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一話完結 学園に戻る? 私は、数年前に卒業しておりますが!

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「婚約破棄だ!」

 ここは王宮、王子の卒業を祝うパーティー会場です。
 私は、婚約者の王子から、たった今、婚約破棄を宣言された侯爵家令嬢、銀髪碧眼のレモンです。


「なぜですか」
 これまで、上手く関係を築いてきたと思っていたのに。

「俺よりも年上の『行き遅れ令嬢』だからだ」

 栗毛のイケメン王子が冷たく言い放ちます。

 私は年上ですが、侯爵家という後ろ盾が欲しい王族たちは、幼い王子と私を婚約させました。

 そんな王子に、多少は同情します。

 しかし、両親と姉から可愛がられた末っ子で、わがままに育ってしまい、振り回されて大変だったのは、私のほうです。

 それに、王太子妃の教育に明け暮れた私の青春!
 私に同情して下さい。


「学園に戻って、勉強し直してこい」

 王子がとんでもない事を言います。

「学園に戻る? 私は、数年前に卒業しておりますが」

「それでも、罰として3年生をやりなおせ」

 そんな罰、あるかい!
 呆れてしまいます。誰か、今の発言を取り消してください。


「王子様の横に立つ令嬢が、新しい婚約者ですか?」
 少し、抵抗します。

「そうだとも。お前と違って可愛いだろう」

 王子がロリコンとの疑いを持っていました。

 彼の横には、栗毛でお顔が可愛らしい、そして、小柄な体に不釣り合いなほど豊満なパーツを付けた、幼い令嬢が立っています。

 これは、確定ですね。


「お話の途中ですが、王子、貴方は卒業するのに必要な単位が足りません」
 学園長を兼務する王弟陛下が告げます。

「それがどうした?」
 王子は、オツムが弱いのが欠点です。

「留年です。もう一度3年生として勉強することになります」
 学園長の言葉に、国王が手で顔を覆い、うなだれます。

「なに! 単位が足りないくらいで留年はおかしい、成績が優秀なら卒業を認めるべきだ」
 ここだけ切り取ると、良い意見のように思えます。

「すべて落第点の『落第王子』が、何をほざく」
 とうとう、国王が怒り始めました。


 そんなことより、誰か、私の学園への追放を取り消してください。
 すっかり、忘れられています。


   ◇



 新学期となった王立魔法学園、3年生の教室です。
 私と王子が、なぜか席を並べて、教室にいます。

「なぜ俺が「落第王子」と呼ばれなくてはならないのだ」
 王子がボヤキます。

「俺は王族だぞ、このクラスの先輩だぞ、国王になる逸材だぞ」
 王子が威張ります。

「王子様、授業の妨げになりますので、少しお静かにしていただけませんでしょうか」
 教師が、生徒である王子にお願いしています。

「俺はだな」

「黙れ!」
 私のパンチが、王子のアゴに炸裂し、元婚約者は意識を失いました。

「王子は、お休みになられましたので、授業を続けて下さい」
 床で寝ている王子を見下ろし、教師にお願いします。

「レモン様、ありがとうございます」

 教師から、様を付けれられる生徒って、、、
 教師は、私の、、、後輩です。



 授業が終わっても、私はクラスで浮いています。

「はぁ~、この授業も2回目です」
 それに、私は学年の首席でした。

 問題が解けないクラスメイトがいれば、わかりやすく教えてあげます。


「レモン様、ありがとうございます」

 同級生から、様を付けられる私って、、、
 問題が解けて、笑う令嬢の若々しい笑顔がまぶしいです。


「レモン、ここで何をしている」
 学園長が、あわてた顔で、教室に来ました。

「王子様の命令で、3年生をやり直しています」
 なぜ聞くのだろうと答えます。

「どこかで話が違って、誤って伝わっている」
 学園長が、困っています。


   ◇


 場所を、学園長室に移しました。

「国王陛下は、レモン嬢には、学園へ行って、この私とお見合いしてもらうと、言ったのだ」

「学生としてではないのですか、、、は? お見合いですか」

「国王陛下と、いや王族たちと、話し合ったのは、、、」


1.王子とレモン嬢の婚約は破棄してもらう

2.そして貴女が良ければ、私と婚約してもらう

3.さらに、貴女に、学園長になってもらう


「という計画なんだ」

 なんだか、だいぶ話が違うので、唖然とします。

「王子が盗み聞きをして、自分勝手に解釈して、貴女に伝えたのだろう」
「すまなかった」

 学園長が生徒に、いや王弟陛下が侯爵家令嬢に頭を下げるなんて驚きです。


「公にはしていないが、あの落第王子は、廃嫡し、追放する計画だ」

 いままで可愛がってきた王子を切り捨てるのですか?

「なにか事件を起こす前に王族から切り離しておくことは、王族の総意だ」

 皆さん、保身に走りましたね。
 私は、王族の手のひらで踊らされていたのですね、きっと。


「レモン嬢、私の妻になってくれないか?」

 王弟陛下は独身で、私よりも10歳くらい年上ですが、独身を貫いてきました。

 以前から思っていましたが、金髪碧眼のイケメンおじ様です。
 スマートで、スタイルも抜群です。

「わかりました。私は王弟陛下の妻になります」
 即答しました。


「でも、一つお聞かせください」

「王弟陛下は、これまで独身でしたのに、なぜ、今、ご結婚なさるのですか?」
 政略結婚だと判っていますが、確認しておきます。

「それは、私が貴女に一目ぼれし、結婚を申し込もうとしたのだが、国王の願いで、あの落第王子に譲った」

「以降、貴女以上の女性は現れなかった」

「レモン嬢をずっと愛していた」

 これは、愛の告白ですか!


「私も、王弟陛下を、男性として、ずっと憧れていました」
 あぁ、私の幼い頃からの想いを、言ってしまいました。


「貴女は仮ではあるが生徒なので、学園長とのラブロマンスはご法度だ」
 王弟陛下は、現実に戻ったようです。

「生徒としての学籍を抜き次第、貴女の屋敷に向かう、それまで待って欲しい」

「待てません」
 私は、彼に顔を近づけます。


「・・・」


「これで、もう後戻りは出来なくなったな」

「はい」
 顔を赤くして答えます。


「言い忘れたが、現国王陛下は、近いうちに退位する」
 私にキスしたイケメンおじ様が、何か言い出しました。

「次の国王は、私だ」
 それって、まさか?

「よろしくな、レモン王妃」
 いきなり、王妃なんて、聞いておりませんよ!




 ━━ fin ━━


あとがき
 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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