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第三章 血族と信仰
強襲の両津
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俺が構えたことを見て、より一層険しい表情をしながら矛先を向ける両津に、それでも対話を試みる。
「そもそも両津!なんでお前がここに居るんだ!」
そう問うと普段学校で見せる笑顔とは真逆の、まるで苦虫でも噛んだような表情で、構えを崩すことなく声を張り上げて答える。
「それはこっちのセリフだ!まさかそこの女と共に、何やら怪しい動きをしていた奴がお前だったなんて——」
「幸助っ!彼女を救うんでしょ!今ここで負ければ終わり……なら、やることは一つ!!」
「!!クッソ……!やるしかないのか、幸助……!!」
そう言って構えていた槍を榊と俺に向けて投げ飛ばす。
投擲された槍はこの世界の空気を裂くような速さで向かってくる。そして刹那、その槍が数本に分かれ、逃げ場を塞ぐ。
榊は左側に、俺は右側へと間一髪滑り込むようにして槍を避ける。皇は榊に押されるようにして槍を避けたようだ。
「っ!!クソ!」
「榊!?大丈夫か!」
「ご、ごめんなさい……!」
皇を押したからか、榊は右脚に槍が掠ったようだ。掠った、と言っても大気を切り裂くようなスピードで飛んできた槍であったがために、肉が裂けていた。
両津が近づく。何も対抗すべき手を持っていないことを知っているからだろうか、ゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる。
以前として手には禍々しく光る槍が握られている。
「……諦めろ、女。その脚ではもうまともに走れもしないだろう。この世界ではな。さあ、大人しくその狂信者をこちらに渡せ」
「へぇ……まるで余裕ぶってるけど、本当に私達に為す術もないと?」
「…‥何?」
「幸助っ!こっちに来い!」
「!……ああ!!」
そう言って俺は榊の元へと走り出す。それを見て両津は再度、槍の投擲をする。
迫り来る槍を横目に、全速力で榊の元へと走る。一体、榊は何をしようとしているんだ?
そんな考えを巡らせながら、とにかく走る。はしる。
先程槍を避けた時に随分と距離が出来ていたようで、数本の槍を間一髪で避けながら走った。
投擲された槍が迫り、それを避けるようにして頭から飛び込む。分裂した一本の槍が自身の胸へと一直線に飛び込んでこようとした時、榊がなにかを唱えた。
「——パトゥ・ノストゥア——!!」
瞬間。眼前の景色こそ変わらないものの、自身の胸へと向かっていた槍と、両津の姿が無くなっていた。
いや、どちらかというと両津の前から俺達が消えたのだ。先程と変わらない景色ではあるが、明らかに違う場所である。
横たわっていた自身の身体を起こし、榊と皇を見る。
何が起こったかまるで分からない、不安そうな顔をする皇と、バツが悪そうな顔をした榊が確かに、そこに居た。
「そもそも両津!なんでお前がここに居るんだ!」
そう問うと普段学校で見せる笑顔とは真逆の、まるで苦虫でも噛んだような表情で、構えを崩すことなく声を張り上げて答える。
「それはこっちのセリフだ!まさかそこの女と共に、何やら怪しい動きをしていた奴がお前だったなんて——」
「幸助っ!彼女を救うんでしょ!今ここで負ければ終わり……なら、やることは一つ!!」
「!!クッソ……!やるしかないのか、幸助……!!」
そう言って構えていた槍を榊と俺に向けて投げ飛ばす。
投擲された槍はこの世界の空気を裂くような速さで向かってくる。そして刹那、その槍が数本に分かれ、逃げ場を塞ぐ。
榊は左側に、俺は右側へと間一髪滑り込むようにして槍を避ける。皇は榊に押されるようにして槍を避けたようだ。
「っ!!クソ!」
「榊!?大丈夫か!」
「ご、ごめんなさい……!」
皇を押したからか、榊は右脚に槍が掠ったようだ。掠った、と言っても大気を切り裂くようなスピードで飛んできた槍であったがために、肉が裂けていた。
両津が近づく。何も対抗すべき手を持っていないことを知っているからだろうか、ゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる。
以前として手には禍々しく光る槍が握られている。
「……諦めろ、女。その脚ではもうまともに走れもしないだろう。この世界ではな。さあ、大人しくその狂信者をこちらに渡せ」
「へぇ……まるで余裕ぶってるけど、本当に私達に為す術もないと?」
「…‥何?」
「幸助っ!こっちに来い!」
「!……ああ!!」
そう言って俺は榊の元へと走り出す。それを見て両津は再度、槍の投擲をする。
迫り来る槍を横目に、全速力で榊の元へと走る。一体、榊は何をしようとしているんだ?
そんな考えを巡らせながら、とにかく走る。はしる。
先程槍を避けた時に随分と距離が出来ていたようで、数本の槍を間一髪で避けながら走った。
投擲された槍が迫り、それを避けるようにして頭から飛び込む。分裂した一本の槍が自身の胸へと一直線に飛び込んでこようとした時、榊がなにかを唱えた。
「——パトゥ・ノストゥア——!!」
瞬間。眼前の景色こそ変わらないものの、自身の胸へと向かっていた槍と、両津の姿が無くなっていた。
いや、どちらかというと両津の前から俺達が消えたのだ。先程と変わらない景色ではあるが、明らかに違う場所である。
横たわっていた自身の身体を起こし、榊と皇を見る。
何が起こったかまるで分からない、不安そうな顔をする皇と、バツが悪そうな顔をした榊が確かに、そこに居た。
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