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episode"3"
episode3.5
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四人と一匹、既に道という道はなくただただ道無き未知が広がっているだけの中を歩いていた。
それからは汚染地にぶつかれば進路を変え、また汚染地にぶつかれば変えを続けている。
途中、開けた場所でクラウドが持っていてその後壊れてしまった超次元収納庫を直したものである"超次元収納庫・改"で夜を過ごした。
そして朝になったらまた歩き始める。これを数日間続けていた。そんなある昼下がりのこと——。
「これ、いつになったら着くんだろうねぇ~アタシゃ暇で仕方ないよ……」
「そりゃ道なんてとっくに途切れてるんだから、簡単に着くわけないよ……」
「クラウド、大丈夫ですか?」
「……まだガキどもに心配されるような歳じゃないのさ、アタシは。これぐらいわけないよ」
「なら良いのですが……」
そんな会話をしながらひたすら歩く。少しずつ休憩を挟みながら、ポラリスの地へと至るであろう未知を歩いていた。すると——
「おい、あれ人じゃないか?」
クレスが何かを発見した。その言葉に、クレスが指差す方を全員が見た。
何やら人のような、そう見えるものが動いている。こんな草木がおおい茂り、横に汚染された区域がすぐある場所に居るのは不自然である。
全員が息を潜めその、人のようなものにバレないように近くにあった岩陰に隠れる。その、人のようなものは、自身の足元にいる小動物に何かをしているようだった。
「……あれは、女か……?」
「しっ!クレス声が大きい!」
「それにしても……こんな所で何してるんだろうねぇ」
「……っ!反応してる……!クラウド、彼女はアンドロイド"METSIS"です!」
「「「えっ!?」」」
「そこにいるのは誰!?」
少女がルミナ達に気づく。その声に、思わず岩陰に隠れていた全員が体勢を崩し、転がるように岩陰から出てしまった。
ホープだけは四足でとことこと歩き、少女に向けて小さく鳴いた。少女が近づく。
「あなた達、何者?それにそこのあなた、その光は……?」
「……あなたはアンドロイド"METSIS"ですよね?サダルと同じ——」
サダルの名前を出した途端、少女の表情は険しいものとなった。そしてルミナを睨む。
「あなた達……まさか、サダルの仲間っ!?くっ、なら戦うしか……!」
「ま、待ってください!私達はサダルの仲間ではないです!」
「……え?でも……」
少し戸惑う素振りを見せた少女にクラウドが話しかける。
「アタシらはむしろ、ヤツとは決別した方の人間だ。だからもし、アンタがヤツの敵だってんならアタシらは仲間だよ」
「……なら、そこのMETSISはなんですか?どうやら、私と共鳴しているみたいだけど……私、あなたのようなMETSIS知らないわよ」
「……私は、スタリング・メルトウェルが開発したMETSIS、ルミナです」
少女の表情が驚きに染まる。信じられないものを見た、といったような顔だ。
「……あなたが、ルミナ?……サダルが探していた、"ニュイ・エトワレ"の箱……」
「サダルと連絡手段があるのですか」
「いや、これは一方的にアイツから送られてきた情報よ。私からは一切連絡してないわ」
そう言って、自身の身長に合わない程長い白髪をはらった。そしてもう一度、ルミナにその冷ややかな緑眼を向けた。
「あなたがあのルミナなのね……サダルからの通信で、あなたと戦ったって聞いたわ。それから……見つけ次第、捕獲しろ、ともね」
「!!」
その発言に、ルミナが戦闘体勢を取る。共鳴の時とは違う光を関節部から多量に排気しようとしていた。
しかしその行動に少女は、あら、勘違いさせてごめんなさい、と言い、話を続けた。
「私は、アイツのやりたい"ニュイ・エトワレ計画"をやりたいとは思わない。だから連絡も絶って、今は行方をくらませているの。だから私は、どちらかというとあなた達の味方ってこと」
「……?なぜやりたくないのですか?」
「私は……戦いなんてしたくないし、人間を苦しめるようなことはしたくないの」
「ニュイ・エトワレってのは、そういう計画なのかい?」
そこに、クラウドが割って入る。すると少女は、その問いに対して答えた。
「ニュイ・エトワレ計画は、大まかに言えば"人類の、アンドロイドによる完全統制社会の実現"よ」
「え……」
「けっ!まるで、御伽話じゃないか」
「でも、ルミナがいればそれが出来る……」
「……それだけ、ルミナの力は絶大なものなのか?」
クレスがこう言うと、少女は、少し違う、と言って首を横に振った。そしてこう続けた。
「ルミナの力が、私達METSIS十二人の誰よりもあることもそうだけど、どうもそれだけじゃないみたい。私達を作った博士が、そんなことを言っていた……」
「サダルは、それを実現させようとしているのですか……?」
「ええ。彼女は博士の夢であるニュイ・エトワレ計画を、近いうちに実行に移すはずよ。もしかしたらもう、行動しているかも」
そこまで話すと、一同の間に静寂が訪れる。そこに虫の鳴き声や風の音が巡る。
ホープは少女の足元にいた小動物と戯れていた。楽しそうに顔を寄せ合い、小さきほのぼの空間である。
少女が口を開く。
「今まで沈黙を貫いてきたけど、そろそろ動き出さないとサダルが計画を推し進めるだろうと思って、仲間を探していたところなの。……あなた達も、サダルとは対立しているのよね?……私と一緒に、ヤツを止めて欲しい。お願い、できないかしら……?」
この願いにルミナ達は固まっていたが、やがてルミナが一歩、少女に近づく。そして少女にその灰眼を向けた。
「私は……まだあまり自分がよく分かっていないような未熟者です。でも、今まで旅をして来てお世話になった人、こうして共に旅をする仲間を、アンドロイドに一方的に統制させることは許せないのです……!」
「ルミナ……」
「……全く、大した娘だよ。アンタは」
「俺も、自由を拘束されるなんてのは、御免だな」
ルミナに続き、タウリー、クラウドそしてクレスも少女に近づき、ルミナの横に並んだ。
少女は今まで見せなかった微笑みを見せながら、ルミナへと手を向ける。ルミナもその手を手で取って、握手を交わした。
「改めて、私は"ハル"、METSISよ。これからよろしく、ルミナ」
「こちらこそ、ハル」
アンドロイド達が握手する。傾き始めた日差しが熱く、夏の訪れを知らせていた。
それからは汚染地にぶつかれば進路を変え、また汚染地にぶつかれば変えを続けている。
途中、開けた場所でクラウドが持っていてその後壊れてしまった超次元収納庫を直したものである"超次元収納庫・改"で夜を過ごした。
そして朝になったらまた歩き始める。これを数日間続けていた。そんなある昼下がりのこと——。
「これ、いつになったら着くんだろうねぇ~アタシゃ暇で仕方ないよ……」
「そりゃ道なんてとっくに途切れてるんだから、簡単に着くわけないよ……」
「クラウド、大丈夫ですか?」
「……まだガキどもに心配されるような歳じゃないのさ、アタシは。これぐらいわけないよ」
「なら良いのですが……」
そんな会話をしながらひたすら歩く。少しずつ休憩を挟みながら、ポラリスの地へと至るであろう未知を歩いていた。すると——
「おい、あれ人じゃないか?」
クレスが何かを発見した。その言葉に、クレスが指差す方を全員が見た。
何やら人のような、そう見えるものが動いている。こんな草木がおおい茂り、横に汚染された区域がすぐある場所に居るのは不自然である。
全員が息を潜めその、人のようなものにバレないように近くにあった岩陰に隠れる。その、人のようなものは、自身の足元にいる小動物に何かをしているようだった。
「……あれは、女か……?」
「しっ!クレス声が大きい!」
「それにしても……こんな所で何してるんだろうねぇ」
「……っ!反応してる……!クラウド、彼女はアンドロイド"METSIS"です!」
「「「えっ!?」」」
「そこにいるのは誰!?」
少女がルミナ達に気づく。その声に、思わず岩陰に隠れていた全員が体勢を崩し、転がるように岩陰から出てしまった。
ホープだけは四足でとことこと歩き、少女に向けて小さく鳴いた。少女が近づく。
「あなた達、何者?それにそこのあなた、その光は……?」
「……あなたはアンドロイド"METSIS"ですよね?サダルと同じ——」
サダルの名前を出した途端、少女の表情は険しいものとなった。そしてルミナを睨む。
「あなた達……まさか、サダルの仲間っ!?くっ、なら戦うしか……!」
「ま、待ってください!私達はサダルの仲間ではないです!」
「……え?でも……」
少し戸惑う素振りを見せた少女にクラウドが話しかける。
「アタシらはむしろ、ヤツとは決別した方の人間だ。だからもし、アンタがヤツの敵だってんならアタシらは仲間だよ」
「……なら、そこのMETSISはなんですか?どうやら、私と共鳴しているみたいだけど……私、あなたのようなMETSIS知らないわよ」
「……私は、スタリング・メルトウェルが開発したMETSIS、ルミナです」
少女の表情が驚きに染まる。信じられないものを見た、といったような顔だ。
「……あなたが、ルミナ?……サダルが探していた、"ニュイ・エトワレ"の箱……」
「サダルと連絡手段があるのですか」
「いや、これは一方的にアイツから送られてきた情報よ。私からは一切連絡してないわ」
そう言って、自身の身長に合わない程長い白髪をはらった。そしてもう一度、ルミナにその冷ややかな緑眼を向けた。
「あなたがあのルミナなのね……サダルからの通信で、あなたと戦ったって聞いたわ。それから……見つけ次第、捕獲しろ、ともね」
「!!」
その発言に、ルミナが戦闘体勢を取る。共鳴の時とは違う光を関節部から多量に排気しようとしていた。
しかしその行動に少女は、あら、勘違いさせてごめんなさい、と言い、話を続けた。
「私は、アイツのやりたい"ニュイ・エトワレ計画"をやりたいとは思わない。だから連絡も絶って、今は行方をくらませているの。だから私は、どちらかというとあなた達の味方ってこと」
「……?なぜやりたくないのですか?」
「私は……戦いなんてしたくないし、人間を苦しめるようなことはしたくないの」
「ニュイ・エトワレってのは、そういう計画なのかい?」
そこに、クラウドが割って入る。すると少女は、その問いに対して答えた。
「ニュイ・エトワレ計画は、大まかに言えば"人類の、アンドロイドによる完全統制社会の実現"よ」
「え……」
「けっ!まるで、御伽話じゃないか」
「でも、ルミナがいればそれが出来る……」
「……それだけ、ルミナの力は絶大なものなのか?」
クレスがこう言うと、少女は、少し違う、と言って首を横に振った。そしてこう続けた。
「ルミナの力が、私達METSIS十二人の誰よりもあることもそうだけど、どうもそれだけじゃないみたい。私達を作った博士が、そんなことを言っていた……」
「サダルは、それを実現させようとしているのですか……?」
「ええ。彼女は博士の夢であるニュイ・エトワレ計画を、近いうちに実行に移すはずよ。もしかしたらもう、行動しているかも」
そこまで話すと、一同の間に静寂が訪れる。そこに虫の鳴き声や風の音が巡る。
ホープは少女の足元にいた小動物と戯れていた。楽しそうに顔を寄せ合い、小さきほのぼの空間である。
少女が口を開く。
「今まで沈黙を貫いてきたけど、そろそろ動き出さないとサダルが計画を推し進めるだろうと思って、仲間を探していたところなの。……あなた達も、サダルとは対立しているのよね?……私と一緒に、ヤツを止めて欲しい。お願い、できないかしら……?」
この願いにルミナ達は固まっていたが、やがてルミナが一歩、少女に近づく。そして少女にその灰眼を向けた。
「私は……まだあまり自分がよく分かっていないような未熟者です。でも、今まで旅をして来てお世話になった人、こうして共に旅をする仲間を、アンドロイドに一方的に統制させることは許せないのです……!」
「ルミナ……」
「……全く、大した娘だよ。アンタは」
「俺も、自由を拘束されるなんてのは、御免だな」
ルミナに続き、タウリー、クラウドそしてクレスも少女に近づき、ルミナの横に並んだ。
少女は今まで見せなかった微笑みを見せながら、ルミナへと手を向ける。ルミナもその手を手で取って、握手を交わした。
「改めて、私は"ハル"、METSISよ。これからよろしく、ルミナ」
「こちらこそ、ハル」
アンドロイド達が握手する。傾き始めた日差しが熱く、夏の訪れを知らせていた。
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