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第三章 第二王子

第42話 第二王子の婚約者候補

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「第二王子様の、婚約者候補を探すのですか?」

 先輩メイドの言葉に、私は驚きました。

 王宮の廊下で、次の仕事場所である中庭へ向かって歩いている時です。


「私たちメイドが探すのではなく、探した婚約者候補様へ、お茶を出すのが仕事よ」

 そうか、私は、第三王子や第一王子の婚約者候補のことで、苦労してきましたので、もうお腹いっぱいです。

「王宮の庭に、王族用のガゼボがあるのは知ってる?」

「はい、白いテーブルとイスがある所ですね」

 私は、あのガゼボを、お見合いで、何度も利用させていただきました。

「あの白いテーブルセットは、私たちが事前に並べて、終わったら片付けているの。普段は出していないのに、よく知っていたわね」

「何かの絵画で見たのかも」

 危なかったです。ボロを出すところでした。


「明日、友好国の伯爵家令嬢様がいらっしゃるので、今から準備よ」

「はい、先輩」

 ガゼボに向かう先輩に付き従い、可愛らしい後輩を演じます。


「知ってる? 友好国の令嬢は、第一王子様の婚約者候補として来訪したのに、あんな事件があったから、急きょ、第二王子様とお見合いするんだって」

 先輩は、得意げに教えてくれました。

 あんな事件とは、第一王子が国王に毒を盛って、消息を絶ったことです。もちろん誤解なのですが、チョビヒゲ侯爵が、情報を操作したようです。

 そんな事件があり、お見合いの相手が変わっても、なんら動じないなんて、ずいぶんと肝が据わった令嬢ですね。

 政略結婚なんて、こんなものなのでしょうか?

 それとも、別の、この王国に来る目的があったのでしょうか?

    ◇

「イスを置く場所は、こんな感じかな」
 先輩メイドは、何も考えず、配置します。

「お見合いは、午後ですよね。イスがここだと、令嬢様の後ろに太陽が来るので、横へ少しずらした方が、顔が映えると思います」

 ガゼボの天井は、ステンドグラスになっているので、日の光の方向を考えるのは、大事な配慮です。

 私は、令嬢の顔が映える位置を提案します。

 こっちの方が、護衛から見えやすく、セキュリティー性が高いというのが、本音ですけど。


「あ、第二王子様」

 先輩の向いた方を振り向くと、珍しく、王子が庭へ足を運んできていました。

「明日の会場の下見に来た。そのまま、作業を続けてくれ」

 これは、友好国の令嬢とのお見合いに、かなり緊張しているようですね。


「はい、ここにご令嬢様からお座り頂き、第二王子様はこちらのイスを考えています」

 先輩メイドが、うれしそうに説明します。

「そうか、試しに、貴女が座ってくれ」

「僕も予定された場所に座ってみる」

 第二王子の提案に、役得となった先輩メイドは、感激して声も出ないようです。


「なかなか、良い配置だ、貴女の気配りは素晴らしい」

 第二王子が先輩メイドへ微笑みました。

 あれ、王族って人種は全て、女好きなのでしょうか?


 私は少し離れて、二人だけの時間を作り、その間に、警備の人員配置を再確認します。

 お見合い会場の状況は、以前の、第三王子や第一王子の時と変わりはありません。

 護衛兵の配置も、以前のままであることを図面で確認しており、スキはありません。

 私だったら、メイドに化けて、襲撃します……って、私がメイドでした。

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