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第1章
グランディに洗脳されているんだ…っ! クロード視点
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【クロード視点】
「アリシア……どうしてグランディの味方に……?」
放課後、わたしはアリシアを学院の屋上に呼び出した。
どうしても納得いかなかったからだ。
(アリシアはグランディに操られているに違いない……)
わたしのような「完璧な人間」の味方にならないことはあり得ない。
絶対にあり得ない……
だから、アリシアをグランディの「洗脳」から救い出せないといけない――
「クロード殿下……いったい何の用ですか? あたしはシドさんのところに行かないといけないのですが」
アリシアはとても不満げな表情をしている。
「アリシア。どうしてキミはグランディのチームに入った……?」
「はあ……そのことですか……」
やれやれと、アリシアはため息をついた。
「シドさんは、あたしをファルネーゼ様から助けてくれました。みんなが見て見ぬフリをする中で、シドさんだけがあたしを助けてくれたんです。自分の身も顧みずに……」
「そうか。アリシアは、恩返しのためにグランディに肩入れしているのだな?」
「ええ。恩返しもありますが……それ以上に――」
アリシアは頬を赤く染める。
(なんだ? この反応は……?)
「シドさんはすごく、すごく男性として魅力的なんです。かっこよくて仕方ないというか……」
「な……グランディが魅力的?!」
グランディは、お世辞にも「イケメン」とは言えない。
爵位だって、貴族の底辺の準男爵だ。
それに、学院の成績も平凡そのものだ。
クラスでも「空気」であり、ただの「モブ」にすぎないはず……
「ぐ、グランディのどこが魅力的なんだ……?」
「えっ? 殿下。わからないんですか?」
驚いているわたしと対照的に、アリシアはきょとんした顔をする。
まるで「当たり前のこと」を改めて聞かれたみたいに——
「シドさんは……ファルネーゼ様に対しても、恐れずに言い返しました。みんながファルネーゼ様を怖がって何も言えない中で、果敢に正しいことを言ったのです。その姿はまるで【勇者様】そのものです……っ!」
「グランディが【勇者】だと……?」
わたしは思わず聞き返してしまう。
勇者は、かつて魔王を倒したと言われる英雄。
そして王族は、勇者の血を引いている。
だから【勇者】と呼ばれるなら、グランディよりわたしがふさわしいはずなのに……っ!
「ええ。勇ましく敵と戦っていますから。今も、圧倒的に強い殿下と戦おうとしています。殿下は、シドさんと同じことができますか?」
「ぐぬぬ……。ファルネーゼのいじめのことなら、わたしも止めようとして——」
「しかし、実際にあたしを助けてくれたのは、殿下ではなくシドさんでした。それは紛れもない事実です」
「く……っ!」
ファルネーゼを止めようとしたが、グランディに先を越されてしまったのだ。
だからわたしだって、本当にいじめを止めようとしたのに……
「もうよろしいですか? あたしはシドさんと作戦を練らないといけないので——」
アリシアはイラついた声を出す。
「ま、待ってくれ! 本当にグランディのチームでいいのか? クラスメイト全員を、敵に回すことになるんだぞ……」
「それが何か?」
涼しい顔で言うアリシア。
「いや、だから……わたしはアリシアを助けられるんだ。今ならキミをわたしのチームに入れることも——」
「お断りします。わたしはずっと、シドさんと一緒にいます。シドさんと一緒に、必ず殿下に勝ちますから」
アリシアはキッパリと、わたしの提案を断る。
それどころか、勝利宣言までした。
「ま、待て……。わたしはアリシアを——」
「シドさんが待ってるので」
アリシアは去って行った。
(ダメだ……早くなんとかしないと……っ!)
……確信した。
きっとグランディに、洗脳されているに違いない。
アリシアがわたしの助けを拒むなど、どう考えてもおかしいからだ。
「アリシア……必ずキミを悪から助け出すからな!」
「アリシア……どうしてグランディの味方に……?」
放課後、わたしはアリシアを学院の屋上に呼び出した。
どうしても納得いかなかったからだ。
(アリシアはグランディに操られているに違いない……)
わたしのような「完璧な人間」の味方にならないことはあり得ない。
絶対にあり得ない……
だから、アリシアをグランディの「洗脳」から救い出せないといけない――
「クロード殿下……いったい何の用ですか? あたしはシドさんのところに行かないといけないのですが」
アリシアはとても不満げな表情をしている。
「アリシア。どうしてキミはグランディのチームに入った……?」
「はあ……そのことですか……」
やれやれと、アリシアはため息をついた。
「シドさんは、あたしをファルネーゼ様から助けてくれました。みんなが見て見ぬフリをする中で、シドさんだけがあたしを助けてくれたんです。自分の身も顧みずに……」
「そうか。アリシアは、恩返しのためにグランディに肩入れしているのだな?」
「ええ。恩返しもありますが……それ以上に――」
アリシアは頬を赤く染める。
(なんだ? この反応は……?)
「シドさんはすごく、すごく男性として魅力的なんです。かっこよくて仕方ないというか……」
「な……グランディが魅力的?!」
グランディは、お世辞にも「イケメン」とは言えない。
爵位だって、貴族の底辺の準男爵だ。
それに、学院の成績も平凡そのものだ。
クラスでも「空気」であり、ただの「モブ」にすぎないはず……
「ぐ、グランディのどこが魅力的なんだ……?」
「えっ? 殿下。わからないんですか?」
驚いているわたしと対照的に、アリシアはきょとんした顔をする。
まるで「当たり前のこと」を改めて聞かれたみたいに——
「シドさんは……ファルネーゼ様に対しても、恐れずに言い返しました。みんながファルネーゼ様を怖がって何も言えない中で、果敢に正しいことを言ったのです。その姿はまるで【勇者様】そのものです……っ!」
「グランディが【勇者】だと……?」
わたしは思わず聞き返してしまう。
勇者は、かつて魔王を倒したと言われる英雄。
そして王族は、勇者の血を引いている。
だから【勇者】と呼ばれるなら、グランディよりわたしがふさわしいはずなのに……っ!
「ええ。勇ましく敵と戦っていますから。今も、圧倒的に強い殿下と戦おうとしています。殿下は、シドさんと同じことができますか?」
「ぐぬぬ……。ファルネーゼのいじめのことなら、わたしも止めようとして——」
「しかし、実際にあたしを助けてくれたのは、殿下ではなくシドさんでした。それは紛れもない事実です」
「く……っ!」
ファルネーゼを止めようとしたが、グランディに先を越されてしまったのだ。
だからわたしだって、本当にいじめを止めようとしたのに……
「もうよろしいですか? あたしはシドさんと作戦を練らないといけないので——」
アリシアはイラついた声を出す。
「ま、待ってくれ! 本当にグランディのチームでいいのか? クラスメイト全員を、敵に回すことになるんだぞ……」
「それが何か?」
涼しい顔で言うアリシア。
「いや、だから……わたしはアリシアを助けられるんだ。今ならキミをわたしのチームに入れることも——」
「お断りします。わたしはずっと、シドさんと一緒にいます。シドさんと一緒に、必ず殿下に勝ちますから」
アリシアはキッパリと、わたしの提案を断る。
それどころか、勝利宣言までした。
「ま、待て……。わたしはアリシアを——」
「シドさんが待ってるので」
アリシアは去って行った。
(ダメだ……早くなんとかしないと……っ!)
……確信した。
きっとグランディに、洗脳されているに違いない。
アリシアがわたしの助けを拒むなど、どう考えてもおかしいからだ。
「アリシア……必ずキミを悪から助け出すからな!」
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