上 下
1 / 1

一話完結 4月14日は婚約破棄の日?

しおりを挟む

「私の王子様、この手作りチョコを受け取って下さい」
「キャー」
 今年も黄色い声が、、、

 冷めた目で見ている私の名はシルビィ、銀髪の高等部3年生、伯爵令嬢です。


2月14日
 今日は、女性から男性へ愛を告白できる日です。
 学園は朝からソワソワしています。

 階段教室の前の方、ハイスペック令息様の周りを、令嬢が囲んでいます。
 遠巻きに見ている男性が、ため息をついています。

 最上段で窓際の席、私は呆れながら眺めます。

「この国には、面白いイベントがあるんだな」

 隣の席の、ブラッドです。
 友好国からの留学生、伯爵家扱いで、イケメンなのですが、黒髪なので、この王国では好まれていません。

「この学園の伝統行事です」

「シルビィ、お前はチョコを配らないのか?」
「私は、来るものは拒まず、自分からは追わない主義です」

 嘘です、カバンの底には手作りチョコが1個、入っています。

「ブラッドには、チョコが来ませんね、欲しいですか?」
「チョコは好きだが、義理チョコなんか、いらないね」

「あまり、こちらを見ないで下さいますか」
「俺は窓の外を見るのが好きなんだよ」

「お前こそ、こっちをチラチラ見るなよ」
「私は、教授の方を見ると、そちら側に顔が向いてしまうのです」

「そんなツンツンすると、男性からモテないぞ」
「女性のお友達がたくさんいますから大丈夫です」

 男性からは距離を取られていますが、なぜか女性からは、お姉さまと呼ばれ、人気があります。

「貴方の国では、3月に卒業式なのでしょ。もう国に帰るのですか?」
「いや、この国の法に従い、7月に卒業する」

(良かった)


 ◇


4月14日
 あれから2か月、今日は、女性から男性へ婚約破棄できる日です。

 学園は朝からソワソワしています。

 教室のあちこちで、令嬢が、恋の終わりを告げています。
 遠巻きに見ている男性が、いや女性も、ニヤニヤしています。

 2か月も付き合えば、理想と現実の違いが判り、夢から覚めるのは毎年のことです。

「この国には、面白いイベントがあるんだな」
「この学園の伝統行事です」

「シルビィ・・・」
「ブラッド、どうしました?」

「これ」
 彼は、カバンの底からチョコを取り出し、私に手渡しました。

「誕生日、おめでとう」
「あ、ありがとうございます」

「こ、これ」
 私も、カバンの底からチョコを取り出し、彼に手渡しました。

「た、誕生日、おめでとう」
「ありがとう、覚えてくれていたんだ」

「同じ誕生日だなんて、忘れられないでしょ」
「次の日曜日、私の屋敷で祝って差し上げますので、絶対に来なさいよ」


「わかった、真っ赤なバラの花束を持って行くから」

 真っ赤なバラの花束! 求婚の定番アイテムです。

「こ、心より待っていますわ」


 ◇


 彼は、友好国の王子でした。
 卒業後、私たちは友好国へ住まいを移します。

「たまたま暇だったから、一緒に付いて行ってあげるだけだからね!」

 ちょっと、ブラッド様、お顔が近いです。
「・・・嘘です、好きです」



 ━━ FIN ━━



【後書き】
お読みいただきありがとうございました。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

けじめをつけさせられた男

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:128

傷物公女は愛されたい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:248

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:1,782

“真実の愛”の、そのお相手は

恋愛 / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:108

婚約破棄をなかったことにする、たったひとつの冴えたやり方

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:23

蝋燭

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:233

クズ人間の婚約者に嫁がされた相手は、ただのダメ人間でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:71

転生者と忘れられた約束

恋愛 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,618

処理中です...