上 下
1 / 43
episode"0"

episode0.1

しおりを挟む
 "トレミー歴"2106年。人類は技術革新を重ね、理想的科学世界を創り上げていた。

 科学世界の一国である科学大国"トワレ"。その中でも世界主要都市として名前が上がる都市"フォコン"には、出来ないことが無いと言われるほどの科学力があった。



「今日どこで遊ぼうか?」
「やっぱ最近出来たミルキーウェイ、行こうぜ」

「うわあ…寝坊した……」

「先日お世話になりました……」



 街に住む人々は、悠々自適に生活をしている。



「なあ、事故したとこ大丈夫?」
「もう全然大丈夫よ!まあこの国じゃ、ほとんど怪我なんて一瞬で治るしね~」

「また明日!」
「うん、明日はプール行こうね!」



自動車が空を行き交い、高層ビルが立ち並んでいる。この街に住む人も、最先端の医療技術や健康管理によってほとんどの人が健康体である。

 そんな科学都市も、まだ完成させていない技術があった。



人工生命体アンドロイド"METSIS《メタシス》"というものである。



 トレミー歴2092年に開発チームが発足。名のある科学者達によるものだったため、すぐに開発出来るだろうと誰もが思っていた。

しかし、開発は難航した。

 人工脳の開発、ニューロン体生成、超次元を利用したエネルギー炉。なかでも困難を極めたのは、感情構築機能と思想層状機能であった。

次第に、感情や思想を排除しロボトミー化することで"アンドロイド兵器"を作る方向で開発が進められたが、世界各国からの批判や、国内からの反対の声が上がり、開発は中止となった。

そして、トレミー歴2105年には世界連合内の条約に『METSIS製造及び開発禁止条約』が追加され、国際的にその開発製造が禁止された。

現在ではトワレ国内でも重罪となっているため、METSIS開発は止まったままである。


ある男と助手を除いては。












 フォコン都心部から南西に少し行った所に、ポツンと広大な敷地がある。

そこには大きく立派な家が立っており、ある男が一人ひっそりと暮らしていた。

 その男の名は"スタリング・メルトウェル"。68歳の初老である。

彼は若くして天才的頭脳から導き出される糸を紡ぎ続け、この年齢に至るまでにいくつもの発明をしてきた。

 反重力装置、超次元ホール拡張、軍需兵器等。過去には、タイムマシンも作れるのでは?と人々に言わしめたのである。

タイムマシンこそ作れなかったが、世界的科学者であることに自身も周りも疑いはしなかった。



ピピーー!ピピーー!

『博士、オハヨウゴザイマス。朝9時ニナリマシタ。』

ピピーー!ピピーー!

ピピーー!ピピーー!



今まで寝ていたスタリングは、目覚ましロボット君3号機の目覚まし機能によって起こされていた。



「ああ…うるせぇなあ」

ピピーー!ピー、ガチャ!



スタリングが目覚ましロボット君3号機の頭を叩き、音を止める。

酷く不機嫌そうにベッドから床に足を移す。そして朝食を取るためにリビングへと足を運ぶ。

リビングへ行くと、昨日使った食器が洗われていなかったので、スタリングは文句を言った。



「おい、食器洗ってな——」



 そこで気づく。今この家にいない人を呼んでも意味がないと。

気づいた後、少し寂しくも少し怒った心持ちで、スタリングは食器を片付けて朝食の準備をした。

料理に関しては、お料理機の中に必要な食材を入れておけばきちんと美味しい料理を作ってくれるため、彼はあまり苦労していない。

 朝食はベーコンと卵焼き、ご飯と味噌汁という具合である。彼がある異国へ行った時に酷く気に入ったメニューだ。

食べている途中でテレビを付ける。

空中モニターに映し出されているのは、よく見る女性キャスターだ。その表情はとても良く、スタリングがこの番組を観ているのも彼女が理由である。

朝食を食べ切りテレビを消そうとすると、なにやら物騒なニュースが流れてきた。



『では、続いてのニュースです。トワレ国内で暴動を起こす集団"ムラサメ"が、カムイ大陸の出身者で構成されていることが判明しました。現在政府は、ムラサメの無力化または鎮圧を図っています。』

「……カムイ大陸、か。」



スタリングは、カムイ大陸に関して言えばなにも知らないも同然であるが、このトワレ国と敵対関係にある国がカムイ大陸にあることは知っているため、彼は少し心配していた。



戦争関係に発展しなければ良いな、と。



 今度こそテレビを消し、立ち上がって食器を片付ける。

 そろそろ彼が来る時間だろう。と考えていると、玄関前から呼び鈴の音がした。

玄関へ向かい扉を開けると、案の定彼がいた。



「博士、おはようございます」

「うんおはよう。さあ入ってくれ」



 彼の名は"キーファ・ボレアリス"。スタリングの唯一の助手である。過去に同列の研究を進めていた間柄である。が、彼はまだ25歳と若く将来性がある。

 前々から目をつけていたスタリングは彼に、ある開発を一緒にしないか?と誘いを入れていた。



    ——"METSIS開発"——



 スタリングの家には公にされていない地下研究室がある。

彼と彼の助手であるキーファは、現在禁止されている開発をしているのだ。

 

 そこには、ある理由があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マインハールⅡ ――屈強男×しっかり者JKの歳の差ファンタジー恋愛物語

花閂
ライト文芸
天尊との別れから約一年。 高校生になったアキラは、天尊と過ごした日々は夢だったのではないかと思いつつ、現実感のない毎日を過ごしていた。 天尊との思い出をすべて忘れて生きようとした矢先、何者かに襲われる。 異界へと連れてこられたアキラは、恐るべき〝神代の邪竜〟の脅威を知ることになる。 ――――神々が神々を呪う言葉と、誓約のはじまり。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

処理中です...