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第1章
主人公チートが強すぎるんだが
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「はっはっは……っ! グランディ。とうとうこの日が来てしまったな! お前がゴミのように敗北する日だ……っ!」
高笑いするクロード王子。
ここは第3教練場。
学院の放課後、学院生と教員たちが集まった。
【グランディ! さっさと死ね!】
【ボコられるの楽しみすぎる~~っ!】
【ゴミ・クズ・カス!】
俺とアリシアを罵倒しまくる学院生たち。
完全なアウェイだ……
誰一人、俺たちを応援していないわけで。
相手はクロード王子、フェルド魔術師長、ユリウス騎士団長の3人。
対して、こちらは俺とアリシアの2人だ。
「グランディ。今、ここで土下座しろ。土下座すれば、許してやってもいいぞ」
「シドさん……」
アリシアが心配そうに俺を見る。
別に俺は勝っても負けてもどちらでもいい。
ただ――普通にモブとしての人生を送りたいだけだ。
だが……いろいろあって負けるわけにいかなくなった。
それはもちろん――
「グランディ! 早く殿下に負けなさいよね! あたしの足をぺろぺろするの…っ!」
ファルネーゼが俺に向かって叫ぶ。
(あいつ。【ぺろぺろ】とか自分で言って、恥ずかしくないのか……?)
どれだけ自分の足を舐めてほしいのか。
【グランディ! ファルネーゼ様の足をちゃんと舐めろよ!】
【そうよ! あたしもファルネーゼの足舐めたいわ!】
【すげえ羨ましい……!】
この学院の貴族は、変態しかいなのか……
(はあ……)
俺はため息をついた。
「シドさん! 頑張りましょうね!」
ぎゅっと強く、アリシアが俺の手を握る。
弾けるような、いい笑顔で。
まるでこれから楽しいことでもするような――
「では……クロード殿下、対、グランディ準男爵令息の決闘を始めます――」
審判を務める教員が、右手を振り上げる。
「グランディ。手加減してやるよ……」
フェルド魔術師長が、【不死鳥の杖】を取り出す。
歴代の学院魔術師長に与えられる、魔力を増大させる魔道具だ。
「ふ……っ! グランディ。瞬殺する」
ユリウス騎士団長が、【王者の剣】を鞘から抜く。
「クロード。お前は何もしなくていい。俺とユリウスがいれば、グランディごとき簡単に倒せる」
フェルドが俺を鼻で笑いながら言う。
「フェルドの言う通りだ。わざわざ王族のクロードが出なくても大丈夫だ」
メガネを上げながら、クールに言うユリウス。
「そうだな。2人に任せよう」
クロード王子は腕を組んで、後ろに下がる。
「――決闘、開始!」
決闘がスタートした。
「ふふ……グランディ。かかってこいよ! 最初の一発ぐらい、殴らせてやるよ……っ!」
フェルド魔術師長が、俺をあざ笑う。
それから不死鳥の杖を、地面に突き刺した。
(えらく余裕があるんだな……)
「よし……あれを使うか」
「はい……! シドさん!」
アリシアはアイテムボックスから、【聖なる杖】を取り出す。
「はっはっは……! なんだそりゃ……? どこの安物の杖だ? そんなもので俺に勝てるとでも?」
聖なる杖を見て、高笑いするフェルド。
(そうか! クロードたちは聖なる杖を知らないんだ……)
聖なる杖は、シナリオの終盤で手に入る、主人公専用武器。
だからクロードたちは、聖なる杖の存在さえ知らないわけで。
「いいのか? 不死鳥の杖を持たなくて?」
俺は一応、フェルド魔術師長に聞いてみる。
不死鳥の杖は、フェルド魔術師長の専用装備。
装備すれば、魔法攻撃力と魔法防御力を強化できる。
もちろん、聖なる杖の魔力強化効果には全然及ばないが……
「はあ? 準男爵ごとき雑魚に、杖の強化なんて要らねえんだよ!」
アリシアは主人公だ。
アリシアはプレイヤーから、「公式チート」と呼ばれる。
それは、聖なる杖を装備できるのが、アリシアしかいないからだ。
聖なる杖を装備したアリシアは、ラスボス以外はワンパンで倒すほど強化される。
しかも、アリシアだけでなく、味方全員が一気に強化されるのだ。
事実上、聖なる杖をゲットした時点で、このゲームは「終了」する……
「そうか……。本当にいいんだな?」
最後に、俺はもう一度、フェルド魔術師長に問う。
「見苦しいぞ! グランディ! さっさとかかってこい……っ!」
フェルド魔術師長はキレる。
(あまりやりすぎると、俺がいじめるみたいになるし……)
聖なる杖の力を一度も試していないから、かなり手加減しないと――
でも手加減って、どうやってやれば……?
「……チっ! もう待てねえ! 死ね! グランディ!」
俺がいろいろ考えていると、痺れを切らしたフェルド魔術師長が、右手を掲げる。
「焼けろ。ファイアボール!!」
フェルド魔術師長の右手から、大きな火の玉が放たれる。
フェルド魔術師長は、このゲームでアリシアの次に魔力が多い。
魔法の威力は、使い手が有する魔力の量に比例する。
実際、フェルド魔術師長はゲームでもボス相手に「ダメージソース」となるキャラ。
迫り来るファイアボール。
「身体強化――【エンフォース】」
アリシアが俺に身体強化魔法をかけると……
――どおおおおおおんっ!
ファイアボールが俺に直撃する。
激しい炎に包まれる俺。
「ぎゃははは……! これで俺の勝ちだァ!!」
だがしかし――
(!? 全然、熱くない……!)
痛みさえまったく感じないから、たぶんノーダメージということだろう。ゲーム的に。
白い煙が少しずつ消えていくと――
「……なっ?! む、無傷だと……?」
フェルド魔術師長が、驚きの声を上げる。
俺も驚いた。
ノーダメージどころか、着ている服さえ燃えてない。
服にも、身体強化の効果が及んでいるのだろう。
(さすが公式チートだ……っ!)
【ウソだろ……ノーダメージかよ?】
【あり得ないわ……!】
【準男爵令息のはずなのに?!】
この世界の爵位は、魔力の強い順になっている。
準男爵は、最底辺の爵位だ。
観客の学院生たちが、驚くのも無理はない。
(どんだけチートなんだよ。主人公……!)
「よかったです……! 全然効いてないみたいで!」
アリシアが喜ぶ。
「ありがとう。アリシアのおかげだよ」
実際、主人公チートの力だしな。
「あ、あり得ない……俺の魔法が効かないなんて……」
フェルド魔術師長は、顔が青ざめている。
「ふふ。じゃあ、シドさん。反撃しちゃいましょうか?」
アリシアがニコリと笑った。
高笑いするクロード王子。
ここは第3教練場。
学院の放課後、学院生と教員たちが集まった。
【グランディ! さっさと死ね!】
【ボコられるの楽しみすぎる~~っ!】
【ゴミ・クズ・カス!】
俺とアリシアを罵倒しまくる学院生たち。
完全なアウェイだ……
誰一人、俺たちを応援していないわけで。
相手はクロード王子、フェルド魔術師長、ユリウス騎士団長の3人。
対して、こちらは俺とアリシアの2人だ。
「グランディ。今、ここで土下座しろ。土下座すれば、許してやってもいいぞ」
「シドさん……」
アリシアが心配そうに俺を見る。
別に俺は勝っても負けてもどちらでもいい。
ただ――普通にモブとしての人生を送りたいだけだ。
だが……いろいろあって負けるわけにいかなくなった。
それはもちろん――
「グランディ! 早く殿下に負けなさいよね! あたしの足をぺろぺろするの…っ!」
ファルネーゼが俺に向かって叫ぶ。
(あいつ。【ぺろぺろ】とか自分で言って、恥ずかしくないのか……?)
どれだけ自分の足を舐めてほしいのか。
【グランディ! ファルネーゼ様の足をちゃんと舐めろよ!】
【そうよ! あたしもファルネーゼの足舐めたいわ!】
【すげえ羨ましい……!】
この学院の貴族は、変態しかいなのか……
(はあ……)
俺はため息をついた。
「シドさん! 頑張りましょうね!」
ぎゅっと強く、アリシアが俺の手を握る。
弾けるような、いい笑顔で。
まるでこれから楽しいことでもするような――
「では……クロード殿下、対、グランディ準男爵令息の決闘を始めます――」
審判を務める教員が、右手を振り上げる。
「グランディ。手加減してやるよ……」
フェルド魔術師長が、【不死鳥の杖】を取り出す。
歴代の学院魔術師長に与えられる、魔力を増大させる魔道具だ。
「ふ……っ! グランディ。瞬殺する」
ユリウス騎士団長が、【王者の剣】を鞘から抜く。
「クロード。お前は何もしなくていい。俺とユリウスがいれば、グランディごとき簡単に倒せる」
フェルドが俺を鼻で笑いながら言う。
「フェルドの言う通りだ。わざわざ王族のクロードが出なくても大丈夫だ」
メガネを上げながら、クールに言うユリウス。
「そうだな。2人に任せよう」
クロード王子は腕を組んで、後ろに下がる。
「――決闘、開始!」
決闘がスタートした。
「ふふ……グランディ。かかってこいよ! 最初の一発ぐらい、殴らせてやるよ……っ!」
フェルド魔術師長が、俺をあざ笑う。
それから不死鳥の杖を、地面に突き刺した。
(えらく余裕があるんだな……)
「よし……あれを使うか」
「はい……! シドさん!」
アリシアはアイテムボックスから、【聖なる杖】を取り出す。
「はっはっは……! なんだそりゃ……? どこの安物の杖だ? そんなもので俺に勝てるとでも?」
聖なる杖を見て、高笑いするフェルド。
(そうか! クロードたちは聖なる杖を知らないんだ……)
聖なる杖は、シナリオの終盤で手に入る、主人公専用武器。
だからクロードたちは、聖なる杖の存在さえ知らないわけで。
「いいのか? 不死鳥の杖を持たなくて?」
俺は一応、フェルド魔術師長に聞いてみる。
不死鳥の杖は、フェルド魔術師長の専用装備。
装備すれば、魔法攻撃力と魔法防御力を強化できる。
もちろん、聖なる杖の魔力強化効果には全然及ばないが……
「はあ? 準男爵ごとき雑魚に、杖の強化なんて要らねえんだよ!」
アリシアは主人公だ。
アリシアはプレイヤーから、「公式チート」と呼ばれる。
それは、聖なる杖を装備できるのが、アリシアしかいないからだ。
聖なる杖を装備したアリシアは、ラスボス以外はワンパンで倒すほど強化される。
しかも、アリシアだけでなく、味方全員が一気に強化されるのだ。
事実上、聖なる杖をゲットした時点で、このゲームは「終了」する……
「そうか……。本当にいいんだな?」
最後に、俺はもう一度、フェルド魔術師長に問う。
「見苦しいぞ! グランディ! さっさとかかってこい……っ!」
フェルド魔術師長はキレる。
(あまりやりすぎると、俺がいじめるみたいになるし……)
聖なる杖の力を一度も試していないから、かなり手加減しないと――
でも手加減って、どうやってやれば……?
「……チっ! もう待てねえ! 死ね! グランディ!」
俺がいろいろ考えていると、痺れを切らしたフェルド魔術師長が、右手を掲げる。
「焼けろ。ファイアボール!!」
フェルド魔術師長の右手から、大きな火の玉が放たれる。
フェルド魔術師長は、このゲームでアリシアの次に魔力が多い。
魔法の威力は、使い手が有する魔力の量に比例する。
実際、フェルド魔術師長はゲームでもボス相手に「ダメージソース」となるキャラ。
迫り来るファイアボール。
「身体強化――【エンフォース】」
アリシアが俺に身体強化魔法をかけると……
――どおおおおおおんっ!
ファイアボールが俺に直撃する。
激しい炎に包まれる俺。
「ぎゃははは……! これで俺の勝ちだァ!!」
だがしかし――
(!? 全然、熱くない……!)
痛みさえまったく感じないから、たぶんノーダメージということだろう。ゲーム的に。
白い煙が少しずつ消えていくと――
「……なっ?! む、無傷だと……?」
フェルド魔術師長が、驚きの声を上げる。
俺も驚いた。
ノーダメージどころか、着ている服さえ燃えてない。
服にも、身体強化の効果が及んでいるのだろう。
(さすが公式チートだ……っ!)
【ウソだろ……ノーダメージかよ?】
【あり得ないわ……!】
【準男爵令息のはずなのに?!】
この世界の爵位は、魔力の強い順になっている。
準男爵は、最底辺の爵位だ。
観客の学院生たちが、驚くのも無理はない。
(どんだけチートなんだよ。主人公……!)
「よかったです……! 全然効いてないみたいで!」
アリシアが喜ぶ。
「ありがとう。アリシアのおかげだよ」
実際、主人公チートの力だしな。
「あ、あり得ない……俺の魔法が効かないなんて……」
フェルド魔術師長は、顔が青ざめている。
「ふふ。じゃあ、シドさん。反撃しちゃいましょうか?」
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