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19 義理の父を疑う⑤

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 さあ秘密を話せ、暴露しろ。父のためにも、このぼくだけは、簡単にだまされるわけにはいかない。
 義理の息子を思いやる穏やかな表情の義父を、ぎらぎらした目で観察する。それでも、義父はなかなかしっぽをつかませない。
「それじゃあ、墓参りに行こうか」
 立ち上がった義父は三人分の会計をし、車のキーをきらり、と振った。
 もし生き返ることができたらまずは免許を取ろう、と空中を漂ったまま決意した。


 母の眠る墓地は、この辺りでは比較的大きな寺の敷地にある。あらかじめ義父の用意していた菊の花束を供えながら、ハルカは小さな声で母に語りかけていた。
「お母さんに、何かお願い事かい」
「教えなーい」
「お兄ちゃんの勤める高校を受験するって、ちゃんと報告しないとなぁ」
 何気ない義父とハルカとのやり取りを、『昨日』のぼくは少し離れて見つめている。
さらにその背後から皆を観察していたぼくには、その表情は分からない。
「ハルカ、学校はどうだ? 友だちとはうまくいってる?」
 突然、『昨日』のぼくが口を開いた。
 余計なことを、と舌打ちする。
 友だちとうまくいっているのなら、不登校になどなってはいないだろうに。
 それでも不思議なことに、義父も妹も口裏を合わせたかのように笑みを浮かべ、行ってもいない学校の行事について、競い合うようにあれこれ語り始めた。
 もちろん、『昨日』のぼくはころり、とだまされ、いちいち感心している。
 実情を知っているぼくには、義父と妹の姿は痛々しく映る。
 やはり後ろめたいのか、妹は意識的に兄から視線をそらし、逆に義父は矢継ぎ早にことばを紡ぐ。
「……そうだ、ヤマト」
 何気ない風情で、義父が『昨日』のぼくに声をかけた。
「お父さんのお墓にも、ちゃんとお参りして……いるのかな?」
 義父は『昨日』のぼくの顔色をうかがった。
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