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第1章 異世界転移

異界の地 2

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 「ついに着いたな」

 「やっとだよ~、もう歩けん」

 やっと村に着いた。村の名前は"アクド村"。見た感じ小さな村ではあるが、人々が生き生きとしている良い村だった。

 さっそく宿屋を探していると、俺達と同じぐらいの男女2人が何やら話していた。

 「頼むよ!ミリア!ダンジョン行こうぜ!」

 「で、でもアレス、……あのダンジョン、とっても危険だって、……冒険者の人が言ってたよ?」

 「大丈夫だって!ほら行くぞ!」

 「ま、待って……!アレス!」

 ……どうやら女の子の注意は無駄だったようだ。結局2人はそのダンジョンに行ってしまったようだ。

 「ねえ、孝太朗くん。ダンジョンだって!私達も行こうよ!」

 「とりあえず今日は休もう。ダンジョンには明日行くとするか。レベルも上げたいし」

 「よぉ~し、宿屋へレッツゴー!」

 ずいぶんハイテンションだな、大井さん。

       2

 宿屋へ着くと、そこには何人かの冒険者と、宿屋の主人と、その妻がいた。夫婦経営とは……ゲームではあまり無い展開だな。

 「よぉいらっしゃい。ん?あんたらここらじゃ見かけない顔だな?どれ、ステータスを見せな」

 俺と大井さんは、宿屋の主人にステータスボードを見せた。

 「……なんだこれ?コーコーセイ?聞いたことない職業だな。」

 「えっと、私達の故郷ではある職業です。」

 「へぇ~、どんな国だい?名前を言ってみろ」

 「……!実は……、どこにあるか僕達分からなくて、気づいたらここの近くで」

 「ワッハッハ!なんだいそりゃあ?不思議な人達だね~」

 「すみません、覚えてなくて」

 「じゃあこの世界の大陸と州の名前も覚えてないのか?」

 「すみません……」

 「ワッハッハッハ!!こりゃ面白い!……良し、じゃあ俺がしっかり教えてやるから、その"ステータスボード"に記録しておくといい」

 「ありがとう、宿屋の主人」

 宿屋の主人が言うには、この世界は4つの大陸と6つの州があるらしい。

 今いるアクド村は西の大きな大陸の中の村で、"クアン大陸"と呼ばれているらしい。残り3つは"フルシュ大陸"、"アカツキ大陸"、そして"ヒスメア大陸"だ。

 そして6つの州は、メリア、カラコラ、サルラ、コキュウ、エリゾラ、ゴルドラという6つに分かれている。今いるアクド村はメリア州に分類されている。

 そしてヒスメア大陸の南の州、ゴルドラ州の奥に、強大な力を持つ"魔王"が住んでいる魔王城があるらしい。

 「そんで今、この大陸の北にあるタルシアン王国じゃ、魔王討伐に向けてなにやら忙しいらしい」

 「……主人、勇者という者はいるのか?」

 「勇者?あーなんか最近になってその職業の者が現れたっつう話を聞いたな」

 この世界にも勇者が存在するとは……!どのぐらい強いんだろうか?

 「それともう一つ、レベルを上げたいなら、ダンジョンへ行きな。この近くに最近できたダンジョンがあるんだ。西に向かってすぐだ。」

 「ありがとう、主人」

 この近くにダンジョンがあれば、レベル上げが効率良くできる!

 「うひゃ~楽しみだなぁ」

 「俺もワクワクしてきた」
 
 その晩は、宿屋に泊まってしっかり身体を休めた。

 ここはゲームと同じで、回復するんだなぁ。不思議だ。

       3

 朝が来て、ダンジョンに行く準備をした。装備を買ったが、武器しか購入出来なかった。まさかあんなに高いとは……。

 俺は"銅の剣"を買った。大井さんは"木の杖"を買ったらしい。

 「どう?異世界っぽくなったでしょ?」

 「杖だけじゃやっぱり寂しい感じかな。俺も剣だけだけど」

 「まぁまぁ、とりあえず、ダンジョンにレッツゴー!」

 「おーー!」

 ダンジョンにどんな魔物が待ち構えているのか。少し楽しみだ。

       A

 「はぁ、はぁ」

 「だ、大丈夫か、ミリア」

 「う、うん、なんとか……」

 息が切れる。ダンジョンなんて来るんじゃなかった。

 中にはここにいるはずのない魔物がいて、しかもダンジョンボスは魔王軍の手先、一体どうすればいいんだ……、道にも迷った。助けなど、来るはずもない。

 2人で静かに、息を潜めて、ただただ祈る。

 「だれ……か、助けて……」

 ミリアの小さな声だけが、ダンジョンにあるだけだった。



 

 
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