と経たずに席に戻ってきた。勿論手ぶらだ。
「くそ…!見つからねぇ…!」
「モヒカン長官、石持ってなかったの?」
「違う、肝心のモヒカン野郎がどこにもいねーんだよ。奴だけじゃなく、手下もだ」
「上手く人ごみに紛れてるんじゃない?」
「あの馬鹿みたいに目立つ頭で隠れられるはずがないだろ」
「髪型を変えて出席しているかもしれないわよ。髪型で探すよりも、花の首飾りをつけているかどうかを見た方がいいと思うわ」
「確かにそうだね。今度は三人で探しに行ってみる?」
「そうだな。行ってみよう」
しかし三人掛かりでいくら探せども、ワイト長官らしき人物は見つからなかった。
「もしかしたらもう部屋に戻っちゃったのかもしれないね」
「チッ…」
円卓に戻るとロックの姿はなく、オーガストとアレーナが二人だけでイチャイチャしていた。
シメオンはあからさまに不快そうな表情を浮かべ、席に着かずに踵を返した。
「シメオン、どこ行くの?」
「寝る!これ以上エロ河童の脂下がった面なんて見たくないからな」
「確かにそうだね。じゃあ僕ももう部屋に戻ろうかな…」
「私も一緒に行くわ」
陸人達はオーガストを残して会場を出た。
陸人達も空いているテーブルを見つけてそこで食事を取っていた。
「このローストビーフヤバいよ!舌も歯もいらないくらい柔らかい!」
「うむ、最高だ!いくらでも食べられるぞ!口の中でアイスのようにとろけてゆく!今まで生きてて本当に良かった!もういつ死んでもいい!」
陸人とオーガストは感動の雄叫びを上げながら、ひたすら肉料理にがっついていた。
「ったく…。肉くらいでいちいち大袈裟なやつらだな」
シメオンは焼き鳥を片手に冷ややかな視線で二人を見つめている。
「あなたは食べるよりも、飲む派だものね」
そう言って、エレミアが得体の知れない液体の入ったグラスを彼に差し出す。
「なんだその黒いドリンクは?」
「めんつゆよ」
「だから飲まねーよ!!」
ちょうどその時、二人組みの男女が陸人達のテーブルにやってきた。
一人は大柄で筋骨隆々の青年、もう一人は胸元の開いたドレスを纏ったナイスバディの美女。妖精にも色々とタイプがあるらしい。
「よう、祭りは楽しんでるか?」
青年が気さくに声を掛けてきた。
「あんたらのことはロティーから聞いてるぜ。なんだかワケありなパーティーみたいだな」
「なんだ、貴様は?」
シメオンが忌々し気に眉を寄せる。
「そんな怖い顔しなくても、取って食ったりしねーよ」
男はヘラヘラ笑ってシメオンの肩を叩き、勝手に自己紹介を始めた。
「俺ぁロック。ロティーの兄貴だ。で、こっちが従妹のアレーナ」
「よろしくね。人間様は大歓迎だよ」
女は胸を突き出すようにテーブルに身を乗り出し、オーガストやシメオンに秋波を送った。
「おお…」
言うまでもなく、オーガストは彼女の豊満な胸に釘付けになっていた。
「ねぇ、あたし達もここで一緒に食べていい?」
アレーナが甘えるようにオーガストの腕に両手を絡める。
「ももも…勿論いいとも!」
「おい、ここはもう満員だぞ!」
「君がもう少し詰めれば座れるだろう」
オーガストは無理やりシメオンに席を詰めさせ、二人分の席を作った。
「あたし、皆の飲み物取ってくるよ」
アレーナはロックを残していったんテーブルを離れていった。
「じゃあ俺達は楽しくお喋りでもしようか」
ロックが慣れ慣れしくシメオンの肩に手を回す。
「おお…。お前、中々良い筋肉してんじゃねぇか」
「気安く触るな。この変態野郎」
「はは…照れなくてもいいんだぜ。本当は嬉しいくせに」
「ちっとも嬉しくねーよ!」
シメオンはロックの手を払いのけ、陸人に視線を送って席を代われと命令した。
「ほら、早くしろっ」
「面倒くさいなぁ、もう…」
陸人は渋々立ち上がり、彼と席を代わってやった。
「おまたせ~!」
ちょうどアレーナが盆に飲み物を乗せて戻ってきた。
「おお…」
彼女の胸が揺れる度、オーガストは興奮の吐息を零していた。
「数量限定で提供されてるスペシャルカクテルだよ。あ、坊やにはこっちね」
未成年である陸人にはオレンジジュースが手渡された。
「え~。僕もそっちのカクテルが良かったなぁ」
陸人はオレンジジュースがあまり好きではないのである(※第一話参照)。
「ははは!お前にカクテルはまだ早いだろう」
オーガストは笑いながらカクテルを一気飲みした。
「あんたいい飲みっぷりだね。気に入ったよ」
「いやぁ、それほどでも…あるかな?ははは!」
オーガストはアレーナにおだてられてすっかり舞い上がっているようだが、シメオンはさっきからずっと神妙な顔つきでパーティー会場を見回していた。
「おい…」
シメオンは声をひそめ、両隣りにいる陸人とエレミアに囁いた。
「今ならモヒカン野郎に近付けるんじゃないか?あのロティーってガキもいねーし」
「え…でも――――」
「これはまたとないチャンスだ。ちょっと行ってくる」
そう言って意気盛んに人ごみの中へと進んでいったシメオンであったが、五分と経たずに席に戻ってきた。勿論手ぶらだ。
「くそ…!見つからねぇ…!」
「モヒカン長官、石持ってなかったの?」
「違う、肝心のモヒカン野郎がどこにもいねーんだよ。奴だけじゃなく、手下もだ」
「上手く人ごみに紛れてるんじゃない?」
「あの馬鹿みたいに目立つ頭で隠れられるはずがないだろ」
「髪型を変えて出席しているかもしれないわよ。髪型で探すよりも、花の首飾りをつけているかどうかを見た方がいいと思うわ」
「確かにそうだね。今度は三人で探しに行ってみる?」
「そうだな。行ってみよう」
しかし三人掛かりでいくら探せども、ワイト長官らしき人物は見つからなかった。
「もしかしたらもう部屋に戻っちゃったのかもしれないね」
「チッ…」
円卓に戻るとロックの姿はなく、オーガストとアレーナが二人だけでイチャイチャしていた。
シメオンはあからさまに不快そうな表情を浮かべ、席に着かずに踵を返した。
「シメオン、どこ行くの?」
「寝る!これ以上エロ河童の脂下がった面なんて見たくないからな」
「確かにそうだね。じゃあ僕ももう部屋に戻ろうかな…」
「私も一緒に行くわ」
陸人達はオーガストを残して会場を出た。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる