38 / 43
episode"4"
episode4.5
しおりを挟む
ポラリスへと戻ったルミナとクレス。数日見なかったであろうその集落は来た時よりも強固に、強烈に。その姿を異様に見せていた。
もとより立っていた異様な材質の建築物たちは、先の戦闘から立ち直っており、その城壁とも呼べる部分には今まで無かった武器達が頭を揃えて並んでいる。
側から見てしまえば実に異様。その一言であるが、彼らは人間としてMETSISに立ち向かおうとしている、反発精神からきている勇ましい異様さであることが見て取れる。
集落の城壁外へと送り届けられたルミナとクレスは片手間に集落に入ろうとしたが、どうも簡単にはいかない。
METSISの性質をよく知らない集落の門番が執拗に身体検査をし、持っている物を調べ、そしてようやく通された城壁内には、目を疑う光景が待っていた。
異常なまでに人が多い。
「あ、ルミナ!クレス!」
「おや、やっと帰ってきたのかい」
「タウリー、クラウド!!」
「ばあさん……相変わらず元気そうだな」
数日間とはいえ、なかなか戻ってこない二人を心配していた様子のタウリーとクラウド。ルミナとクレスの二人から、集落での出来事を共有する。
「へぇ~……あのMETSISと、数百年前から生き続けるあんたの生みの親の娘、ねぇ……こんな戦争よりよっぽど興味があるよ。是非行ってみたいもんだね」
「でもMETSISのサダルたちを守るっていっても……この状況じゃなかなか厳しそうだけど……」
「そういえばなんでこんな人が居るんだ?この集落、こんなに人いなかっただろ」
「……実は、僕たちが知らないうちに他の集落をサダルたちが占拠してたみたいで。そこから逃げてきた人たちがアルコルの噂を聞きつけて来たみたいなんだよ」
クレスの問いに小さな声でそう応えるタウリーには、何か言いたげな、心配そうな顔が見てとれた。
そして辺りの人々を見る。ここで配られた武器を片手に、まるでここに仇がいるかのような顔をした、恐らく命からがら逃げてきたであろう者たちが幾人もいた。その出立ちはまさしく狩人である。
「とりあえず移動しよっか。サザンクロスさんの家なら今は人が居ないはずだし、あの人もルミナとクレスのこと、心配してたからさ」
「そうですね、行きましょう」
◎◎◎
サザンクロスの家へと入ると、今までの喧騒が嘘のように静まり返り、サザンクロスの部屋へと通じる道にも誰一人として人がいなかった。
「サザンクロスさん!ルミナとクレス、帰ってきたよー!」
「……!!おお、帰ってきたか!無事で何よりだ……!」
その後、先ほどタウリーとクラウドに話したことをサザンクロスにも伝える。その中で、サダルたちを守ってほしいという部分に、眉を顰める。
「守ってほしい、か……。大分無茶な願いであるように聞こえるが……」
「あ、それに関してはルミナに一任して欲しい。あの資料通りにいけば上手くいくはずだから……!」
「……ほう。ルミナ、詳しく聞かせてくれないか」
イルミナの資料をもとに、ルミナがサザンクロスへと説明をする。その方法に誰もが唖然としていたが、サザンクロスだけは何やら訝しむように聞いていた。
やがて説明を終えると、サザンクロスがルミナに質問する。
「……本当にこの方法で、彼女たちを生捕りに出来るのか……?」
「はい。彼女たちを守ることが出来るそうです。不確かではありますけど……」
「……それは、君の命を危険に脅かすことになるはずだ。それでも、君にやる価値はあるのか?」
「分かりません……でも、ここで守らなければきっと、後悔すると思うのです。だから、私は——」
「敵襲ー!敵襲ー!!」
外で門番が声を張り上げる。
「METSISだ!!!METSISどもが来たぞぉー!!!」
もとより立っていた異様な材質の建築物たちは、先の戦闘から立ち直っており、その城壁とも呼べる部分には今まで無かった武器達が頭を揃えて並んでいる。
側から見てしまえば実に異様。その一言であるが、彼らは人間としてMETSISに立ち向かおうとしている、反発精神からきている勇ましい異様さであることが見て取れる。
集落の城壁外へと送り届けられたルミナとクレスは片手間に集落に入ろうとしたが、どうも簡単にはいかない。
METSISの性質をよく知らない集落の門番が執拗に身体検査をし、持っている物を調べ、そしてようやく通された城壁内には、目を疑う光景が待っていた。
異常なまでに人が多い。
「あ、ルミナ!クレス!」
「おや、やっと帰ってきたのかい」
「タウリー、クラウド!!」
「ばあさん……相変わらず元気そうだな」
数日間とはいえ、なかなか戻ってこない二人を心配していた様子のタウリーとクラウド。ルミナとクレスの二人から、集落での出来事を共有する。
「へぇ~……あのMETSISと、数百年前から生き続けるあんたの生みの親の娘、ねぇ……こんな戦争よりよっぽど興味があるよ。是非行ってみたいもんだね」
「でもMETSISのサダルたちを守るっていっても……この状況じゃなかなか厳しそうだけど……」
「そういえばなんでこんな人が居るんだ?この集落、こんなに人いなかっただろ」
「……実は、僕たちが知らないうちに他の集落をサダルたちが占拠してたみたいで。そこから逃げてきた人たちがアルコルの噂を聞きつけて来たみたいなんだよ」
クレスの問いに小さな声でそう応えるタウリーには、何か言いたげな、心配そうな顔が見てとれた。
そして辺りの人々を見る。ここで配られた武器を片手に、まるでここに仇がいるかのような顔をした、恐らく命からがら逃げてきたであろう者たちが幾人もいた。その出立ちはまさしく狩人である。
「とりあえず移動しよっか。サザンクロスさんの家なら今は人が居ないはずだし、あの人もルミナとクレスのこと、心配してたからさ」
「そうですね、行きましょう」
◎◎◎
サザンクロスの家へと入ると、今までの喧騒が嘘のように静まり返り、サザンクロスの部屋へと通じる道にも誰一人として人がいなかった。
「サザンクロスさん!ルミナとクレス、帰ってきたよー!」
「……!!おお、帰ってきたか!無事で何よりだ……!」
その後、先ほどタウリーとクラウドに話したことをサザンクロスにも伝える。その中で、サダルたちを守ってほしいという部分に、眉を顰める。
「守ってほしい、か……。大分無茶な願いであるように聞こえるが……」
「あ、それに関してはルミナに一任して欲しい。あの資料通りにいけば上手くいくはずだから……!」
「……ほう。ルミナ、詳しく聞かせてくれないか」
イルミナの資料をもとに、ルミナがサザンクロスへと説明をする。その方法に誰もが唖然としていたが、サザンクロスだけは何やら訝しむように聞いていた。
やがて説明を終えると、サザンクロスがルミナに質問する。
「……本当にこの方法で、彼女たちを生捕りに出来るのか……?」
「はい。彼女たちを守ることが出来るそうです。不確かではありますけど……」
「……それは、君の命を危険に脅かすことになるはずだ。それでも、君にやる価値はあるのか?」
「分かりません……でも、ここで守らなければきっと、後悔すると思うのです。だから、私は——」
「敵襲ー!敵襲ー!!」
外で門番が声を張り上げる。
「METSISだ!!!METSISどもが来たぞぉー!!!」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
熱い風の果てへ
朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。
カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。
必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。
そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。
まさか――
そのまさかは的中する。
ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。
※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。
マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。
おいしいご飯がたくさん出てきます。
いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。
助けられたり、恋をしたり。
愛とやさしさののあふれるお話です。
なろうにも投降中
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる