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僕のかけら
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08 「僕のかけら」
次の文章を手に取る。体の一部でも欠落したかのような言い様だ。
人間は、過去に戻れやしない。たとえその時間に戻れたとしても、純粋さが失われてしまう。
たとえ記憶までもが戻ったとしても、それを知る術はない。どんな後悔を残そうが、時が止まることはない。
@
置いていかないで。
誰かが言う。きっと僕自身だ。遠い遠い、過去の記憶。でも、人は記憶からその場面を再現し、匂いや風すらも感じられる。
僕は、あの時何が出来ただろう?
きっと、やり直せたとしても、僕は僕だ。結果は変わらないだろう。それでも。
それでも、回帰したい。
何も出来ないと分かっていても、僕を置き去りにして、四季を感じて飛んでゆく鳥のように、君は進んでいく。
いつまでも、僕は動けずに。
時々、その頃の場所に行っては、かけらが無いかを耳や目、心で見ている。不思議と、そうしていると落ち着くのだ。
いかないで。
あの時も、あの時も。君だけが、僕の全てだった。同じように、君も僕だけが全てであって欲しかった。
好きだった、はずなんだ。
あの時の、木陰に入り、僕の横で小さな手で、小さな菓子を、口いっぱいに頬張る君が。その時の、風が。
消えてしまわぬように。
僕のかけらをそっと、集める。誰のものでもない、僕だけの君を。僕だけの、記憶を。
忘れてしまわぬように。
僕だけが、取り残されたこの街に。君はもう、帰ってくることはない。そして僕も、この街を出るために、足踏みをしている。
いつまでも、いつまでも。
@
この男にとって、君という彼女は、どう映っていたのだろうか?
この彼女にも、聞いてみたいものだ。
世界は常に動いている。機械的にも見えるその鼓動は、来るべき未来まで止まることはないだろう。
その中で、私達人間は、足掻き、苦しみ、争いながら。今もずっと、足踏みしているのかも知れない。
: 寂寥感の、純粋を求めし青年の手記
次の文章を手に取る。体の一部でも欠落したかのような言い様だ。
人間は、過去に戻れやしない。たとえその時間に戻れたとしても、純粋さが失われてしまう。
たとえ記憶までもが戻ったとしても、それを知る術はない。どんな後悔を残そうが、時が止まることはない。
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置いていかないで。
誰かが言う。きっと僕自身だ。遠い遠い、過去の記憶。でも、人は記憶からその場面を再現し、匂いや風すらも感じられる。
僕は、あの時何が出来ただろう?
きっと、やり直せたとしても、僕は僕だ。結果は変わらないだろう。それでも。
それでも、回帰したい。
何も出来ないと分かっていても、僕を置き去りにして、四季を感じて飛んでゆく鳥のように、君は進んでいく。
いつまでも、僕は動けずに。
時々、その頃の場所に行っては、かけらが無いかを耳や目、心で見ている。不思議と、そうしていると落ち着くのだ。
いかないで。
あの時も、あの時も。君だけが、僕の全てだった。同じように、君も僕だけが全てであって欲しかった。
好きだった、はずなんだ。
あの時の、木陰に入り、僕の横で小さな手で、小さな菓子を、口いっぱいに頬張る君が。その時の、風が。
消えてしまわぬように。
僕のかけらをそっと、集める。誰のものでもない、僕だけの君を。僕だけの、記憶を。
忘れてしまわぬように。
僕だけが、取り残されたこの街に。君はもう、帰ってくることはない。そして僕も、この街を出るために、足踏みをしている。
いつまでも、いつまでも。
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この男にとって、君という彼女は、どう映っていたのだろうか?
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世界は常に動いている。機械的にも見えるその鼓動は、来るべき未来まで止まることはないだろう。
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