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5-2話 婚約 侯爵になる
しおりを挟む「第二王子バート様が、お見合いをします」
秋も深まった頃、屋敷でお母様とディナー中、お母様が切り出しました。
お母様は、王宮の状況を話しながら、私の反応を見ています。
「お相手は、セレーナ嬢です」
やはりですか、少しガッカリしました。
「フランは、感情を顔に出し過ぎですね」
お母様が笑います。
「第二王子は、貴女との結婚が噂されていましたから、ガッカリするのも仕方ないですね」
私は、第一王子を狙っていて、順調に距離を縮めているはずなのに、第二王子の事が気になります。
「今回のお見合いには、貴族の皆さんが困惑していて、その調整で伯爵様の帰りが遅いのです」
お母様の説明をまとめると
隣国は、13年前のクーデターで軍事政権になり、国民が苦しんでいる。
軍事政権を倒すため、本来の王妃様を中心にしたクーデターが起こっている。
私たちの王国は、本来の王妃様を支援している。
「セレーナ嬢は、隣国の王女との話です」
これには、驚きました。
現状を整理します。
彼女は、隣国の王女と同じ栗色の髪であり、さらに王家の指輪を持っている。
伯爵が、亡命してきたセレーナ嬢を匿い、今回、養女にした。
第一王子の結婚相手は、友好国の王女との予言がある。
第二王子の結婚相手は、聖女との予言がある。
私は、聖女見習いで、聖女ではない。
「第一王子様と、第二王子様は、栗色の髪の女性を気にしていました。セレーナ嬢がその相手だったのですね」
なにか、胸のあたりがモヤモヤしてしまいます。
私は、栗毛のカツラなら、持ってます。
もし、私が栗毛になったら、第一王子は私だけを見てくれるのでしょうか。
「私が、金髪の男性が気になっているのと同じかな」
私は、なぜか、金髪の男性が以前から気になっています。
昔、幼い私を野党から守るため、勇敢に立ち向かった、あの金髪の少年の姿が、私は忘れられません。
「あれ? それなら、セレーナ嬢は、第一王子様と結婚するのではありませんか」
「その通りなのですが、貴族の派閥が優先されました」
お母様が、説明を続けます。
第一王子は、辺境伯が後ろ盾です。
第二王子は、セレーナ嬢の養父の伯爵が後ろ盾です。
第三王子は、私のお父様が後ろ盾になっています。
「セレーナ嬢は、派閥の結束を高めるために、第二王子を選びました」
「そうなんですか、でも、あのロペス伯爵なら、セレーナ嬢を王太子妃にしたいはずです」
あの伯爵は、嫌な奴です。
「フランは、貴族らしくなってきましたね」
お母様が笑います。
これは、褒めてないですね。
「嵐が来ますよ」
お母様が言います。
窓の外は、雨が降ってきました。
夜遅く、お父様が帰って来ました。
「第二王子が、セレーナ様と婚約した」
決まりましたか、私に緊張が走ります。
「公表は、後日行う」
「もう一つ、セレーネ嬢の爵位が、侯爵になる」
これは、学園でも大騒ぎになる話題ですね。
「それからフラン、辺境伯が裏で動いている、何かが起こるぞ」
お父様の顔は緊張しています。
お母様は考えています。これは、何かを画策している顔です。
◇
ここは王室です。初めて入りました。
応接室や謁見の間とは、違うようです。
王室は、イメージ的にはギンギン・ギラギラだと思っていましたが、落ち着いた感じで、高価な調度品でまとめられた執務室です。
今朝、私に、お父様と一緒に登城するよう、王命が来ました。
お父様とお母様は、予想していたようです。
私とお父様は立ったまま、執務用のイスに座ったままの国王から、話を聞きます。
「フラン女伯爵、第一王子のアレックスとお見合いをしてもらう」
国王の命令です。
以前なら、喜んで引き受けるところですが、今は違います。
理由を訊ねたいのですが、国王相手で、下手に口は開けません。
「お見合いは、承知いたしました」
代わりに、お父様が答えます。
「しかし、フランは、婿を取らないと、伯爵家が途切れてしまいます」
遠回しに抵抗します。
「伯爵家には、勘当した息子がいるだろ、探し出せ」
え? 初耳です。
「お前の妻は、すでに動いているぞ」
え? お母様が、先を読んでいたようです。
「フラン女伯爵を、侯爵とする」
「そして、フラン女侯爵を、第一王子の婚約者とする」
「以上だ」
国王が、話を打ち切りました。
決定だという事です。
お見合いもしないで、いきなり婚約です。
学園が大騒ぎになる予感がしますが、私の望みは達成されましたので、ひとまず良しとします。
◇
「今日は、青空が見れると思っていましたが……」
王宮からの帰り道、馬車から見える空は、黒く曇り、晩秋の冷たい雨が降り出しそうです。
(次回予告)
第一王子と婚約したフラン。次回は、とんでもない事が発覚!
恋のライバルのセレーナ嬢と、第一王子アレックス様がやらかします。
そして、私と、第二王子バート様の過去が、交差します。
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