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第七章 土曜

76 ざまぁ

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「これから、この王国の将来に関する重大な事実を発表する」

 女王コノハ様が宣言した。

 謁見の間で、国王はいつもの玉座だが、正妃、側妃が座るイスがなぜか無い。二人は他の貴族と同じように、国王の前に立って並んでいる。

 国王の横には、女王コノハ様が座り、その横に学園の制服を着たままのルナちゃんが立っている。

 友好国の聖女であるソフィアは、いない。

 なにか異常な事態が起こっていることは、見るだけでも分かる。


「先ほど、友好国の聖女ソフィアによる聖女判定が行われたが、今日の本当の目的は、貴族の血筋を調べることにあった」

 宝石が参加者から読み取ったデータは、血筋を調べるためのものだった。

「言い換えれば、その人間の父親と母親を明らかにしたのだ」

 室内が少しざわついた。いまさら何を調べたんだと、疑問の声だ。

「静まれ」

 コノハ様の一言で、室内が静まり返った。


「正妃よ……第一王子は、ワシの子ではないな」

 国王が、目の前に立つ正妃に問い詰めた。

「……」

 正妃は、うつむき、何も答えられなかった。


「第一王子は、筆頭侯爵夫妻の双子……その片割れであった。タロスはイライザと実の兄妹だな」

「どうしても、第一子が欲しかった……」

 正妃がやっと吐き出した言葉に、筆頭侯爵がうつむいた。


「正妃に離縁を申し渡し、軟禁を命じる」

 国王の決断だ。


「側妃よ……第二王子は、ワシの子ではないな」

 国王が、今度は側妃に問い詰めた。

「……」

 側妃は、既に泣いており、何も答えられなかった。


「第二王子は、次席侯爵夫妻の息子をもらい受けたのだな……生まれてすぐに亡くなったとされた赤子が、マズルカとして生きていたとは」

「どうしても、息子が欲しかった……正妃には負けたくなかった」

 側妃の泣きながら吐き出した言葉に、次席侯爵がうつむいた。


「側妃に離縁を申し渡し、軟禁を命じる」

 国王の決断だ。


「筆頭侯爵および次席侯爵。爵位をはく奪し、軟禁を命じる」

 二人とも、うつむいたままである。取り乱さない所は、派閥の長を務めてきただけのことはある。


 私と王弟殿下は、謁見の間の後ろに立っている。

 王弟殿下は正装で、腰に長剣を携えている。不測の事態に備えているような、少し怖い雰囲気だ。

「王弟殿下、軟禁だけでよろしいのですか?」

 私は小声で聞いた。

 王国を乗っ取るような重大な犯罪だ。軟禁に処すだけで、国民が納得するわけがない。


「あいつらは、貴族として、全員がプライドある最後を選ぶだろう」

「全員が……」

 王妃教育で習った……自分は正しかったと、ワザと斬り捨てられる最後……王弟殿下の長剣は彼らを斬り捨てるためのものだったのか。

 もう一つは、何もなかったように棺へ入るため、苦しみながら、この世から消えていく最後。

 軟禁を受け入れたという事は……


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