上 下
27 / 80
第三章 火曜

27 隣国のメガネ

しおりを挟む
「フラン、ひどい目に合ったな」

 サクラの声で、目を覚ました。
 ベッドが硬い……上半身を起こすと、私は、学園の廊下で横になっていた。

 見渡すと、近くでは、多くの生徒たちが、廊下で横になっている。


 私は、全身ずぶ濡れになっていたはずだが、サクラの侍女のクリーン魔法で、服を乾かし、スッキリ爽やかな状態に戻してもらっていた。

「フラン、もう体は動くか?」

 サクラが心配してくれた。

 私は冷たい水が苦手で、学園ホールでの混乱で水に濡れ、さらに電撃でシビレ、気を失っていたのだった。

「ありがとう、もう大丈夫」

 大丈夫じゃなくても、ここは大丈夫だと言わないと……


「これを拾った」

 サクラが、メガネを見せてくれた。

「ペテン師の女性が持っていたメガネだ。これを使うと……」

 サクラの黒い瞳が、紫に変わった!

「隣国では、瞳の色を変えるメガネを開発したようだ」

 これなら、だれでも紫の瞳になって、聖女だと言う事が出来る。
 言われてみれば、隣国のスパイ、詐欺師も、ペテン師と同じメガネを使用していた。


「では、私は、他の生徒たちの治癒を行います」

 そう言ったサクラの侍女、いや、王弟殿下の侍女は、紫の瞳だった。

「今の侍女、紫の瞳で、治癒魔法を使えるのなら、彼女こそ聖女なのでは?」

「いや、彼女は聖女ではなかった」

 サクラが答えてくれた。

「でも……」

 世間では、治癒魔法が聖女の証だと言われている。

「治癒魔法を使えることが、聖女の条件ではない」

 たしかに、治癒魔法を使える女性なら、数多く存在する。


「治癒じゃないなら、聖女の役目って、何なんだろ?」

 聖女の役目が分からないと、偽物だと言われても反論できない。ご主人様の小説の、追放された聖女のように……

「友好国の聖女は『国を勝利に導く者』と言ってたが、オレにもわからん」

 友好国の聖女か……会ってみたいな。


「あれ? 勇者パーティーに、聖女はいなかったよね?」

「よく知っているな。たしかに、勇者、賢者、僧侶の三名だった」

 サクラは、勇者パーティーの伝承について詳しい。同い年のはずなのに、いったい何歳なんだ。

「よくわからんが、聖女は、僧侶の上位なのかも……以前、友好国の聖女は、パーティーの力を増幅する者、膨大な魔力量を持つ者を探していたな」

 何のことか、分からない……私の目指す大人の女性と、聖女は、一致するのだろうか。


「サクラ様、生徒の治癒が終わりました。あとは、教師の指示に従って、教室で休むのが良いかと思います」

 紫の瞳を持つ侍女が戻ってきた。

 私も、彼女のように、治癒魔法を使って、人たちを助けたい……これは、嫉妬?


「ペテン師の一団は全て投獄し、第一王子は謹慎となるでしょう」

 騎士団長も来て、サクラに報告した。
 私だけ無力だ……なんだか、何も力を持たない自分がむなしくて、哀しくなる。


(そんなことはない)

 え! 今のは声? 声変わり前の男の子のような、女の子のような声が、頭の中に聞こえてきた。

(フランソワーズは、治癒魔法も使えるし、本物の聖女だ)

 えぇ! 胸に隠している四角い宝石がしゃべった!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

「 この国を出て行け!」と婚約者に怒鳴られました。さっさと出て行きますわ喜んで。

十条沙良
恋愛
この国の幸せの為に頑張ってきた私ですが、もう我慢しません。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

【完結】返してください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと我慢をしてきた。 私が愛されていない事は感じていた。 だけど、信じたくなかった。 いつかは私を見てくれると思っていた。 妹は私から全てを奪って行った。 なにもかも、、、、信じていたあの人まで、、、 母から信じられない事実を告げられ、遂に私は家から追い出された。 もういい。 もう諦めた。 貴方達は私の家族じゃない。 私が相応しくないとしても、大事な物を取り返したい。 だから、、、、 私に全てを、、、 返してください。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

処理中です...