乙女ゲーのモブに転生した俺、なぜかヒロインの攻略対象になってしまう。えっ? 俺はモブだよ?

水間ノボル🐳

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第1章

アイツを絶対に許さない……! ファルネーゼ視点

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【ファルネーゼ視点】

「シド・フォン・グランディ……絶対に許さないわ」

 あたしはファルネーゼ・フォン・ハンシュタイン。
 侯爵令嬢だ。
 社交パーティーの後、あたしは寮の部屋で怒りに震えていた。

「アイツを退学に追い込んでやるわ……っ!」

 あたしを「ゴミ」だと言った。
 許せるわけがない。

 ……初めてだった。
 あたしに真剣に刃向かってきたのは。
 上の爵位に公爵があるけど、公爵は王族の親戚がなれる。
 つまり、王族を除く貴族の中では最高位だ。
 小さい頃からあたしは、人を従えていた。
 領土は貴族の中で一番大きいし、屋敷はすごく広いし、使用人はたくさんいる。
 エルフや獣人の奴隷だって持っている。
 それに、あたしはすごくかわいい。
 間違いなくかわいい美少女。
 しかも、成績は常にトップだった。
 誰もがあたしを称賛してきた。

 なのに――

 「準男爵ごときがあたしに逆らうなんて……」

 貴族の底辺のくせに……っ! 

 (あたしを罵ったことを、後悔させてやるわ)

「紅茶! 早くしなさいっ!」
「はい……っ! お嬢様!」

 獣人奴隷のセリスを呼びつける。

「まったくグズな犬ね……さっさとしなさいよ!」
「す、すみません……」

 セリスはあたしが子どもの頃から専属の奴隷だ。
 白い犬耳と、もふもふの尻尾がスカートから覗ける。
 見た目は(あたしほどじゃないけど)かわいい。
 だけど、犬は厳しくしつけないといけない。

「ふう……アンタは昔からバカなんだから」
「はい……お嬢様……」

 しおらしく、頭を下げるセリス。
 あたしが長い時間をかけて「わからせて」きたから、セリスは従順だ。
 あたしの命令なら、どんなことでもする。
 ウンコを喰えと言えば、たぶん喰うだろう。

 (あ、いいこと思いついた……っ!)

 震えながら怯えるセリスを見て、あたしは気づいた。

「グランディをあたしの犬にすればいいんだわ」

 ただ退学にするだけじゃ、気が済まない。
 グランディを……あたしを犬にしよう。
 あたしの奴隷にするのだ。

「紅茶がぬるい……っ!」
「きゃああああっ! 熱い!」

 セリスにカップを投げつける。 
 熱い紅茶をセリスにぶちまけてやった。
 いつもならセリスをいじめたらスッキリするのに、心が晴れない。

 ――今までこんなことなかった。
 みんなあたしに服従してきた。
 アイツだけが、あたしにキレてきた。

 (誰かにキレれたのは初めてだ……)

 お父様にもお母様にも、叱られたことなかった。
 生まれて初めての経験……
 ちょっとドキドキしたりなんて――あり得ない。

 (絶対に許さないんだからね! グランディ……っ!)


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