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第1章 異世界転移

繰り返す転移

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「またも異界からの勇者は"負け"、か……」

「もういっそ、あの世界は魔物達に握らせてしまえば良いのでは?」

「それでは我ら"天性会"の面子が丸潰れなのだ!あんな野蛮で知性の欠片もない魔物に、地上界を明け渡すなどあってはならん!!」

「ん~……」



 どうやらメガが呼び出した異界の勇者はやられてしまった・・・・・・・・ようだ。……ま、ここ最近の地上界の動きを見ていれば、やられるのがオチだとは思っていたが……



「どうなりそうですか~今後の予定」

「おぉ、ミンか。いやはや、こうして転移させてもあまり意味がないように感じてきていてな。さて、どうするか……」

「ま、そう焦らなくても良いのでは?どうせ地上界の出来事ですし。多少こちらにも不都合のある影響がおこるでしょうが……」

「……それもそうだな。こちらもある種の娯楽的思考であるわけだし……」



 そう。コイツらの言う不都合とは、賭け事・・・によって誰を夫婦とするかや、天界の政治的策略、地位争いといった対立で勝ち負けがつくことだ。

実に娯楽的で、地上界や異界の人間のことをこれっぽっちも考えちゃいない。勿論、その犠牲となった天使のことも。

でも自分がその切先を喰らうことはしたくない。だから私は、必死にその対象とならないよう身近の天使からスポットライトを当てることにした。



「次は勝てると良いですねぇ~」

「まあ私の地位はとっくに揺るがぬものとなっておるがな」



 きっと、どんな世界であろうともこういうやり方はあるのだと思う。そして、そこに巻き込まれた者たちは無慈悲に、理不尽に、その代償を背負わされるのだろう。

 話していた大天使との会話を終え、自室へと戻る。そして異界の地が見渡せる鏡を真っ先に覗く。



「……すまないね。でも、私が巻き込まれないためにはこれしかなかったんだ」



 一枚隔てた空間には、飼育小屋で餌を喰みながら鳴く一匹の豚がいた。

その鳴き声は少しだけ、悲しみと諦めのような響きを纏っていた。      《了》
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みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
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ベアりんぐ
2021.08.27 ベアりんぐ

 感想ありがとうございます。しかもおもしろいと言っていただけるとは……!

 これからも不定期ですが上げていくので、その都度読んでいただけると嬉しいです。

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