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episode"1"
episode1.5
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二人と一匹が木々を避けるようにして続いている獣道を通っていくと、そこには廃墟を木で補強し、居住出来るようにした家があった。
見た目はみすぼらしいが、人が何人か暮らせるほどの広さを持っていそうな大きさである。煙突からは何も出ていなかったが、老人のアイデアで付けられたであろう痕跡がしっかりと残っていた。
後から老人がついてきて言う。
「どうじゃ、よく出来ておるだろう」
自信が声音に出ている。自慢げに話す老人には目もくれず、タウリーは目を輝かせて辺りを見渡していた。
ルミナは相変わらず、顔をこわばらせたままである。
「おや、どうしたのかね?お嬢さん。熊がそんなに怖かったかい?」
「……私は今まで、動物をホープしか見ていませんでした。なので、あんなにも怖いものだと、思わなくて」
怖い、という自分にルミナは驚く。そんなルミナに、老人は話す。
「動物ってのは、残酷なものさ。彼らは食べなければ死ぬ。まあ、今の人間も変わらないがな……」
「昔は、そんなこと無かったんですか?」
「いや、わしが子供の時からこれじゃよ。しかし、この廃墟群がまだ立派な建物だった頃は、食べ物を売ったり買ったりすることが出来たようじゃよ。これも聞いた話だがな」
自分とはまるで別世界の話だ、と言わんばかりの様子である。
老人の住処に入ると、やはり何人かが暮らせそうな広さの部屋がいくつかあった。
中にはテーブルや椅子、この老人の家族と思われる人物達が描かれた絵があった。
荷物を老人の住処に置き、近くの木々の下に落ちている小枝を集める。
小枝を集めた後、老人の住処に横たわっていた大木を切り崩し、薪を割ってちょうど良いサイズにしていた。
作業をしている最中に、特に会話は無く、それぞれが淡々と作業をしていた。
◎◎◎
「本当に今日は泊まっても良いんですか?」
「ああ、今日は泊まっていきなさい。もう日も落ちてきているし、何より動物達がここら辺には多いのじゃ。テントなんかすぐ壊されてしまうよ」
「ありがとうございます」
「それじゃ、久々の客人じゃし、美味しいものでも出そうかの」
そう言うと老人は、前日に獲ってきたという鹿の肉を取り出し、台所のような場所で捌き始めた。
肉を捌き終え、火に入れる。ある程度火が通ると、老人は何か調味料を取り出して、鹿の肉にかけ始めた。
焼き終え、皿に乗せて二人の前に出した。ホープにはまたも魚の干物である。
皿に乗せられた鹿の肉は、美味しそうというフィルターがかけられているのか、タウリーは家を見た時よりも一層目を輝かせていた。
「美味しそう……!」
「美味いぞ。さあ、食べな」
いただきます、とタウリーが言うと、ルミナも続いて、いただきます、と言ってどちらも食べ始めた。
「美味しい!!」
「……美味しい、です」
「じゃろう~!まだまだあるから、どんどん食べな」
三人がそれぞれ食べ進める。
しばらく食べる音だけが空間に充満していたが、老人が口を開いたことにより、会話が空間を支配し始めた。
「さてと……少し、お主らのことを聞かせておくれ。ここで会ったのも何かの縁じゃろう。今は、旅をしているのかな?」
「そうです。僕はタウリー・レオネスタ。こっちはルミナ・メルトウェル。今旅をしていて、あの時はここから東にある集落に行こうとしていたんです」
「東……ああ、確かにここの近くには"汚染地域"があったなぁ。それでまわり道していた、ということじゃな」
「よく分かりますね」
「ずっと、ここに住んでいたんでね……ここら辺は詳しいんじゃよ」
鹿肉を食べながら、話は続く。
「して、東の集落ということは、海産物を求めて行くのか?」
「いえ、あんまりそこは重要じゃなくて、物資の補給とかが目的ですかね」
「ほほう……なかなか珍しいのぉ。大体あそこに行く人々は海産物が目当てじゃ」
「その、海産物って美味しいんですか?」
「ああ……やはり陸のものとはまた違った感覚の美味しさじゃ。お主らもそこに行くんじゃ。是非食べてみると良いじゃろう」
老人はそう言うと、空になった皿の片付けをしようとしていた。
タウリーは、良い情報を聞いた、と思いガッツポーズをしていた。そんな中、ルミナは無表情で老人に問いかけた。
「ロボットはいますか?」
その時、老人の手が止まる。ゆっくりと振り返り、ルミナをまじまじと見つめた。
あまりの空気の変わりように、さっきまで笑顔を浮かべていたタウリーも、思わず顔が引き攣る。
しばしの沈黙。火が焚き木を燃やし、パチパチとなる音が響く。ホープは既に寝ている。
すると、老人が口を開いた。
「……その昔、といっても50年ほど前のことじゃ……今とたいして変わらない生活が続いていたある時、お主らがこれから行こうとしている集落で奇妙なものが見つかった、ということがあった」
「……」
「それがまるで人間のような容姿をしたものだったそうだ。集落の民がどうしようか迷っていると、それが動き出したのだそうな」
「……!それって……」
「その人間に似たものは、起きたと思ったら民達に危害を加え始めたのだ。不幸中の幸いと言ったところか、そいつはしばらくすると勝手に止まったそうだ。しかし、何人かが亡くなってしまった。……もちろん、そいつはすぐに壊された。すると、見たこともないような機械、と呼ばれるものが出てきたのだ。そいつは、古い文献によるとロボット、もといアンドロイド、と呼ばれるものだと分かった」
「……」
「そこの君、ルミナと言ったかな?……何故ロボットの話を持ち出したのか分からないが、あそこに行くならその話はしないことだ」
「ルミナ……」
タウリーはルミナを心配そうに、不安そうに見ていた。老人も、ルミナを少し怪訝そうに見ている。
そんな中、ルミナは老人に、告げる。
「私は、アンドロイドなのです」
「……何だって?」
「これを見れば、分かると思います」
そう言うと、タウリーにしたように服を上げ、ヘソ部分に当たる部位を老人に見せた。
「これは……」
「私は、アンドロイドなのです。良ければ、あなたが知ってること。聞かせていただけませんか?」
ルミナの声は、少し震えていた。
見た目はみすぼらしいが、人が何人か暮らせるほどの広さを持っていそうな大きさである。煙突からは何も出ていなかったが、老人のアイデアで付けられたであろう痕跡がしっかりと残っていた。
後から老人がついてきて言う。
「どうじゃ、よく出来ておるだろう」
自信が声音に出ている。自慢げに話す老人には目もくれず、タウリーは目を輝かせて辺りを見渡していた。
ルミナは相変わらず、顔をこわばらせたままである。
「おや、どうしたのかね?お嬢さん。熊がそんなに怖かったかい?」
「……私は今まで、動物をホープしか見ていませんでした。なので、あんなにも怖いものだと、思わなくて」
怖い、という自分にルミナは驚く。そんなルミナに、老人は話す。
「動物ってのは、残酷なものさ。彼らは食べなければ死ぬ。まあ、今の人間も変わらないがな……」
「昔は、そんなこと無かったんですか?」
「いや、わしが子供の時からこれじゃよ。しかし、この廃墟群がまだ立派な建物だった頃は、食べ物を売ったり買ったりすることが出来たようじゃよ。これも聞いた話だがな」
自分とはまるで別世界の話だ、と言わんばかりの様子である。
老人の住処に入ると、やはり何人かが暮らせそうな広さの部屋がいくつかあった。
中にはテーブルや椅子、この老人の家族と思われる人物達が描かれた絵があった。
荷物を老人の住処に置き、近くの木々の下に落ちている小枝を集める。
小枝を集めた後、老人の住処に横たわっていた大木を切り崩し、薪を割ってちょうど良いサイズにしていた。
作業をしている最中に、特に会話は無く、それぞれが淡々と作業をしていた。
◎◎◎
「本当に今日は泊まっても良いんですか?」
「ああ、今日は泊まっていきなさい。もう日も落ちてきているし、何より動物達がここら辺には多いのじゃ。テントなんかすぐ壊されてしまうよ」
「ありがとうございます」
「それじゃ、久々の客人じゃし、美味しいものでも出そうかの」
そう言うと老人は、前日に獲ってきたという鹿の肉を取り出し、台所のような場所で捌き始めた。
肉を捌き終え、火に入れる。ある程度火が通ると、老人は何か調味料を取り出して、鹿の肉にかけ始めた。
焼き終え、皿に乗せて二人の前に出した。ホープにはまたも魚の干物である。
皿に乗せられた鹿の肉は、美味しそうというフィルターがかけられているのか、タウリーは家を見た時よりも一層目を輝かせていた。
「美味しそう……!」
「美味いぞ。さあ、食べな」
いただきます、とタウリーが言うと、ルミナも続いて、いただきます、と言ってどちらも食べ始めた。
「美味しい!!」
「……美味しい、です」
「じゃろう~!まだまだあるから、どんどん食べな」
三人がそれぞれ食べ進める。
しばらく食べる音だけが空間に充満していたが、老人が口を開いたことにより、会話が空間を支配し始めた。
「さてと……少し、お主らのことを聞かせておくれ。ここで会ったのも何かの縁じゃろう。今は、旅をしているのかな?」
「そうです。僕はタウリー・レオネスタ。こっちはルミナ・メルトウェル。今旅をしていて、あの時はここから東にある集落に行こうとしていたんです」
「東……ああ、確かにここの近くには"汚染地域"があったなぁ。それでまわり道していた、ということじゃな」
「よく分かりますね」
「ずっと、ここに住んでいたんでね……ここら辺は詳しいんじゃよ」
鹿肉を食べながら、話は続く。
「して、東の集落ということは、海産物を求めて行くのか?」
「いえ、あんまりそこは重要じゃなくて、物資の補給とかが目的ですかね」
「ほほう……なかなか珍しいのぉ。大体あそこに行く人々は海産物が目当てじゃ」
「その、海産物って美味しいんですか?」
「ああ……やはり陸のものとはまた違った感覚の美味しさじゃ。お主らもそこに行くんじゃ。是非食べてみると良いじゃろう」
老人はそう言うと、空になった皿の片付けをしようとしていた。
タウリーは、良い情報を聞いた、と思いガッツポーズをしていた。そんな中、ルミナは無表情で老人に問いかけた。
「ロボットはいますか?」
その時、老人の手が止まる。ゆっくりと振り返り、ルミナをまじまじと見つめた。
あまりの空気の変わりように、さっきまで笑顔を浮かべていたタウリーも、思わず顔が引き攣る。
しばしの沈黙。火が焚き木を燃やし、パチパチとなる音が響く。ホープは既に寝ている。
すると、老人が口を開いた。
「……その昔、といっても50年ほど前のことじゃ……今とたいして変わらない生活が続いていたある時、お主らがこれから行こうとしている集落で奇妙なものが見つかった、ということがあった」
「……」
「それがまるで人間のような容姿をしたものだったそうだ。集落の民がどうしようか迷っていると、それが動き出したのだそうな」
「……!それって……」
「その人間に似たものは、起きたと思ったら民達に危害を加え始めたのだ。不幸中の幸いと言ったところか、そいつはしばらくすると勝手に止まったそうだ。しかし、何人かが亡くなってしまった。……もちろん、そいつはすぐに壊された。すると、見たこともないような機械、と呼ばれるものが出てきたのだ。そいつは、古い文献によるとロボット、もといアンドロイド、と呼ばれるものだと分かった」
「……」
「そこの君、ルミナと言ったかな?……何故ロボットの話を持ち出したのか分からないが、あそこに行くならその話はしないことだ」
「ルミナ……」
タウリーはルミナを心配そうに、不安そうに見ていた。老人も、ルミナを少し怪訝そうに見ている。
そんな中、ルミナは老人に、告げる。
「私は、アンドロイドなのです」
「……何だって?」
「これを見れば、分かると思います」
そう言うと、タウリーにしたように服を上げ、ヘソ部分に当たる部位を老人に見せた。
「これは……」
「私は、アンドロイドなのです。良ければ、あなたが知ってること。聞かせていただけませんか?」
ルミナの声は、少し震えていた。
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