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第六章 金曜

65 王弟殿下と親友

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「ただいま戻りました」

 王宮に戻り、王弟殿下の執務室に入った。
 ルナちゃんは、母親であるメイド長のところに行くというので、別れた。


「フラン、いつもどおり、サクラとして接してくれ」

 サクラは、そう言うが、まだ接しかたが分からない。
 目の前に立っているのは、見た目は親友のサクラ、でも、中身は王弟殿下らしい。

「ルナちゃんは、屋敷で弟と話して、落ち着きを取り戻しました……じゃない、取り戻したよ」

 屋敷での話し合いを報告……いや、雑談として話した。
 サクラは、ホッとしている。ルナちゃんを心配していたんだ。ちょっと嫉妬する。


「もうすぐ日が暮れます。フランソワーズ様、今日は王宮にお泊りになってはいかがです?」

 執務室には、いつもどおりマーキュリーさんが控えていた。彼女は、いつ休んでいるのだろう?

「そうか、私の部屋がもらえたんだ」

 第四の派閥の長として、執務室と寝室付きの私室を頂くことができた。
 今日の午前の話なのに、もう泊まれるのか。目じりが下がるほど、うれしい。

「独身の男女を、一緒の部屋で二人きりにすることは、出来ませんけど」

 マーキュリーさんは、何気なく言っているけど、絶対にサクラをけん制している。


「コンコン」扉がノックされ、マーキュリーさんが対応する。

「国王専属メイド長です。サクラ様、フランソワーズ様にお話があるようです。いかがいたしますか」

 きっと、ルナちゃんのことだ。サクラに目で合図する。

「通してくれ」


 執務室に入った専属メイド長は、奇麗なカーテシーをとった。ルナちゃんの奇麗なカーテシーは、やはり母親ゆずりだった。

 あれ? 王女の母親であるメイド長のほうが、私たちより爵位が高いはず……どうして、カーテシーをとったのだろう?

「お二人にお願いがあって、まいりました」

「待って下さい、メイド長は王女の母親ですので、私たちの前でカーテシーをとらないで下さい」

 あわてて、カーテシーを解くようにお願いした。これは、どうしたというんだ。


「私は、乳母として、ルナを育てたことになると思っています」

 え、政治的な配慮と言うやつか?

「王女を表立って支えるのは、お二人の力だと思います」

 私は第四の派閥の長として女王の後ろ盾となる。
 サクラは……まさか王弟陛下だと、メイド長にバレてる?

「ルナのことを、どうかよろしくお願い申し上げます」

 どうしよう? 目でサクラに助けを求めた。


「メイド長……貴女と国王の関係は、王弟殿下は気が付いていた。あのゴリラが、このまま黙っていると思うか?」

 メイド長は、何も答えない。

「貴女は国王を愛し、国王は貴女を愛した。そうだろ?」

 メイド長は、小さくうなずいた。

 ◇

「サクラは、王弟殿下の力で、メイド長を救えないの?」

 メイド長が去った後、メイド長が幸せになれる道はないのか、サクラに訊いてみた。

「王弟殿下は、呪いと戦っているため、動くことはできない……兄が自分で決めることだが、今さら三人目の妻か……婚姻の正当な理由が必要だが、今はそれがない」

 ルナちゃんは、王位継承権のない養女のままでいるのが、王国の安定のためには一番良いのか。

 でも、それでは、ルナちゃんの気持ちはどうなるの? 今夜は寝付けそうにない。


「明日の午後、友好国の聖女による『聖女判定』が行われる。王国の将来を左右するものだ」

 ん? サクラ、いまさら、どうしたの?

「友好国の聖女が現れるところに、必ず何かが起こる。彼女に付いたあだ名は『トラブルメーカー』だ」


「トラブルメーカーって、問題児?」

「友好国の聖女は、フラン以上のお転婆だという事だ」

 え? それって、私に失礼なんじゃない?


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