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第七章 土曜

79 魔王降臨

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「失礼します、フランソワーズです」

 波乱続きの土曜だった。日が傾いてきているが、私はベールやメガネで、瞳の色を隠そうとはしていない。

「入りなさい」

 コノハ様の声。ここは元女王の私室だ。意を決し、私室へ足を踏み出す。


「婚約おめでとう、フラン」

 サクラの可愛いけど能天気な声だ。私と同様に、学園の制服を着ている。

 私とクロガネ様は、女王コノハ様の私室に呼び出された。用件は、解っていた。サクラの件だ。


「まだ婚約契約書へのサインが終わっておりません、魔王様」

 サクラの姿になった王弟殿下の呪いを解いた時、サクラは、王弟殿下と魔王の二体に、分離したのだ。


「よそよそしいのは無し。私たちは親友でしょ」

 魔王……いや、サクラがふくれっ面になった。以前と変わらぬ可愛い顔だ。


「魔王の封印は解けたが、以前のような凶悪な存在ではない。これまでどおりの親友でいて大丈夫だ」

 元女王コノハ様が太鼓判を押してくれた。

「うん、大丈夫だよ」

 サクラの能天気な声だ。


「サクラは、闇に落ちる前の、聖女に戻ったことですか?」

「そうだよ」

 サクラは、学園の制服のズボンを少し下ろして、パンツを見せてくれた。

 小さく可愛い女性用の……いや、コンテスト用のビキニパンツだった。


「女性なのは、わかりましたが、聖女が、フィットネスのコンテストに出場するのですか?」

「フランも一緒に出場してみる?」

「私は、肌を出すのは……困ります」

 チラッとクロガネ様を見ると、後ろを向いていたので、クスッと笑ってしまった。


「聖女に戻ったサクラは、勇者への想いはどうなったの?」

「もう無いよ、断捨離だね」

 ケロリと、サクラが答えた。恋愛ってそういうものなの?


「もう百年も経って勇者は亡くなっているし、勇者の黒い宝石を受け継いだのは、そのクロガネだし……オレも新しい恋がしたい」

 オレ……言葉遣いが直っていない。どこが聖女なんだ?
 いやまて、「そのクロガネ」って、どういう意味だ?

「そこの勇者の子孫は、フランにあげるから」

 クロガネ様を指さし……王族を指差すな!


「約束、ゲンマンしよう」

 私とサクラは、勇者の黒い宝石を持つクロガネ様は私専用だと、ゲンマンした。


 サクラの説明によると、コノハ様、クロガネ様、ルナちゃんが勇者の血筋を受け継いでいるらしい。

 私は、僧侶の血筋を受け継いでいるらしいが、女神の祝福の方が強いみたい。そして、魔王を封印した勇者パーティーに、青緑や紫色の宝石を持っている者はいなかったらしい。


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