44 / 56
第三章 第二王子
第44話 侯爵家令嬢とのお見合い
しおりを挟む「私ね、結婚するの」
先輩メイドからうれしい報告がありました。
「おめでとうございます、先輩」
王宮の庭のスミで、私は先輩メイドを祝福します。
「昨日、護衛兵の、子爵家の末っ子さんから、プロポーズされちゃって」
幸せそうな顔です。私は少しうらやましいです。
私は、人の恋路を応援するばかりで、自分の恋なんて見つけられないでいます。
昨日、第二王子への襲撃、いえ、証拠はつかめませんが、たぶん友好国の令嬢を狙った襲撃があり、未然に防ぎました。
その際、心配したとおり、先輩は魅了の魔法にかかっていました。
治癒室で魅了を解いてもらいましたが、だれが魔法をかけたのか、だれのお茶に毒を入れようとしたのか、残念ながら分かりませんでした。
先輩が魅了されたタイミングは、直前に飲んだお茶だと、怪しんでいます。
目撃証言から、飲み終わったお茶を片付けたのは、第三王子の事件で所在不明になっているメイドのようです。
飲み物に、薬を入れるのが、あのメイドが得意とする手口のようです。
「私の最後の仕事が、第二王子様と侯爵家令嬢様のお見合いの席に出すお茶だなんて、なんて光栄なんでしょ」
先輩メイドは、魅了されていた時の記憶はありませんので、無邪気に舞い上がっています。
今日は、私は少し離れて待機し、遠くから、お茶会を監視することにしましょう。
◇
本日のお見合い相手は、チョビヒゲ侯爵の娘である侯爵家令嬢です。
ガゼボで、一見すると、二人は仲良く会話している様に見えます。
「友好国の伯爵家令嬢と、ずいぶんと話が盛り上がっていたそうですね」
侯爵家令嬢の声に、トゲが感じられます。
「それは、外交というものだ、通常の対応なんだ」
第二王子は言い訳をしています。
王子は、外では亭主関白なのに、家庭内では尻に敷かれる、そんなタイプですね。
「お父様が、第二王子様の後ろ盾になる話は、聞いていますよね」
第二王子は婿に出る予定でしたので、太い後ろ盾は、これまで、いませんでした。
「ありがたい話だと思っている」
チョビヒゲ侯爵が、後ろ盾になれば、第二王子が国王になる道は盤石になります。
「では、あの作戦も、了承して頂いたのですね」
令嬢が言った、あの作戦とは、なんのことでしょう?
「しかし、貴女の身が心配だ」
「隣国から、技術を買い取りましたので、問題ありません」
なんだ? 危険な作戦なのでしょうか。
二人の会話は、お見合いの会話じゃないでしょ。親父の商談みたいです。
「あ~んして」
侯爵家令嬢が、自分のフォークで、ケーキを第二王子の口に運んでいます。
「あ~ん」
第二王子が、それをパクリと口にしました。
なんだ? 今度は、高等部一年生と中等部らしい二人に戻りました。
こんな時、まだお見合い段階の二人の間接キスを防ぐため、メイドは、第二王子が口にした、令嬢のフォークを取り替える必要がありますが……
あれ? 先輩メイドは、少し離れた場所で、ウットリと第二王子を眺めているだけで、仕事をしていません。
これは、旦那を放っておいて、推しに熱を上げるタイプですね。
いや、そんな事より、フォークを、あ、令嬢がフォークに残ったケーキを口にしました。
これは、失態です。
でも、今日は、王弟殿下が近くにいないので、報告しないでおきます。
令嬢が口にした「あの作戦」という謎の言葉だけを、報告することにしました。
◇
「王弟殿下、あ~んして」
彼の口に、フォークでケーキを運びます。
「あ~ん」
彼は、パクリと食べてくれます。
王弟殿下の執務室で、小芝居を演じてみました。
「フラン、今の俺には立場というものがある、勘弁してもらえないか」
彼は、これまでになく、恥ずかしそうにしました。
王弟殿下は、今は国王代理という要職に就いています。
「国王になるつもりは、ないのでしょ?」
「窮屈な暮らしは嫌だ、それは公言しているが」
なら、小芝居くらい、付き合ってくださいよ。
私は王弟殿下の愛人だと、既に困ったウワサが広まっているのですから。
「彼を国王に据えた後は、どうします?」
「そうだな……旅に出て、色々な国を漫遊したいな」
旅ですか? そうですか、それも面白そうで、いいですね……
しまった!
フォークを取り替えるのを忘れて、そのまま、私が使って、ケーキを食べてしまいました……
この件は、黙っておきましょう。
でも、私の顔は火照っています。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄された私は車いすのお姫様に助けられて愛されました
AYU
恋愛
私は公爵令嬢のロザリーこの国の第一王子は私の婚約者だしかし親の決めた婚約に納得いかない王子は事もあろうに婚約発表パーティーで昔から仲がよかった幼なじみの公爵令令嬢と一緒に婚約破棄と公爵令嬢との結婚を発表する失意の中私を助けてくれたのは王子の妹で車いすに乗った王女様だったこうして王女様のお側付きになった私はこれから一体どうなるだろうか
魔法の薬草辞典の加護で『救国の聖女』になったようですので、イケメン第二王子の為にこの力、いかんなく発揮したいと思います
高井うしお
恋愛
※なろう版完結済み(番外編あり〼)
ハーブ栽培と本が好きなOL・真白は図書館で不思議な薬草辞典と出会う。一瞬の瞬きの間に……気が付くとそこは異世界。しかも魔物討伐の軍の真っ只中。そして邪竜の毒にやられて軍は壊滅状態にあった。
真白が本の導きで辞典から取り出したハーブを使うと彼らはあっという間に元気になり、戦況は一変。
だが帰還の方法が分からず困っている所を王子のはからいで王城で暮らす事に。そんな真白の元には色々な患者や悩み事を持った人が訪れるようになる。助けてくれた王子に恩を返す為、彼女は手にした辞典の加護で人々を癒していく……。
キラッキラの王子様やマッチョな騎士、優しく気さくな同僚に囲まれて、真白の異世界ライフが始まる! ハーブとイケメンに癒される、ほのぼの恋愛ファンタジー。
高嶺の花屋さんは悪役令嬢になっても逆ハーレムの溺愛をうけてます
花野りら
恋愛
花を愛する女子高生の高嶺真理絵は、貴族たちが通う学園物語である王道の乙女ゲーム『パルテール学園〜告白は伝説の花壇で〜』のモブである花屋の娘マリエンヌ・フローレンスになっていて、この世界が乙女ゲームであることに気づいた。
すると、なぜか攻略対象者の王太子ソレイユ・フルールはヒロインのルナスタシア・リュミエールをそっちのけでマリエンヌを溺愛するからさあ大変! 恋の経験のないマリエンヌは当惑するばかり。
さらに、他の攻略対象者たちもマリエンヌへの溺愛はとまらない。マリエンヌはありえないモテモテっぷりにシナリオの違和感を覚え原因を探っていく。そのなかで、神様見習いである花の妖精フェイと出会い、謎が一気に明解となる。
「ごめんねっ、死んでもないのに乙女ゲームのなかに入れちゃって……でもEDを迎えれば帰れるから安心して」
え? でも、ちょっと待ってよ……。
わたしと攻略対象者たちが恋に落ちると乙女ゲームがバグってEDを迎えられないじゃない。
それならばいっそ、嫌われてしまえばいい。
「わたし、悪役令嬢になろうかな……」
と思うマリエンヌ。
だが、恋は障壁が高いほと燃えあがるもの。
攻略対象者たちの溺愛は加熱して、わちゃわちゃ逆ハーレムになってしまう。
どうなってるの? この乙女ゲームどこかおかしいわね……。
困惑していたマリエンヌだったが真相をつきとめるため学園を調査していると、なんと妖精フェイの兄である神デューレが新任教師として登場していた! マリエンヌはついにぶちキレる!
「こんなのシナリオにはないんだけどぉぉぉぉ!」
恋愛経験なしの女子高生とイケメン攻略対象者たちとの学園生活がはじまる!
最後に、この物語を簡単にまとめると。
いくら天才美少女でも、恋をするとポンコツになってしまう、という学園ラブコメである。
貴方様と私の計略
羽柴 玲
恋愛
貴方様からの突然の申し出。
私は戸惑いましたの。
でも、私のために利用させていただきますね?
これは、
知略家と言われるがとても抜けている侯爵令嬢と
とある辺境伯とが繰り広げる
計略というなの恋物語...
の予定笑
*****
R15は、保険になります。
作品の進み具合により、R指定は変更される可能性がありますので、
ご注意下さい。
小説家になろうへも投稿しています。
https://ncode.syosetu.com/n0699gm/
邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
高遠すばる
恋愛
聖女である双子の妹の「はきだめ」として生きてきたミリエルは、幼馴染の騎士であるユアンと恋人となった。叶わないと思っていた恋の成就に幸せを感じるミリエルは、しかしその翌日、聖女の暗殺未遂をしたとして罪に問われ、火山に眠る邪竜への生贄となることが決まった。いよいよ火口に落ちる寸前、ミリエルを救ってくれた邪竜の声は、ミリエルにとって慕わしいもので……?
「助けに来たよ、僕のミリー」
邪竜と聖女の悪姉が紡ぐ溺愛ファンタジー!
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…
甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。
身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。
だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!?
利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。
周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…
婚約破棄で絶望しましたが、私は愛し愛される人に出会えて幸せです
腹鳴ちゃん
恋愛
卒業パーティーで婚約破棄されたフロリアーヌ。愛されていると思っていたお父様と信頼していた婚約者に裏切られ、絶望する。
しかし、精霊様の力を借りて記憶を消し、新たな世界へ!そこでは今までの生活とは全然違う!真に愛する人も見つかって、フロリアーヌは幸せになります。
元『気持ちの切り替えだけは得意です。』連載版に合わせて変えました。
死を表現するところがあるため、保険でR15にしておきます。
当方、処女作のため温かい目で見てくださると助かります。
お話書くのってむずかしい
※なろう様にも掲載しております。
お気に入り・しおり登録ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる