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60 欲しいものは奪い取れ⑤
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「ならば、どうやってこの国に?」
エレベーターで、と言いかけて、隼斗は目を泳がせる。どうした、と少年王が首をかしげた。
「……何か聞こえる。これは何? まるで……像の大群でも走ってくるみたいな……?」
戦車よ、とアカネが顔を上げた。
「我が軍であろう。ここで合流することになっておるのだ。案じることはない」
いいえ、と言いながら、アカネはするりと少年王の首元に腕を回した。
「おそらく、善き者たちではありません」
隼斗も、遠目にほおに傷のある男を見つけた気がした。
「私がオトリになります。あなた様はお逃げください」
アカネはうつむくと、足元に大粒の涙をいくつもにじませた。
「あなた様をだましてしまった、せめても償いを」
ひゅうん、と大振りの弓矢が、ふたりの足元に突き刺さった。
「待って、姉ちゃん。何をする気?」
アカネは隼斗の腕を押しのけると、少年王の前に膝をつく。
「ここにいては危険がおよびます。どうか、私の弟に従ってお逃げください」
有無を言わせぬ強い語気で弟を振り払うと、アカネは二輪戦車に足を向けた。
よたよた、と馬があらぬ方向によろめいた。
「隼斗。私が戦車に乗ったら、あんたはツタンカーメン様を連れて反対側に逃げるのよ」
「待て、アンケセナーメン」
「いいえ、あたしは……アカネ。あたしが消えれば、あなた様の愛しいお方はお戻りに」
アカネは腕に結わえた鈴をふたつ、しゃらりと外した。
「これを……お持ちください」
軍隊が迫ってくる。アカネは危なっかしい手つきで戦車を操ると、隼斗の目を見つめた。
「あんたにしか頼めない。あたしの愛しいあの方を……守って」
アカネは唇をかむと、隼斗に小さな紙片を手渡した。
「これをあの方に」
「待ってよ! もうすぐ迎えのエレベーターが来る。それまでいっしょに隠れていようよ! ねえ!」
アカネの操る二輪戦車は、像のような大群に向けて一直線に進んでいった。
大振りの剣先が、アカネを襲う。隼斗は夢中で腕のタブレットを触り、ブザーを押し続けた。
思うさま、何度も何度も。
エレベーターで、と言いかけて、隼斗は目を泳がせる。どうした、と少年王が首をかしげた。
「……何か聞こえる。これは何? まるで……像の大群でも走ってくるみたいな……?」
戦車よ、とアカネが顔を上げた。
「我が軍であろう。ここで合流することになっておるのだ。案じることはない」
いいえ、と言いながら、アカネはするりと少年王の首元に腕を回した。
「おそらく、善き者たちではありません」
隼斗も、遠目にほおに傷のある男を見つけた気がした。
「私がオトリになります。あなた様はお逃げください」
アカネはうつむくと、足元に大粒の涙をいくつもにじませた。
「あなた様をだましてしまった、せめても償いを」
ひゅうん、と大振りの弓矢が、ふたりの足元に突き刺さった。
「待って、姉ちゃん。何をする気?」
アカネは隼斗の腕を押しのけると、少年王の前に膝をつく。
「ここにいては危険がおよびます。どうか、私の弟に従ってお逃げください」
有無を言わせぬ強い語気で弟を振り払うと、アカネは二輪戦車に足を向けた。
よたよた、と馬があらぬ方向によろめいた。
「隼斗。私が戦車に乗ったら、あんたはツタンカーメン様を連れて反対側に逃げるのよ」
「待て、アンケセナーメン」
「いいえ、あたしは……アカネ。あたしが消えれば、あなた様の愛しいお方はお戻りに」
アカネは腕に結わえた鈴をふたつ、しゃらりと外した。
「これを……お持ちください」
軍隊が迫ってくる。アカネは危なっかしい手つきで戦車を操ると、隼斗の目を見つめた。
「あんたにしか頼めない。あたしの愛しいあの方を……守って」
アカネは唇をかむと、隼斗に小さな紙片を手渡した。
「これをあの方に」
「待ってよ! もうすぐ迎えのエレベーターが来る。それまでいっしょに隠れていようよ! ねえ!」
アカネの操る二輪戦車は、像のような大群に向けて一直線に進んでいった。
大振りの剣先が、アカネを襲う。隼斗は夢中で腕のタブレットを触り、ブザーを押し続けた。
思うさま、何度も何度も。
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