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第七章 土曜

77 新しい正妃

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「さて……もう一つ、発表する」

 罪人となった彼らが連れ出された後も、国王は続けた。


「ワシの専属メイド長を、正妃にする」

 謁見の間に、驚きの声は無かった。

 皆は、国王が、専属メイド長の娘を養女にした時から予想していたのであろう。
 しかも、その養女は、国王の血を継ぐ実の娘だったと、先ほどの聖女判定で明らかにされたのだから。


「そして、専属メイド長の娘を、ワシの実の娘として……ルナ次第なのだが、ワシを父親として認めてもらえるよう、努力していく」

 コノハ様の横に立っていたルナちゃんが、ビクッと少し動いたような気がした。


「この席は、貴女のものよ、新しい正妃」

 コノハ様が立ち上がり、席を専属メイド長にゆずった。

 専属メイド長は、座るのをためらっている。


 立ち上がったコノハ様は、国王よりも先に、自分の孫娘を抱きしめた。

 国王は、専属メイド長の手を取り、正妃のイスに座らせた。
 気のせいか、国王は、娘を抱きしめられず、寂しそうだ。


 コノハ様が、ルナちゃんの耳元で、何かささやいた。

 耳の良い私には聞こえた……「もういいのよ」と。


「お父さん……」

 ルナちゃんが、心を開いた。

 国王と、新しい王妃が立ち上がり、歩み寄った彼女を抱きしめた。


 国王は、やっと自分の娘に触れることができた。国王が涙を見せることは無いはずだが、瞳が潤んでいる。


 あれ? 私の横に立つ王弟殿下の目に、涙が……なんで?


「クロガネ、兄は子に恵まれたのだ。幼い頃の誓いは、もういいだろ、これからは自由に生きろ」

 コノハ様が、王弟殿下に声をかけた。


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