上 下
34 / 43
episode"4"

episode4.1

しおりを挟む



          ♒︎












 ポラリス集落を襲撃してからまる一週間が経った。こちらもあまり模倣アンドロイドや対兵器ロボット、そしてMETSISの仲間を消費するわけにはいかない、ということであの数で襲撃したが——



「……想像以上に被害を出せていなかった。何より戦闘員が使っていた武器……あれは——」

「どうしたよサダル。そんな考え込んで」



 少し考えつつ呟いていると、アルデスがこちらに来た。どうやら相当考えているように見えたらしい。



「いや別に、そんなに考えてないさ。どうかしたか?」

「……他のMETSIS、どこにいったんだろうなぁ、って。ほら、今の今まで連絡ついてた奴も、パッタリ途絶えただろ?まさか、ハルみたいに——」

「いや、それはないだろう。もしそれなら、あの場でハルとルミナ以外にも居たはずだ。METSISの戦闘力は人間を遥かに凌駕するもの。であればあそこに居ないのは不自然だ」

「……?そ、そうか。アタシ、頭良くないからなぁ~……それで、次のアテはあるのか?」

「……少し兵器集めに勤しむとしよう。テレスもあの有り様だからな。不用意に集落を襲って、返り討ちにあったなんてことがあれば、計画が歪むからな……それで、ルーノは?」



 サダルがそう聞くと、アルデスは奥にある民家の一部をグッドサインで差した。



「テレスにつきっきりさ。アイツ、まさかテレスがあそこまでやられるなんて考えてなかったらしいぜ……それにしても、テレスがあの様だ……いよいよ箱とのタイマンが楽しみだぜ……!!」

「ふふ、死ぬなよ?」

「誰に言ってんだ。このアルデス様がそう易々と負けるわけねぇんだよ」

「ははっそうか。期待しているよ」

「へへっ、任せな!」















 ——占領した"シリウスの集落"にて、グータッチを交わす二人。その側で、既に"アルコル"は動いていた——。

















——そして、あの襲撃から三週間が経とうとしていたある日、ルミナとクレスだけ別行動として、山岳地帯へと赴いていた——。













「ハァハァ、ルミナ……ちょっと休憩しよう」

「ハァハァ、そう、ですね……それにしても暑いですね」



 両者ともに汗をかき、火照った身体を冷やすために木陰に入り、休憩をする。

ルミナが服の中にも風を入れようと服をパタパタさせる。そして碧髪を掻き分け、耳にかける。

その仕草に、クレスは少しだけいや、だいぶ穏やかではない。そんなクレスにルミナが話しかける。



「クレス、かなり顔が赤いですが……大丈夫ですか?」

「えっ!?い、いや……なんか凄い暑いな、今日」

「そうですね……まだ目的地まで遠いですから、ゆっくり——いや、なるべく急ぎましょう」

「……ああ、そうだな!」













——この二人が別行動しているのは、サザンクロスがルミナに話したあの"イルミナ・メルトウェル"が理由である——













 朝日が昇り始める中サザンクロスからルミナに告げられたのは、自身のモデルとなった人物が生きている、ということであった。

そもそも自身を作った博士に娘がいることすら知らなかったルミナからすれば、告げられた内容は驚きのものであった。



「私達の集落は、他の集落とは違う文化そして、違う技術で構成されているのは、見てもらえれば分かると思う」

「……はい」



 そこで一息つき、サザンクロスは朝日を見つめる。



「私が少年であったある日、未来視によってこの集落にあるアンドロイドがやって来ることが分かった。そしてそれがMETSISであることも……」

「METSIS、ですか?」

「ああそうとも。その存在を、あの一冊で知っていた私にとって衝撃的なものだった。まさか数百年の時を経てなお、健在しているとは思っていなかったから」

「そして、この集落にMETSISが来た……」



 静かに頷くと、話を続ける。



「彼女は、自分が何処から来たのか。そして彼女の暮らす場所でどのような技術を使っているのか、ということだけを伝えて帰っていった……彼女がなぜここに来たのか、そしてなぜ私に技術を伝えたのか、今も分からないでいる」

「不思議な、話です……まるで何かに導かれているようですね……」

「全く、その通りだ。でもその情報、技術を無駄にするわけにもいかなかったから、この集落でその技術を使っている、というわけだ。それを改良したのが、あの金属質の箱、"アルシス"なんだよ」

「アルシス……」

「このアンドロイド達との抗争が終わったら、是非行くと良い。METSISが言っていた、山岳地帯の少し開けた場所にあるという、その村に」

「……」



 この時、ルミナには言いようのない感覚が纏わりついていた。やがてその感覚が、ルミナに口を動かさせた。



「……いえ、すぐに行ってきます」



 その発言に、サザンクロスが驚き宥める。



「どうしたんだ急に?……それに——」

「言いたいことは分かります。私が別行動をして、万が一アンドロイド達——サダル達が攻め込んだ時、どうしようもありません。でも!……今、行かなければダメ、なんだと思います」

「……君には、それが分かるのかい」

「いえ、でも……何故だか、そう感じるのです」



 その言葉に、サザンクロスもルミナも黙る。



「……そうか。なら、行くかどうかは私以外にも他の……君の仲間にも相談してから行くと良いよ。なんの相談もなしに、行かれても困るだろうから」

「そうします」













——その後、ルミナはタウリー達にもその事を話し、一通り驚かれた後、話し合ってルミナとクレスが向かうことになったのである——













 山岳部を登り、時に降りながら目的地へと進んでいく。進んで行くごとに、自然が深まっていく。

夜になったらクラウドが開発し直した収納庫で一晩明かす。その間ご飯を食べながらルミナとクレスは雑談した。アンドロイドとの抗争など忘れて——。

 やがて朝になり、また昨日と同じように歩き出す。ただ、これを続ける。

朝になったら歩き出し、ご飯を食べたり休憩をしたりしながら、しかし早く目的地に着くために少し、急ぎながら進む。

そして夜になったら収納庫で一夜を過ごす。そんな毎日。

 そして六日目の朝、歩き出そうと収納庫の扉の先に現れたのは——



 酷く強い、雨であった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もしもしお時間いいですか?

ベアりんぐ
ライト文芸
 日常の中に漠然とした不安を抱えていた中学1年の智樹は、誰か知らない人との繋がりを求めて、深夜に知らない番号へと電話をしていた……そんな中、繋がった同い年の少女ハルと毎日通話をしていると、ハルがある提案をした……。  2人の繋がりの中にある感情を、1人の視点から紡いでいく物語の果てに、一体彼らは何をみるのか。彼らの想いはどこへ向かっていくのか。彼の数年間を、見えないレールに乗せて——。 ※こちらカクヨム、小説家になろうでも掲載しています。

宇宙との交信

三谷朱花
ライト文芸
”みはる”は、宇宙人と交信している。 壮大な機械……ではなく、スマホで。 「M1の会合に行く?」という謎のメールを貰ったのをきっかけに、“宇宙人”と名乗る相手との交信が始まった。 もとい、”宇宙人”への八つ当たりが始まった。 ※毎日14時に公開します。

カメラとわたしと自衛官〜不憫なんて言わせない!カメラ女子と自衛官の馴れ初め話〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
「かっこいい……あのボディ。かわいい……そのお尻」ため息を漏らすその視線の先に何がある? たまたま居合わせたイベント会場で空を仰ぐと、白い煙がお花を描いた。見上げた全員が歓声をあげる。それが自衛隊のイベントとは知らず、気づくとサイン会に巻き込まれて並んでいた。  ひょんな事がきっかけで、カメラにはまる女の子がファインダー越しに見つけた世界。なぜかいつもそこに貴方がいた。恋愛に鈍感でも被写体には敏感です。恋愛よりもカメラが大事! そんか彼女を気長に粘り強く自分のテリトリーに引き込みたい陸上自衛隊員との恋のお話? ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。 ※もちろん、フィクションです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

医者兄と病院脱出の妹(フリー台本)

ライト文芸
生まれて初めて大病を患い入院中の妹 退院が決まり、試しの外出と称して病院を抜け出し友達と脱走 行きたかったカフェへ それが、主治医の兄に見つかり、その後体調急変

バカな元外交官の暗躍

ジャーケイ
ライト文芸
元外交の音楽プロデューサーのKAZが、医学生と看護師からなるレゲエユニット「頁&タヨ」と出会い、音楽界の最高峰であるグラミー賞を目指すプロジェクトを立ち上げます。ジャマイカ、NY、マイアミでのレコーディングセッションでは制作チームとアーティストたちが真剣勝負を繰り広げます。この物語は若者たちの成長を描きながら、ラブコメの要素を交え山あり谷なしの明るく楽しい文調で書かれています。長編でありながら一気に読めるライトノベル、各所に驚きの伏線がちりばめられており、エンタティメントに徹した作品です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

Husband's secret (夫の秘密)

設樂理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! 夫のカノジョ / 垣谷 美雨 さま(著) を読んで  Another Storyを考えてみました。 むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...