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episode"3"
episode3.7
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全員がお辞儀をした男に目を奪われる。落ち着いた低音域の声に、目を引く美貌。そして立ち居振る舞い、その全てが神秘的。
立ち止まった五人を他所目にホープだけがとことことその男、"サザンクロス・アステリズム"の足元へと歩いていく。
足元でサザンクロスに甲高く吠えるホープを、五人はただただ見守るしかなかった。
「犬はとても好奇心旺盛です。我々人間もそのようだと良い、という訳にはいかないようですが……すみません、ずっと立たせっぱなしで。こちらへどうぞ。人数分の席があります」
そういうと男はホープに自身の足が当たらないようスムーズにすり抜けるようにして暗闇へと歩いていく。
その姿でやっと動き出したのはタウリーだった。
「……なんだかこの集落が、なんでこんなに目を引くのか、分かった気がするよ」
「アンドロイドとは違う何か……別の力を感じます」
タウリーとハルがそう言って、サザンクロスの後を追う。それにつられるようにクラウドも黙って歩き始める。
一方、ルミナはずっと立ち尽くしたままであった。そこにクレスが声をかける。
「どうした、ルミナ。行かないのか」
そう言うクレスに一度向き合って、ルミナがようやっと口を開く。
「なぜでしょう……彼には会ったことがないのに、懐かしいような。そんな感じがします」
「会ったことがないのにか?」
「はい。なぜでしょう……」
そんなルミナの手を取り、クレスがルミナの手を引く。
「とりあえず行こう。彼…‥サザンクロスと話せば何か分かるかも知れない」
「……そう、ですね。はい、行きましょう」
そうして、歩き出す。暗闇の中道など見えるはずもないのに、何故か自然とサザンクロスが歩いた跡が分かる。
その足跡を辿っていくと、既に椅子に座るタウリー、ハル、クラウドがいた。
その向かいに座る、サザンクロスに目線がいく。今も足元で戯れているホープを、どこまでも許すような優しい目で見ている。
そんなことを見ながら残り空いていた椅子に、二人が座る。それを確認したサザンクロスが、その口を動かす。
「まずは改めて、この未開で他の集落との連絡の絶たれた地まで、本当によく来て下さいました。……やはりあなたでしたか、ルミナ」
「「「「!!」」」」
「……なぜ、私の名前を」
「怖がらせてしまったのなら申し訳ない。これが私の力なのです。"透視"、と言えば良いでしょうか」
一度咳払いをして、話を続ける。
「この透視に加えて、私には"未来を見る力"があるのです。この地にあなた達が来ることもそして、他のアンドロイド、ロボット、METSISが目覚めることも……」
この話を聞いていたルミナ達は既に、硬直していた。
「質問は後でいくらでも受けます。しかしまず先に、私の話を聞いていただきたい。……この世界に訪れるかも知れない、最悪のシナリオの話を——。」
十
私のこの力は元々備わっており、幼い頃から今までずっと。この集落で神格化され続けて来ました。
そんな扱いに私も、自分に出来ることがあればそれを全力で遂行したい、そう思いながら日々、人々に訪れる可能性を見出してきました。
しかしある日——。あれは私が一日を終える就寝のタイミングです。今までにない巨大な脳波が、私を襲いました。
今までにない大予言だと感じた私は、決してそのことを忘れぬよう、いつも使っている手帳に記す準備をしました。これまで一度もそんなことをしようとしたことはありません。あの時が初めてです。
そしてその大予言、私の脳に流れ込んだビジョン。それは——
アンドロイド達がこの大陸を超え、世界中の人間を完全統制し、支配する、というものでした。
……私の予言は、どんな些細なことでも当たります。だからこそ、私はこの予言に大変な危機感を持ちました。もし、そんな未来が訪れたなら——、と。
そこで私は、私の一族に代々引き継がれて来たある一冊の本を読むことにしました。そこで大変興味深いものを見つけたのです。
決まりゆく、未来に抗う力——。
この一文を見つけ、それに関する情報を集めて行った先に、"ルミナ"、あなたの情報に行き着いたのです。
その情報を見たからなのか、はたまた運命か。あの最悪の予言を覆すようにして出た予言が、あなた達旅人が、出て来ました。そしてこのポラリスの地に来ることも——。
◎◎◎
「この私の力を、理解していなくても良い。しかし、この未来だけはどうしても避けたいのだ。そしてルミナ、あなたがその鍵になるだろう」
サザンクロスの壮大な話に、ルミナ達は呆気に取られていた。しかしここで、サダル達、アンドロイドがしようとしているニュイ・エトワレ計画が、全員の脳裏によぎった。
「……ありえなくはない、のよね。実際サダルがやろうとしてること、まさにこの人が言ってたことと一致してるし……」
「でもまさかこの話が、ここで出てくるとはね……」
「……」
ルミナは言葉を発さない。あまりの重要性に、言葉を失っていた。そこに、タウリーが話しかける。
「……ルミナが大事なのは変わらないよ。ルミナは、どうしたい?」
「私は……」
全員の視線が注がれる。一人一人、ルミナを覗く目は違うものだ。しかし、全員が同じものを見ている。
やがて、ルミナが口を開く。
「私は……まだ自分が何者かもろくに分かっていません。自分がどうしたいのかも……でも、人の可能性を否定したくない……!」
「……ルミナ、そして旅人達。私の願い、この最悪の未来を、変えてくれるか?」
ルミナ達全員が頷く。
「アタシゃ世界なんてのはどーでも良いけどねぇ……アタシの研究の邪魔されちゃあ敵わないからね」
「俺もまだ旅、したいしな」
「私もヤツらとは根本の考えが違う。ヤツらを止められるなら……私も覚悟を決めるわ」
「ルミナ、行こう。このまま旅を強制終了なんて、させる訳にはいかないからね!」
「はい!」
全員の覚悟が決まる。今まで少しばかりの抵抗から、徹底抗戦へと動きだす。
そんな中、一人の集落の住民が館のこの一室へと、息も絶え絶えに駆け込んできた。
「サザンクロス様ぁー!!……ハァハァ、集落が……集落が!何者かに襲撃されましたぁ!!!」
その一報に、その場にいた全員が虚を突かれていた。
こうして、終末への歩みが、始まることとなる——。
立ち止まった五人を他所目にホープだけがとことことその男、"サザンクロス・アステリズム"の足元へと歩いていく。
足元でサザンクロスに甲高く吠えるホープを、五人はただただ見守るしかなかった。
「犬はとても好奇心旺盛です。我々人間もそのようだと良い、という訳にはいかないようですが……すみません、ずっと立たせっぱなしで。こちらへどうぞ。人数分の席があります」
そういうと男はホープに自身の足が当たらないようスムーズにすり抜けるようにして暗闇へと歩いていく。
その姿でやっと動き出したのはタウリーだった。
「……なんだかこの集落が、なんでこんなに目を引くのか、分かった気がするよ」
「アンドロイドとは違う何か……別の力を感じます」
タウリーとハルがそう言って、サザンクロスの後を追う。それにつられるようにクラウドも黙って歩き始める。
一方、ルミナはずっと立ち尽くしたままであった。そこにクレスが声をかける。
「どうした、ルミナ。行かないのか」
そう言うクレスに一度向き合って、ルミナがようやっと口を開く。
「なぜでしょう……彼には会ったことがないのに、懐かしいような。そんな感じがします」
「会ったことがないのにか?」
「はい。なぜでしょう……」
そんなルミナの手を取り、クレスがルミナの手を引く。
「とりあえず行こう。彼…‥サザンクロスと話せば何か分かるかも知れない」
「……そう、ですね。はい、行きましょう」
そうして、歩き出す。暗闇の中道など見えるはずもないのに、何故か自然とサザンクロスが歩いた跡が分かる。
その足跡を辿っていくと、既に椅子に座るタウリー、ハル、クラウドがいた。
その向かいに座る、サザンクロスに目線がいく。今も足元で戯れているホープを、どこまでも許すような優しい目で見ている。
そんなことを見ながら残り空いていた椅子に、二人が座る。それを確認したサザンクロスが、その口を動かす。
「まずは改めて、この未開で他の集落との連絡の絶たれた地まで、本当によく来て下さいました。……やはりあなたでしたか、ルミナ」
「「「「!!」」」」
「……なぜ、私の名前を」
「怖がらせてしまったのなら申し訳ない。これが私の力なのです。"透視"、と言えば良いでしょうか」
一度咳払いをして、話を続ける。
「この透視に加えて、私には"未来を見る力"があるのです。この地にあなた達が来ることもそして、他のアンドロイド、ロボット、METSISが目覚めることも……」
この話を聞いていたルミナ達は既に、硬直していた。
「質問は後でいくらでも受けます。しかしまず先に、私の話を聞いていただきたい。……この世界に訪れるかも知れない、最悪のシナリオの話を——。」
十
私のこの力は元々備わっており、幼い頃から今までずっと。この集落で神格化され続けて来ました。
そんな扱いに私も、自分に出来ることがあればそれを全力で遂行したい、そう思いながら日々、人々に訪れる可能性を見出してきました。
しかしある日——。あれは私が一日を終える就寝のタイミングです。今までにない巨大な脳波が、私を襲いました。
今までにない大予言だと感じた私は、決してそのことを忘れぬよう、いつも使っている手帳に記す準備をしました。これまで一度もそんなことをしようとしたことはありません。あの時が初めてです。
そしてその大予言、私の脳に流れ込んだビジョン。それは——
アンドロイド達がこの大陸を超え、世界中の人間を完全統制し、支配する、というものでした。
……私の予言は、どんな些細なことでも当たります。だからこそ、私はこの予言に大変な危機感を持ちました。もし、そんな未来が訪れたなら——、と。
そこで私は、私の一族に代々引き継がれて来たある一冊の本を読むことにしました。そこで大変興味深いものを見つけたのです。
決まりゆく、未来に抗う力——。
この一文を見つけ、それに関する情報を集めて行った先に、"ルミナ"、あなたの情報に行き着いたのです。
その情報を見たからなのか、はたまた運命か。あの最悪の予言を覆すようにして出た予言が、あなた達旅人が、出て来ました。そしてこのポラリスの地に来ることも——。
◎◎◎
「この私の力を、理解していなくても良い。しかし、この未来だけはどうしても避けたいのだ。そしてルミナ、あなたがその鍵になるだろう」
サザンクロスの壮大な話に、ルミナ達は呆気に取られていた。しかしここで、サダル達、アンドロイドがしようとしているニュイ・エトワレ計画が、全員の脳裏によぎった。
「……ありえなくはない、のよね。実際サダルがやろうとしてること、まさにこの人が言ってたことと一致してるし……」
「でもまさかこの話が、ここで出てくるとはね……」
「……」
ルミナは言葉を発さない。あまりの重要性に、言葉を失っていた。そこに、タウリーが話しかける。
「……ルミナが大事なのは変わらないよ。ルミナは、どうしたい?」
「私は……」
全員の視線が注がれる。一人一人、ルミナを覗く目は違うものだ。しかし、全員が同じものを見ている。
やがて、ルミナが口を開く。
「私は……まだ自分が何者かもろくに分かっていません。自分がどうしたいのかも……でも、人の可能性を否定したくない……!」
「……ルミナ、そして旅人達。私の願い、この最悪の未来を、変えてくれるか?」
ルミナ達全員が頷く。
「アタシゃ世界なんてのはどーでも良いけどねぇ……アタシの研究の邪魔されちゃあ敵わないからね」
「俺もまだ旅、したいしな」
「私もヤツらとは根本の考えが違う。ヤツらを止められるなら……私も覚悟を決めるわ」
「ルミナ、行こう。このまま旅を強制終了なんて、させる訳にはいかないからね!」
「はい!」
全員の覚悟が決まる。今まで少しばかりの抵抗から、徹底抗戦へと動きだす。
そんな中、一人の集落の住民が館のこの一室へと、息も絶え絶えに駆け込んできた。
「サザンクロス様ぁー!!……ハァハァ、集落が……集落が!何者かに襲撃されましたぁ!!!」
その一報に、その場にいた全員が虚を突かれていた。
こうして、終末への歩みが、始まることとなる——。
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