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第六章 金曜

58 王弟殿下と双子コーデ

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「サクラ様、あれほど下着には気を付けるよう、言ったでしょ!」

 王弟殿下の寝室に駆けつけた王弟殿下の侍女、マーキュリーさんが、観念したような顔で、サクラに怒っている。

「着替えの時は、必ず侍女に言うように、きつく申しましたよね!」

 怒っているが、これは私に対する配慮だ……チラチラと私を見ている。


「下着は、侍女が用意した物を着用すると、約束しましたよね」

「ビルダーパンツは下着ではない、競技用のコスチュームだ」


「屁理屈です」

 ごねるサクラを、マーキュリーさんが一喝した。

「女性物の下着は、履き心地が悪いんだ」

 サクラが、嫌そうな顔で言い訳をした。女性物の下着は、女性にフィットするように作られているのに……


「王弟殿下と下着を双子コーデ……二人は、愛し合っているという証拠ですね」

 私の頭の中では、驚きと、悲しみが渦を巻いている。

「いや、王弟殿下のパンツを履くような……二人は、そういう関係だったの?」

 思い切って、訊いてみた。もしそうなら、私は自分の幼い頃からの想いを、あきらめる必要がある。私が第一王子と結ばれるよりも、つらいけど。

「正直に言って、私は……兄さまを、あきらめるから」

 瞳に、大粒の涙が……耐えきれず、こぼれ落ちた。


「いや、違うんだ、誤解だ」

 サクラが取り乱している。隠さなくてもいいのに……きっと、彼女は私の気持ちに気が付いて、私を傷つけまいと、悩んでいるんだ。

「サクラ様、まずは、乾いたズボンを履いてください。その姿では、説得力がありません」

 侍女マーキュリーさんが、冷静に突っ込んだが、半目状態でサクラを軽蔑している。


「実は、オレは、女装したクロガネ……いや、違うな。呪われた王弟殿下だ」

 まずは、ズボンを履くのが先でしょ……え! サクラが王弟殿下? 何をとち狂ったことを言っているの。

 私も、半目状態でサクラを軽蔑した。


「異世界聖女を召喚する際、魔法陣の中に突き落とされ、上半身が、異世界の聖女の姿になったんだ!」

 はぁ~? 王弟殿下の寝室にシラケ鳥が飛んでいる、そんな変な空気になった。


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