上 下
41 / 80
第四章 水曜

41 聖女降臨

しおりを挟む
「お目覚めですか、フランソワーズ様」

 目を覚ますと、ベッドの上だった。周りは、天蓋のキャノピー……
 見覚えがある。王弟殿下の寝室だ。

 側に、紫の瞳を持つ侍女が立っていた。私を看病してくれていたようだ。


「ありがとうございます。私は、また気を失ったのですね」

 私は、膨大な魔力を使う事に慣れていないので、気を失った。

 ベッドの上で、上半身を起こした。少し寝たようで、元気が戻っていた。

「実は、私たち侍女たちも、経験のない膨大な魔力に包まれ、一時気を失ってしまいました」

 侍女が笑って離してくれた。いや、危なかったじゃん、笑う所ではないと思うけど。


「騎士団長が気付いて、運んでくれたんですよ」

 団長からは、マジックでの混乱の時に助けてもらったばかりだ。

「また、騎士団長に助けられたのですね。ありがたいのですが、なぜ、王宮の護衛兵ではなく、騎士団長が近くにいてくれたのでしょう?」

 王宮内での護衛は、ほとんどが王宮護衛兵の役目だ。騎士団は、要人警護をすることはあるが、主な仕事は軍事行動である。

「騎士団には集まるようにお願いしていなかったのに……あとでお礼を言いますね」

「気にしなくても大丈夫ですよ。騎士団長が勝手にやったことですから」

 いや、お礼は人間として、基本だ。

「そうは言っても……」


「聞いていませんか? 騎士団長は、マーキュリーさんの夫ですから」

 え! 騎士団長とマーキュリーさんは、夫婦なの?

 それで、騎士団が動いていたんだ。それって公私混同になるよね。

「内緒ですけど、私たち侍女と騎士団は、フランソワーズ様を護るようにと、王弟殿下からお願いされているのですよ」

 え! 王弟殿下が、私を護ってくれてるの? 顔が少し熱くなった。

「フランソワーズ様は、ここ数日で、気持ちが顔に出るようになりましたね」

 侍女が、また笑った……そうだったのか、恥ずかしい。顔が完全に熱くなった。


「さて、元気になられたようなので、現在の状況を報告します」

 侍女の顔が、マジモードになった。

「王宮全体が清潔な状態になり、流行り病は、終息に向かっています」

「私たち侍女も、少し休んだので、回復しました」

「さて、問題は、ここからです」

 え! まだ問題があるの? 解決したじゃん。


「まず、王宮全体が、不思議な光に包まれて、大騒ぎになっています」

 まぁ、これは時間が経てば、収まるだろう。


「そして、私たち侍女は、清潔になった王都を歩けません」

 彼女は、もうお手上げだと言う顔だ。
 なんで? 何をしたの? 訳が分からない。

「王都に六体の巨大な聖女が降臨して、街は大騒ぎになっています」

 もしかして、さっきのクリーン魔法のことかな?
 でも、聖女降臨なんて、大げさな……

「それは騒ぎになるでしょうが、侍女の皆さんとは関係しないのでは?」


「降臨した聖女の顔が……私たち侍女の顔だったんです」

 あ~、これは、やってしまった。


「つ、つまり、アイドルの人気が急上昇して、街を歩くとファンに囲まれるのですね」

「おっしゃってる事が、よく分かりませんが……囲まれて身動きできなくなるのです」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

「 この国を出て行け!」と婚約者に怒鳴られました。さっさと出て行きますわ喜んで。

十条沙良
恋愛
この国の幸せの為に頑張ってきた私ですが、もう我慢しません。

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...