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第五章 木曜

50 クズ石

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「私の瞳は、宝石などではなく、クズ石なのです」

 王族専用の個室の中、サクラと二人きりではあるが、私の瞳の色が変わることに、気付かれたくはなかった。見つからないようにと、いつもベールで隠してきたのに。


「私の、エメラルティー侯爵の領地は、美しい緑色のエメラルドが産出し、外貨で潤っていました」

 これ以上は隠し通せない。仕方ないので、私の秘密を話すことにした。サクラなら口外することはないだろう。

「しかし、私が生まれたころから産出が減り始め、エメラルドとして価値がない石……ローソク魔法の下では紫色に変るクズ石……しか、出ないようになったのです」

「私のイヤリングに付いている小さな宝石……これがクズ石です」

 イヤリングを外して、サクラに見せた。
 今は、日光の下、エメラルドの様な緑っぽい石だ。


 個室の中、ローソク魔法のランタンを灯し、遮光カーテンを閉める。

 イヤリングのエメラルドの様な緑っぽい石が、紫色に変わった。

 私の瞳も、青緑から紫に変わったはずだ。サクラが、イヤリングと私の瞳を交互に見ている。嫌われるかな。

「これでは、エメラルドとしての価値はゼロ……」

 自分で言いながら、領地の将来を思うと不安で、悲しくなってしまう。


「瞳の秘密がバレると、私は貧乏神だと陰口をたたかれるので、絶対に言わないでね」

 うなずくサクラ……でも、何か納得がいかないようだ。

「父は、美しいと言ってくれたけど、隠せと命令されました」

 それほど、この瞳の色は、ひどいのだろう。


「オレは、フランの瞳は、宝石のように美しいと思う」

 サクラは、美しいと言ってくれた。ウソでもうれしい。


「勇者パーティーは、瞳の色と同じ色の宝石を所持していたことは、知っているか?」

 元女王コノハ様も、勇者パーティーたちは異世界の宝石を持っていたと言っていた……


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