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第七章 土曜

72 筆頭侯爵令嬢の判定

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「そんなことより、わたくしの聖女判定はまだですか!」

 筆頭侯爵令嬢のイライザが、順番を待ちきれなくて、声を荒げ、聖女の泉の前へと出てきた。

 そんなことって、勇者の血筋は、王国にとって大事な話でしょ!


「わたくしは、この王国の聖女であり、王太子妃となる逸材です。この紫色の瞳が、なによりの証拠です」

 イライザが、自信たっぷりと、赤い宝石に手をかざした。

 赤い光が、黒い雲のように曇り、小さなイナズマが彼女の手に落ちた。

「痛い!」

 イライザが、手を押さえている。

「聖女のイナズマが、けがれ多い貴女を襲いました。もちろん、この令嬢は聖女ではありません」

 イライザが、うつむいた。人生で初めて挫折したような、そんな姿に見える。
 まさか、泣いている?


「これで最後でしょうか?」

 聖女のイナズマが怖くて、誰も手を挙げない。
 イライザが聖女でない事が判明すれば、この聖女判定の儀式の目的は果たせた。


「フランソワーズ、貴女も聖女判定を受けなさい」

 え? 予定外である。私の役目は、宝石による魔法の強化と魔力の補給であり、聖女判定には参加しない計画だったのに。

 実は、赤い宝石による聖女判定なんて、ウソである。令嬢の魔力と素質そして血筋……前世でいうステータスを見ているだけなのだ。

 しかし、女王コノハ様の指示である。断ることはできない。


 聖女ソフィアは、笑いをこらえている。この展開を面白がっているのだ。

 仕方ないので、前に出て、手をかざす。

 赤い光に変化はない。聖女ではないと言う事か……淡く期待していた私は、うつむいた。


「「うぉ!」」

 参加者が、何かに驚きの声を上げた。

 何事かと顔を上げると、泉の女神像が輝き、その光が、天まで駆け昇っているのが見えた。


「なんなの、この祝福あふれる力は!」

 聖女ソフィアまでもが驚いている。これは彼女の仕業じゃないの?

 まさか私?


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