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第四章 王弟殿下
第55話(閑話休題)辺境伯の結婚式
しおりを挟む「思い出に残る結婚式でしたね」
王弟殿下の執務室です。二人で夕暮れのお茶を楽しんでいます。
「王国の存亡をかけた戦いの後に、結婚式を強行する必要はあったのか?」
「ありました」
王弟殿下の疑問に、ハッキリと答えます。
今日は、辺境伯と冒険者“武闘家”の結婚式だったのです。
それなのに、私が姿を消したことから、クーデターが勃発しました。
戦いを終えた後、私は「今から結婚式をします」と、出席者を集めたのです。
ドレスに着替える間もなく、ボロボロの格好のまま、強行しましたけど、皆さん笑顔でしたよ。
「私は、新郎新婦の誓いの言葉に感動しました」
「花嫁のウエディングドレスは、戦闘でボロボロだったじゃないか」
「ベールアップができたから、問題ありません」
「時間がないので、いきなりブーケトスに入りましたが、私もブーケを頂けましたので、幸せです」
「ブーケをもらうため、結婚式を強行したのか?」
「ブーケは、隣国の王女も受け取っていたな」
「宰相の末っ子と結ばれますから」
「子爵家令嬢も受け取っていたな」
「騎士団長ジュニアと結ばれますから」
「辺境伯の令嬢も受け取っていたな」
「騎馬隊長の末っ子と結ばれますから」
「伯爵家令嬢は、まぁ当然か」
「はい、第一王子様とくっつけますから」
「それよりも、王弟殿下。事件で参列できなかった令嬢の分のブーケ6束、持ち帰ったでしょ?」
「先輩メイドから、ブーケ受け取ったと、お礼がありましたよ、護衛兵さんとは上手くいっているようです」
「冒険者“踊り子”たちからも、お礼を言われましたが、美人二人の片割れは、男性ですからね」
「さらに、辺境伯のメイド長にまで……たしかに独身の令嬢ではありますが、なんで差し上げたのか、理解できません」
「そして、伯爵家に隠れていた、友好国の令嬢にまで、差し上げたそうですね」
「そんな時間があったなら、王国の復興を話し合う会議に参加できたでしょ?」
「会議は、第一王子に任せておけば良いだろ」
「そうですね、令嬢にとっては、そんな会議よりも、ブーケの方が大事です」
「持ち帰ったブーケ、もう1束あるはずですよね。誰に渡したのですか? 相手によっては、私、許しませんよ」
「最後は、フランも一緒に渡してほしい」
「……霊安室ですね」
◇
王弟殿下が、棺の中にブーケを置きました。
「聖女は、元の世界で、幸せになれたのだろうか?」
「病魔は払いましたので、彼女の努力次第ですね」
「フランは、影と融合してから、少しキツクなってきていないか?」
「王弟殿下は、光と融合してから、少し丸くなりましたね」
棺の中のブーケは、静かに、この世界から消え、星空を超えて、彼女の世界へと飛んでいったようです。
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