1 / 30
プロローグ ◇◇◇
01 執行聖女
しおりを挟む「あなたの悪行は、ここまでよ」
月明りの下、王宮の中庭で、逃げてきた男へ、私は冷たく言った。
男は、足を止め、肩で息をしている……コイツは小者だな。
「きつい顔の女だな、誰だお前? 道を開けないと、女であっても、痛い目を見るぜ」
男の服装は真っ黒だ……真っ黒は、月明りの下では逆に目立つ。緑あふれる庭から逃げるつもりなら、迷彩色や深い緑色にするべきだ。
「国王専属メイド、執行聖女よ」
私の名乗りに、刺客の表情が強張る。
執行許可証を持つ執行聖女は、犯罪者の刑を裁判を経ずに執行することを、大司教様から許された特別な人間だからだ。
一見すると、紺色のロングドレス風メイド服、白色のメイドエプロンにプリム、メイドグローブと、どこから見ても王宮で働くメイドだ。
月光に輝く金髪、青い瞳に、平均的な顔立ち……貴族のような美人ではないが、まぁまぁだと思う。
刺客の後ろから、護衛兵一人が追い付いてきた。
「気をつけろ! そいつは同僚を一人、手にかけた」
物騒な話であるが、だからこそ私が出てきた。
「さて、臓器密売の話を聞かせてもらおうかしら」
この刺客には、臓器密売をしているというウワサがある。こいつは、中身まで真っ黒な犯罪者だ。
「臓器密売……知らねえな」
「では、依頼主の名前を聞かせてもらいましょうか」
「依頼主……知らねえな」
ん? この答え方は、なにかおかしい。まさか、操られているのか。
「貴方の名前は?」
「名前……知らねえな……俺は誰だ?」
この刺客は、記憶が無くなっている。強い魅了魔法をかけられたからだ……今夜も無駄足だったか。
「うぉ~!」
突然、刺客が吠え出した。身体増強剤を使ったのか!
体つきが猛獣のように大きくなり、私に襲い掛かってきた。
「私のほうが早かったようね」
刺客の足元で、六芒星が輝く。すでに、こいつが人間であった時に、私は魔法陣を発動させていた。
刺客の体中の骨が砕け、断末魔も上げられないまま、肉の塊へと変化していく。
「痛みが強く長いほど、貴方の罪は浄化され、天界へと導かれます」
執行許可証を持つ執行令嬢は、厳しい修行を経て、罪人を天界へ送る力を得たのである。
「お幸せに」
私が最後の祈りを捧げると、肉の塊はチリとなって天に昇っていった。
1
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
必要なくなったと婚約破棄された聖女は、召喚されて元婚約者たちに仕返ししました
珠宮さくら
ファンタジー
派遣聖女として、ぞんざいに扱われてきたネリネだが、新しい聖女が見つかったとして、婚約者だったスカリ王子から必要ないと追い出されて喜んで帰国しようとした。
だが、ネリネは別の世界に聖女として召喚されてしまう。そこでは今までのぞんざいさの真逆な対応をされて、心が荒んでいた彼女は感激して滅びさせまいと奮闘する。
亀裂の先が、あの国と繋がっていることがわかり、元婚約者たちとぞんざいに扱ってきた国に仕返しをしつつ、ネリネは聖女として力を振るって世界を救うことになる。
※全5話。予約投稿済。
貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!
ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。
その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。
ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。
それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。
そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。
※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる