29 / 43
episode"3"
episode3.5
しおりを挟む
四人と一匹、既に道という道はなくただただ道無き未知が広がっているだけの中を歩いていた。
それからは汚染地にぶつかれば進路を変え、また汚染地にぶつかれば変えを続けている。
途中、開けた場所でクラウドが持っていてその後壊れてしまった超次元収納庫を直したものである"超次元収納庫・改"で夜を過ごした。
そして朝になったらまた歩き始める。これを数日間続けていた。そんなある昼下がりのこと——。
「これ、いつになったら着くんだろうねぇ~アタシゃ暇で仕方ないよ……」
「そりゃ道なんてとっくに途切れてるんだから、簡単に着くわけないよ……」
「クラウド、大丈夫ですか?」
「……まだガキどもに心配されるような歳じゃないのさ、アタシは。これぐらいわけないよ」
「なら良いのですが……」
そんな会話をしながらひたすら歩く。少しずつ休憩を挟みながら、ポラリスの地へと至るであろう未知を歩いていた。すると——
「おい、あれ人じゃないか?」
クレスが何かを発見した。その言葉に、クレスが指差す方を全員が見た。
何やら人のような、そう見えるものが動いている。こんな草木がおおい茂り、横に汚染された区域がすぐある場所に居るのは不自然である。
全員が息を潜めその、人のようなものにバレないように近くにあった岩陰に隠れる。その、人のようなものは、自身の足元にいる小動物に何かをしているようだった。
「……あれは、女か……?」
「しっ!クレス声が大きい!」
「それにしても……こんな所で何してるんだろうねぇ」
「……っ!反応してる……!クラウド、彼女はアンドロイド"METSIS"です!」
「「「えっ!?」」」
「そこにいるのは誰!?」
少女がルミナ達に気づく。その声に、思わず岩陰に隠れていた全員が体勢を崩し、転がるように岩陰から出てしまった。
ホープだけは四足でとことこと歩き、少女に向けて小さく鳴いた。少女が近づく。
「あなた達、何者?それにそこのあなた、その光は……?」
「……あなたはアンドロイド"METSIS"ですよね?サダルと同じ——」
サダルの名前を出した途端、少女の表情は険しいものとなった。そしてルミナを睨む。
「あなた達……まさか、サダルの仲間っ!?くっ、なら戦うしか……!」
「ま、待ってください!私達はサダルの仲間ではないです!」
「……え?でも……」
少し戸惑う素振りを見せた少女にクラウドが話しかける。
「アタシらはむしろ、ヤツとは決別した方の人間だ。だからもし、アンタがヤツの敵だってんならアタシらは仲間だよ」
「……なら、そこのMETSISはなんですか?どうやら、私と共鳴しているみたいだけど……私、あなたのようなMETSIS知らないわよ」
「……私は、スタリング・メルトウェルが開発したMETSIS、ルミナです」
少女の表情が驚きに染まる。信じられないものを見た、といったような顔だ。
「……あなたが、ルミナ?……サダルが探していた、"ニュイ・エトワレ"の箱……」
「サダルと連絡手段があるのですか」
「いや、これは一方的にアイツから送られてきた情報よ。私からは一切連絡してないわ」
そう言って、自身の身長に合わない程長い白髪をはらった。そしてもう一度、ルミナにその冷ややかな緑眼を向けた。
「あなたがあのルミナなのね……サダルからの通信で、あなたと戦ったって聞いたわ。それから……見つけ次第、捕獲しろ、ともね」
「!!」
その発言に、ルミナが戦闘体勢を取る。共鳴の時とは違う光を関節部から多量に排気しようとしていた。
しかしその行動に少女は、あら、勘違いさせてごめんなさい、と言い、話を続けた。
「私は、アイツのやりたい"ニュイ・エトワレ計画"をやりたいとは思わない。だから連絡も絶って、今は行方をくらませているの。だから私は、どちらかというとあなた達の味方ってこと」
「……?なぜやりたくないのですか?」
「私は……戦いなんてしたくないし、人間を苦しめるようなことはしたくないの」
「ニュイ・エトワレってのは、そういう計画なのかい?」
そこに、クラウドが割って入る。すると少女は、その問いに対して答えた。
「ニュイ・エトワレ計画は、大まかに言えば"人類の、アンドロイドによる完全統制社会の実現"よ」
「え……」
「けっ!まるで、御伽話じゃないか」
「でも、ルミナがいればそれが出来る……」
「……それだけ、ルミナの力は絶大なものなのか?」
クレスがこう言うと、少女は、少し違う、と言って首を横に振った。そしてこう続けた。
「ルミナの力が、私達METSIS十二人の誰よりもあることもそうだけど、どうもそれだけじゃないみたい。私達を作った博士が、そんなことを言っていた……」
「サダルは、それを実現させようとしているのですか……?」
「ええ。彼女は博士の夢であるニュイ・エトワレ計画を、近いうちに実行に移すはずよ。もしかしたらもう、行動しているかも」
そこまで話すと、一同の間に静寂が訪れる。そこに虫の鳴き声や風の音が巡る。
ホープは少女の足元にいた小動物と戯れていた。楽しそうに顔を寄せ合い、小さきほのぼの空間である。
少女が口を開く。
「今まで沈黙を貫いてきたけど、そろそろ動き出さないとサダルが計画を推し進めるだろうと思って、仲間を探していたところなの。……あなた達も、サダルとは対立しているのよね?……私と一緒に、ヤツを止めて欲しい。お願い、できないかしら……?」
この願いにルミナ達は固まっていたが、やがてルミナが一歩、少女に近づく。そして少女にその灰眼を向けた。
「私は……まだあまり自分がよく分かっていないような未熟者です。でも、今まで旅をして来てお世話になった人、こうして共に旅をする仲間を、アンドロイドに一方的に統制させることは許せないのです……!」
「ルミナ……」
「……全く、大した娘だよ。アンタは」
「俺も、自由を拘束されるなんてのは、御免だな」
ルミナに続き、タウリー、クラウドそしてクレスも少女に近づき、ルミナの横に並んだ。
少女は今まで見せなかった微笑みを見せながら、ルミナへと手を向ける。ルミナもその手を手で取って、握手を交わした。
「改めて、私は"ハル"、METSISよ。これからよろしく、ルミナ」
「こちらこそ、ハル」
アンドロイド達が握手する。傾き始めた日差しが熱く、夏の訪れを知らせていた。
それからは汚染地にぶつかれば進路を変え、また汚染地にぶつかれば変えを続けている。
途中、開けた場所でクラウドが持っていてその後壊れてしまった超次元収納庫を直したものである"超次元収納庫・改"で夜を過ごした。
そして朝になったらまた歩き始める。これを数日間続けていた。そんなある昼下がりのこと——。
「これ、いつになったら着くんだろうねぇ~アタシゃ暇で仕方ないよ……」
「そりゃ道なんてとっくに途切れてるんだから、簡単に着くわけないよ……」
「クラウド、大丈夫ですか?」
「……まだガキどもに心配されるような歳じゃないのさ、アタシは。これぐらいわけないよ」
「なら良いのですが……」
そんな会話をしながらひたすら歩く。少しずつ休憩を挟みながら、ポラリスの地へと至るであろう未知を歩いていた。すると——
「おい、あれ人じゃないか?」
クレスが何かを発見した。その言葉に、クレスが指差す方を全員が見た。
何やら人のような、そう見えるものが動いている。こんな草木がおおい茂り、横に汚染された区域がすぐある場所に居るのは不自然である。
全員が息を潜めその、人のようなものにバレないように近くにあった岩陰に隠れる。その、人のようなものは、自身の足元にいる小動物に何かをしているようだった。
「……あれは、女か……?」
「しっ!クレス声が大きい!」
「それにしても……こんな所で何してるんだろうねぇ」
「……っ!反応してる……!クラウド、彼女はアンドロイド"METSIS"です!」
「「「えっ!?」」」
「そこにいるのは誰!?」
少女がルミナ達に気づく。その声に、思わず岩陰に隠れていた全員が体勢を崩し、転がるように岩陰から出てしまった。
ホープだけは四足でとことこと歩き、少女に向けて小さく鳴いた。少女が近づく。
「あなた達、何者?それにそこのあなた、その光は……?」
「……あなたはアンドロイド"METSIS"ですよね?サダルと同じ——」
サダルの名前を出した途端、少女の表情は険しいものとなった。そしてルミナを睨む。
「あなた達……まさか、サダルの仲間っ!?くっ、なら戦うしか……!」
「ま、待ってください!私達はサダルの仲間ではないです!」
「……え?でも……」
少し戸惑う素振りを見せた少女にクラウドが話しかける。
「アタシらはむしろ、ヤツとは決別した方の人間だ。だからもし、アンタがヤツの敵だってんならアタシらは仲間だよ」
「……なら、そこのMETSISはなんですか?どうやら、私と共鳴しているみたいだけど……私、あなたのようなMETSIS知らないわよ」
「……私は、スタリング・メルトウェルが開発したMETSIS、ルミナです」
少女の表情が驚きに染まる。信じられないものを見た、といったような顔だ。
「……あなたが、ルミナ?……サダルが探していた、"ニュイ・エトワレ"の箱……」
「サダルと連絡手段があるのですか」
「いや、これは一方的にアイツから送られてきた情報よ。私からは一切連絡してないわ」
そう言って、自身の身長に合わない程長い白髪をはらった。そしてもう一度、ルミナにその冷ややかな緑眼を向けた。
「あなたがあのルミナなのね……サダルからの通信で、あなたと戦ったって聞いたわ。それから……見つけ次第、捕獲しろ、ともね」
「!!」
その発言に、ルミナが戦闘体勢を取る。共鳴の時とは違う光を関節部から多量に排気しようとしていた。
しかしその行動に少女は、あら、勘違いさせてごめんなさい、と言い、話を続けた。
「私は、アイツのやりたい"ニュイ・エトワレ計画"をやりたいとは思わない。だから連絡も絶って、今は行方をくらませているの。だから私は、どちらかというとあなた達の味方ってこと」
「……?なぜやりたくないのですか?」
「私は……戦いなんてしたくないし、人間を苦しめるようなことはしたくないの」
「ニュイ・エトワレってのは、そういう計画なのかい?」
そこに、クラウドが割って入る。すると少女は、その問いに対して答えた。
「ニュイ・エトワレ計画は、大まかに言えば"人類の、アンドロイドによる完全統制社会の実現"よ」
「え……」
「けっ!まるで、御伽話じゃないか」
「でも、ルミナがいればそれが出来る……」
「……それだけ、ルミナの力は絶大なものなのか?」
クレスがこう言うと、少女は、少し違う、と言って首を横に振った。そしてこう続けた。
「ルミナの力が、私達METSIS十二人の誰よりもあることもそうだけど、どうもそれだけじゃないみたい。私達を作った博士が、そんなことを言っていた……」
「サダルは、それを実現させようとしているのですか……?」
「ええ。彼女は博士の夢であるニュイ・エトワレ計画を、近いうちに実行に移すはずよ。もしかしたらもう、行動しているかも」
そこまで話すと、一同の間に静寂が訪れる。そこに虫の鳴き声や風の音が巡る。
ホープは少女の足元にいた小動物と戯れていた。楽しそうに顔を寄せ合い、小さきほのぼの空間である。
少女が口を開く。
「今まで沈黙を貫いてきたけど、そろそろ動き出さないとサダルが計画を推し進めるだろうと思って、仲間を探していたところなの。……あなた達も、サダルとは対立しているのよね?……私と一緒に、ヤツを止めて欲しい。お願い、できないかしら……?」
この願いにルミナ達は固まっていたが、やがてルミナが一歩、少女に近づく。そして少女にその灰眼を向けた。
「私は……まだあまり自分がよく分かっていないような未熟者です。でも、今まで旅をして来てお世話になった人、こうして共に旅をする仲間を、アンドロイドに一方的に統制させることは許せないのです……!」
「ルミナ……」
「……全く、大した娘だよ。アンタは」
「俺も、自由を拘束されるなんてのは、御免だな」
ルミナに続き、タウリー、クラウドそしてクレスも少女に近づき、ルミナの横に並んだ。
少女は今まで見せなかった微笑みを見せながら、ルミナへと手を向ける。ルミナもその手を手で取って、握手を交わした。
「改めて、私は"ハル"、METSISよ。これからよろしく、ルミナ」
「こちらこそ、ハル」
アンドロイド達が握手する。傾き始めた日差しが熱く、夏の訪れを知らせていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
熱い風の果てへ
朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。
カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。
必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。
そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。
まさか――
そのまさかは的中する。
ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。
※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。
マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。
おいしいご飯がたくさん出てきます。
いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。
助けられたり、恋をしたり。
愛とやさしさののあふれるお話です。
なろうにも投降中
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
報酬はその笑顔で
鏡野ゆう
ライト文芸
彼女がその人と初めて会ったのは夏休みのバイト先でのことだった。
自分に正直で真っ直ぐな女子大生さんと、にこにこスマイルのパイロットさんとのお話。
『貴方は翼を失くさない』で榎本さんの部下として登場した飛行教導群のパイロット、但馬一尉のお話です。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる