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第1章
バカ王子を倒す作戦会議
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「さて、どうしようかな……?」
学院の授業が終わった後、俺はアリシアの部屋に誘われた。
1週間後に、【統率者の決闘】が行われる。
その作戦会議を行うとのことだ。
もしクロード王子に負けたら、学院を退学になってしまう……
はっきり言って、かなりヤバい状況だ。
「紅茶を入れました。あとクッキーも」
アリシアが紅茶とクッキーを出してくれた。
俺はカップの紅茶を飲む。
「ありがとう。おいしいよ」
「ふふ。ありがとうございます!」
(こんなことしてる場合じゃないのに……)
ニコニコ笑うアリシアを見て、俺の緊張が解けていく。
紅茶のリラックス効果か、なんだか暖かい気持ちになってくる。
「……やっぱり、あそこに行くしかないか」
「解決策があるんですね! さすがシドさん……っ!」
アリシアが手を叩いて喜ぶ。
もともとこうなったのはアリシアが俺を推薦したせいだが、こんなに笑顔で喜ばれると俺は悪い気はしなかった。
「それで、あそこって言うのはどこですか?」
キラキラした目で、俺の顔を覗き込むアリシア。
俺が言う「あそこ」とは――ダンジョンのことだ。
実は、この学院の地下にダンジョンがある。
原作では、物語の後半に入ることになるダンジョンだ。
そして学院ダンジョンには、主人公専用装備である【聖なる杖】が眠っている。
聖なる杖は、主人公――つまり聖女であるアリシアだけが装備できる。
味方全体のステータスを強化できる【軍勢魔法】の効果がついている。
これがかなりのチート効果で、レベルが低くても聖なる杖のバフがあれば、終盤の敵相手でも無双できる。
ただし、問題は――ダンジョンボスのアンデット・キングを倒さないといけないことだ。
強さはAランクであり、厄介なゾンビ系のモンスター。
だが……勝てないことはない。
策はちゃんとある。
あるアイテムを「大量」に使えば――
「アリシア。この学院の地下に、ダンジョンがある。そこを攻略したいと思う」
「えっ? 学院の下にダンジョンが……?!」
アリシアがひどく驚く。
無理もない反応だ。
原作のシナリオでは、後半になってやっと入れるダンジョンだからだ。
この学院は、もともとは初代聖女【ジャンヌ・ダルク】が設立した学校。
魔王が復活した時に備えて、聖女の資質がある者に武器を残した。
それが聖なる杖と言うわけだ。
この情報は、ジャンヌを女神として祭る【聖女教会】の大司祭に教えてもらう。
しかもこの情報は、聖女教会に敵対する邪教徒たちを倒した報酬だ。
だから物語の序盤では当然、アリシアも攻略対象たちも知らない。
「アリシア……結界魔法は使えるか?」
「使えます。持続時間は短いですが……」
「よかった。使えるならそれで十分だ」
HPも防御力も低い俺たちがアンデット・キングの攻撃を受ければ、100%ワンパンであの世逝きだ。
だから俺の策には、結界魔法は必須だ。
「あと、貯金はいくらある?」
「貯金ですか……?」
アリシアが怪訝な顔をする。
「ああ。実はアイテムをたくさん買う必要があって」
「何を買うのです?」
「聖水だ」
アンデット・キングはゾンビ系のモンスター。
弱点は聖属性魔法だ。
アリシアは聖属性魔法を使えるが、まだアンデット・キングを仕留められる威力がない。
要するに、火力不足だ。
だが、聖水をアンデット・キングにぶっかければ、ダメージを加算できる。
(なるべく多く聖水を買いたい。何が起こるかわからないからな……)
他のモンスターとのエンカウントを避けつつ、なんとかアンデット・キングのところまでたどり着く。
もしアンデット・キングを倒せれば、経験値も大量に入って一気にレベルアップもできる。
「二人のお金で、できるだけ多く聖水を買おう」
「わかりました……あたし、勝つためなら何でもします!」
ふんすっと、アリシアがガッツポーズする。
「うん。絶対に勝とう」
正直、勝てる可能性は低いと言わざるを得ない。
冷静に考えれば、準男爵令息が王子殿下に勝てるわけがない。
貴族の爵位は魔力の強さで決まっているからだ。
もし賭けをするなら、誰でもクロード王子に賭けるだろう。
しかし、薄い可能性だけど勝機はある。
「やるだけやってみよう……っ!」
「はい! シドさん! 2人の共同作業、すっごおおおく嬉しいです! 幸せです!」
アリシアがぴょんぴょん跳ねる。
「共同作業……?」
この絶望的状況に、ふさわしくない言葉だ。
まるで恋人同士の男女が使うような言葉だし……
「はい! シドさんとあたしの、初めての共同作業です! 一緒にバカ王子をボコりましょう!」
「初めての」をやたら強調して言うアリシア。
(いろいろ違和感があるけど、まあいいか……)
「おう……!」
★
【アリシア視点】
あたしの部屋で「作戦会議」をした後、シドさんは男子寮へ帰った。
あたしは泊っていくように言ったんだけど、シドさんは顔を真っ赤にして断った。
「シドさんとなら同じベッドで寝てもいいのに……」
もちろんそれ以上のことも、あたしはとっくにOKだ。
(シドさんと、初めての共同作業だ……)
シドさんと2人でダンジョン攻略できるなんて、すごく嬉しい。
もし死ぬことになったとしても、シドさんと死ねるなら本望だ。
「作戦会議のシドさん……本当にカッコよかったな」
学院の地下にダンジョンがあることも、アンデット・キングに聖水が有効なことも、シドさんは知っていた。
シドさんはきっと、実力を隠していたに違いない。
人知れず、影で努力するタイプだ。
(あたしの見込んだ通りだ……)
ファルネーゼ様に言い返す姿を見た時、「この人には何かある!」とピンっと来た。
普通の人にはない、特別なものを持っていると――
まるで別の世界から来た人のような気がする……
「さすがにそれはないか」
うん。まさか異世界から来たなんて、そんなことないよね……っ!
あり得ない、あり得ない。
(そろそろお風呂入ろう……)
バカ王子に触れられたところをよく洗わないといけない。
(すっごく気持ち悪かった……)
シドさん以外の男性に触れられるなんて、絶対に無理。
バカ王子の「汚れ」をお風呂でしっかり落とさなくちゃ……っ!
「……シドさん。あたしが命に代えても、勝利に導きます!」
シドさんへの忠誠を、あたしは固く誓うのだった。
学院の授業が終わった後、俺はアリシアの部屋に誘われた。
1週間後に、【統率者の決闘】が行われる。
その作戦会議を行うとのことだ。
もしクロード王子に負けたら、学院を退学になってしまう……
はっきり言って、かなりヤバい状況だ。
「紅茶を入れました。あとクッキーも」
アリシアが紅茶とクッキーを出してくれた。
俺はカップの紅茶を飲む。
「ありがとう。おいしいよ」
「ふふ。ありがとうございます!」
(こんなことしてる場合じゃないのに……)
ニコニコ笑うアリシアを見て、俺の緊張が解けていく。
紅茶のリラックス効果か、なんだか暖かい気持ちになってくる。
「……やっぱり、あそこに行くしかないか」
「解決策があるんですね! さすがシドさん……っ!」
アリシアが手を叩いて喜ぶ。
もともとこうなったのはアリシアが俺を推薦したせいだが、こんなに笑顔で喜ばれると俺は悪い気はしなかった。
「それで、あそこって言うのはどこですか?」
キラキラした目で、俺の顔を覗き込むアリシア。
俺が言う「あそこ」とは――ダンジョンのことだ。
実は、この学院の地下にダンジョンがある。
原作では、物語の後半に入ることになるダンジョンだ。
そして学院ダンジョンには、主人公専用装備である【聖なる杖】が眠っている。
聖なる杖は、主人公――つまり聖女であるアリシアだけが装備できる。
味方全体のステータスを強化できる【軍勢魔法】の効果がついている。
これがかなりのチート効果で、レベルが低くても聖なる杖のバフがあれば、終盤の敵相手でも無双できる。
ただし、問題は――ダンジョンボスのアンデット・キングを倒さないといけないことだ。
強さはAランクであり、厄介なゾンビ系のモンスター。
だが……勝てないことはない。
策はちゃんとある。
あるアイテムを「大量」に使えば――
「アリシア。この学院の地下に、ダンジョンがある。そこを攻略したいと思う」
「えっ? 学院の下にダンジョンが……?!」
アリシアがひどく驚く。
無理もない反応だ。
原作のシナリオでは、後半になってやっと入れるダンジョンだからだ。
この学院は、もともとは初代聖女【ジャンヌ・ダルク】が設立した学校。
魔王が復活した時に備えて、聖女の資質がある者に武器を残した。
それが聖なる杖と言うわけだ。
この情報は、ジャンヌを女神として祭る【聖女教会】の大司祭に教えてもらう。
しかもこの情報は、聖女教会に敵対する邪教徒たちを倒した報酬だ。
だから物語の序盤では当然、アリシアも攻略対象たちも知らない。
「アリシア……結界魔法は使えるか?」
「使えます。持続時間は短いですが……」
「よかった。使えるならそれで十分だ」
HPも防御力も低い俺たちがアンデット・キングの攻撃を受ければ、100%ワンパンであの世逝きだ。
だから俺の策には、結界魔法は必須だ。
「あと、貯金はいくらある?」
「貯金ですか……?」
アリシアが怪訝な顔をする。
「ああ。実はアイテムをたくさん買う必要があって」
「何を買うのです?」
「聖水だ」
アンデット・キングはゾンビ系のモンスター。
弱点は聖属性魔法だ。
アリシアは聖属性魔法を使えるが、まだアンデット・キングを仕留められる威力がない。
要するに、火力不足だ。
だが、聖水をアンデット・キングにぶっかければ、ダメージを加算できる。
(なるべく多く聖水を買いたい。何が起こるかわからないからな……)
他のモンスターとのエンカウントを避けつつ、なんとかアンデット・キングのところまでたどり着く。
もしアンデット・キングを倒せれば、経験値も大量に入って一気にレベルアップもできる。
「二人のお金で、できるだけ多く聖水を買おう」
「わかりました……あたし、勝つためなら何でもします!」
ふんすっと、アリシアがガッツポーズする。
「うん。絶対に勝とう」
正直、勝てる可能性は低いと言わざるを得ない。
冷静に考えれば、準男爵令息が王子殿下に勝てるわけがない。
貴族の爵位は魔力の強さで決まっているからだ。
もし賭けをするなら、誰でもクロード王子に賭けるだろう。
しかし、薄い可能性だけど勝機はある。
「やるだけやってみよう……っ!」
「はい! シドさん! 2人の共同作業、すっごおおおく嬉しいです! 幸せです!」
アリシアがぴょんぴょん跳ねる。
「共同作業……?」
この絶望的状況に、ふさわしくない言葉だ。
まるで恋人同士の男女が使うような言葉だし……
「はい! シドさんとあたしの、初めての共同作業です! 一緒にバカ王子をボコりましょう!」
「初めての」をやたら強調して言うアリシア。
(いろいろ違和感があるけど、まあいいか……)
「おう……!」
★
【アリシア視点】
あたしの部屋で「作戦会議」をした後、シドさんは男子寮へ帰った。
あたしは泊っていくように言ったんだけど、シドさんは顔を真っ赤にして断った。
「シドさんとなら同じベッドで寝てもいいのに……」
もちろんそれ以上のことも、あたしはとっくにOKだ。
(シドさんと、初めての共同作業だ……)
シドさんと2人でダンジョン攻略できるなんて、すごく嬉しい。
もし死ぬことになったとしても、シドさんと死ねるなら本望だ。
「作戦会議のシドさん……本当にカッコよかったな」
学院の地下にダンジョンがあることも、アンデット・キングに聖水が有効なことも、シドさんは知っていた。
シドさんはきっと、実力を隠していたに違いない。
人知れず、影で努力するタイプだ。
(あたしの見込んだ通りだ……)
ファルネーゼ様に言い返す姿を見た時、「この人には何かある!」とピンっと来た。
普通の人にはない、特別なものを持っていると――
まるで別の世界から来た人のような気がする……
「さすがにそれはないか」
うん。まさか異世界から来たなんて、そんなことないよね……っ!
あり得ない、あり得ない。
(そろそろお風呂入ろう……)
バカ王子に触れられたところをよく洗わないといけない。
(すっごく気持ち悪かった……)
シドさん以外の男性に触れられるなんて、絶対に無理。
バカ王子の「汚れ」をお風呂でしっかり落とさなくちゃ……っ!
「……シドさん。あたしが命に代えても、勝利に導きます!」
シドさんへの忠誠を、あたしは固く誓うのだった。
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