56 / 80
第六章 金曜
56 平民
しおりを挟む
「先ほど、父のエメラルティー侯爵と、偶然に会いました」
王宮の中庭、聖女の泉の前で、サクラに先ほどの事を話す。
「屋敷に引き籠って、ストライキ中じゃなかったのか?」
「屋敷の中だとヒマだから、外に出て来たそうです」
サクラは意味が分からないと言う顔になったが、本当なので仕方がない。
エメラルティー侯爵の屋敷は、地下で王宮とつながっていることは、秘密だ。
「私は、これからどうなるのだろう」
自分の将来を悲観して、うつむいた。
「あのアレキサンドライト、たった二つの宝石で、納税は完了できた。エメラルティー家は侯爵のままだ」
「さらに、侯爵は、爵位返上の手続きなど、行っていなかった。伝言ゲームのように、報告内容が書き変わってしまったのだろう」
サクラは、良い報告を矢継ぎ早に話してくれた。先ほどまでの私だったら、喜んでいただろう。しかし、今は事情が変わった。
「今日の国王との謁見は、アレキサンドライトの話とは違うようだ」
「え?」
驚いて顔を上げる。
色の変わる宝石……アレキサンドライトの話じゃないの?
国王から褒められて、さっさと学園に帰る予定だったのに。
「フランは、侯爵令嬢のままなのに、それ以外の話には心当たりがない。だが、フランの周りには、嵐が起こる」
サクラは笑っているが、心配顔でもある。
「実は……父は、私を騒ぎから遠ざけようと、私は養子だったことにして、私を侯爵家から籍を外したと言っています」
「へ?」
サクラは、また、意味が分からないと言う顔になったが、本当なので仕方がない。
「そ、そうか、一代男爵を授与したのが、こんな所で役立つとは……どこまでがエメラルティー侯爵の作戦で、どこからが偶然なのか、オレには全く読めない」
たぶん、父は、いや、元の父は、何も考えていない。その場の直感で生きてきた貴族だ。
「フランソワーズ、こんな所にいたのですか」
この声は筆頭侯爵の令嬢……イライザが、私を見つけて、走り寄ってきた。
令嬢たるもの、慌てて走るものではないと、教わらなかったのか。私も遅刻しそうで走ったけど、あれは学園だし、ここは王宮だ。
「わたくしのハーレム計画が、お父様から反対されました、どうしてくれるのザマスか!」
イライザの口癖が出ている。これは、今まで以上に、怒り心頭のようだ。
「フランソワーズのせいザマス!」
「あ!」
不意を突かれた。イライザから押され、聖女の泉に、落ちる……
また、泉に落ちるのか……あぁ、今日も厄日だ!
王宮の中庭、聖女の泉の前で、サクラに先ほどの事を話す。
「屋敷に引き籠って、ストライキ中じゃなかったのか?」
「屋敷の中だとヒマだから、外に出て来たそうです」
サクラは意味が分からないと言う顔になったが、本当なので仕方がない。
エメラルティー侯爵の屋敷は、地下で王宮とつながっていることは、秘密だ。
「私は、これからどうなるのだろう」
自分の将来を悲観して、うつむいた。
「あのアレキサンドライト、たった二つの宝石で、納税は完了できた。エメラルティー家は侯爵のままだ」
「さらに、侯爵は、爵位返上の手続きなど、行っていなかった。伝言ゲームのように、報告内容が書き変わってしまったのだろう」
サクラは、良い報告を矢継ぎ早に話してくれた。先ほどまでの私だったら、喜んでいただろう。しかし、今は事情が変わった。
「今日の国王との謁見は、アレキサンドライトの話とは違うようだ」
「え?」
驚いて顔を上げる。
色の変わる宝石……アレキサンドライトの話じゃないの?
国王から褒められて、さっさと学園に帰る予定だったのに。
「フランは、侯爵令嬢のままなのに、それ以外の話には心当たりがない。だが、フランの周りには、嵐が起こる」
サクラは笑っているが、心配顔でもある。
「実は……父は、私を騒ぎから遠ざけようと、私は養子だったことにして、私を侯爵家から籍を外したと言っています」
「へ?」
サクラは、また、意味が分からないと言う顔になったが、本当なので仕方がない。
「そ、そうか、一代男爵を授与したのが、こんな所で役立つとは……どこまでがエメラルティー侯爵の作戦で、どこからが偶然なのか、オレには全く読めない」
たぶん、父は、いや、元の父は、何も考えていない。その場の直感で生きてきた貴族だ。
「フランソワーズ、こんな所にいたのですか」
この声は筆頭侯爵の令嬢……イライザが、私を見つけて、走り寄ってきた。
令嬢たるもの、慌てて走るものではないと、教わらなかったのか。私も遅刻しそうで走ったけど、あれは学園だし、ここは王宮だ。
「わたくしのハーレム計画が、お父様から反対されました、どうしてくれるのザマスか!」
イライザの口癖が出ている。これは、今まで以上に、怒り心頭のようだ。
「フランソワーズのせいザマス!」
「あ!」
不意を突かれた。イライザから押され、聖女の泉に、落ちる……
また、泉に落ちるのか……あぁ、今日も厄日だ!
1
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
【完結】「私は善意に殺された」
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
リンゴの木の下で
小槻みしろ
ファンタジー
聖女とは、奇跡の癒しの力をもつ、この世に唯一の存在。
聖女の力に目覚めたマリーは、十五歳で村を出て、王宮に向かう。
幼馴染みも、母もすべて置いて――
「つまらない人生とはさよならするのよ!」
新たな生活に胸を躍らせるマリーだったが……
自分の人生を愛することを模索する、ファンタジー短編です。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる