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第五章 木曜

47 白紙化

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「フランソワーズ、タロスとの婚約は、延期ではなく、白紙化する」

 教室で、元女王が、私と第一王子との婚約を白紙化すると宣言した。
 事実上の婚約破棄である。

「フランソワーズを、わがはいの孫にすることは、やめだ」

 いきなり、どういうことだ。私は、うつむいてしまった。


「王族との婚姻は、爵位が伯爵以上という習わしは、今も続いている」

 伯爵以上が王族と婚約可能だと、国王からも言われた。
 ショックだ。私は職位の低い男爵だ……

 昨夜は、元女王と私は、心が通じ合えると思っていたのに。なぜ、急に……

 あの王子たちと婚約できないのはうれしいが……

 でも、褒美を授けるって、言っていたのに。

 顔を上げると、元女王は、サクラと話をしていた。
 ちょうどいい、ここから逃げよう……私は、そっと廊下に出た。

 ◇

「フランソワーズ様、ご相談があるのですが、よろしいでしょうか」

 国王専属のメイド長の娘であるルナちゃんが、深刻そうな顔で話しかけてきた。

 彼女の顔を見ると、なぜか元気が出る。中等部なのに不思議な令嬢だ。

「今、ここは騒がしいので、場所を変えましょう」

 ◇

 比較的静かな廊下へと移動した。

「どうしたの?」

「エメラルティー侯爵令息のエリアル様が登校して来ませんが、流行り病でお体が悪いのでしょうか?」

 実は、私も弟のエリアルとは、数日会っていない。

「父が屋敷を閉めてストライキしてて、弟も屋敷から出ることが出来ないのです。きっと元気でいるので心配しないで」


「実は……私は、エリアル様から、求婚されています」

 え? まさか。

「弟が言っていた平民の女性って、貴女だったの!」

 父は、侯爵家を継ぐ弟の婚約者が平民の娘というのが面白くないようで、弟と対立していた。でも、そんな事、彼女には言えない。

 というか、実は、彼女は国王の隠し子……つまり王女である。平民ではない。


「その令嬢が、メイド長の娘か?」

 いつの間にか、元女王コノハ様が側に来ていた。
 ルナちゃんを、吟味するように、見ている。

 ルナちゃんが、とっさにカーテシーで挨拶する。母であるメイド長に習ったのか、美しい姿勢だ。

 元女王コノハ様は、この令嬢が国王陛下の隠し子、つまり、自分の孫だとは知らないはずだが。


「よし、顔をあげろ」

 令嬢の瞳を確認しているようだ。
 ルナちゃんは金髪で青い瞳だ。そういえば、国王も金髪で青い瞳だ。


「良い瞳をしている。よし、この令嬢を、国王の養子にする」

 元女王コノハ様が宣言した。王族の絶対的な命令だ。

「「え!」」

 ルナちゃんと一緒に驚いた……ルナちゃんを平民だと思っているなら、あり得ないことだ。まさか、自分の孫だと見抜いたのか? これは、どうなるんだ?


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